タレントで投資家の杉原杏璃さんが語る、初心者のための投資の考え方
23歳から始めた株式などの投資で成功し、現在はタレントのほかに投資家、実業家としても活躍する杉原杏璃さん。何の知識もなかったところから株取引を始めたという杉原さんは、どのような経験を経て億の資産を築くまでになったのでしょうか。
杉原さんが実践している株式投資の運用方法や体験談、初心者向けの始め方、今ウォッチしている業界など、投資にまつわるお話を聞きました。
プロフィール
杉原杏璃 タレント/投資家/実業家
16歳で芸能界に入り、19歳で上京。23歳のときに30万円から投資をスタートし、5年で1,000万円をためる。その後、株取引や不動産投資などで資産をふやし、“億り人”に。現在は、補正下着ブランド「Andijur(アンディジュール)」を立ち上げるなど、実業家としても活躍。著書に『お金に働いてもらう! ほったらかし投資』(ポプラ社)、『マンガでよくわかる 株1年生~億り人 杉原杏璃と一緒に~』(かんき出版)などがある。
株式投資のヒントは日常生活の中にあり
――杉原さんは、23歳で貯金200万円のうちの30万円を元手に株式投資を始めたそうですね。最初はどのような基準で投資を行っていたのでしょうか。
杉原:最初は好きなジャンルや企業に投資するところから始めました。具体的には、東京ドームです。広島カープのファンなので、試合のチケットがもらえるかもと思ったんです。その基準は今でも変わっていなくて、身近な分野の好きな企業に投資することが多いですね。それ以外の基準としては、直近3年間くらいの売上高や経常利益を見て、来期以降もプラスになりそうな会社を選んでいます。
――株の売買のタイミングは、どのように決めていますか?
杉原:目安にしているのは、会社の四半期決算です。長期投資なのか短期なのかでも変わってきますが、長期の場合は「これくらい株価が下落したら売買を検討する」という基準はあります。
――そういった株式投資の知識をどのようにして身につけたのでしょうか。
杉原:誰かに教わったり学校に行ったりはしていなくて、実際に取引しながら覚えていきました。ふだんは、ニュースや四季報、株関係のアプリをチェックしています。アプリは情報がとても見やすく整理されているので、それだけでも十分なんです。
あと大事なのは、常に世の中に対してアンテナを張っておくことです。たとえば、少し前にとある乳酸菌飲料が大ブームになりました。店頭から商品が消えて、私もぜんぜん買えなかったのですが、「だったらその会社の株を買おう」と思ったんです(笑)。それだけ話題になって売れている商品を販売する会社の業績が、悪いわけないですから。
ーー確かに!投資家ならではの考え方ですね。
杉原:そんなふうに、ヒントは日々の生活や街の中にたくさん落ちているんです。今だったら、ようやくマスクを外せるようになってきたので、化粧品会社の株が上がると予想して買ってみたら、やっぱり上がりました。そうやって得意分野を中心にウォッチして、株価を予想していけばいいんです。
――ただ、多くの人はそれでも「株式投資は怖い」という感覚があり、一歩を踏み出せないのだと思います。
杉原:経験がないと怖いと思う気持ちはわかります。投資はもちろんリスクもありますから。私自身、リーマンショックやコロナ禍で資産を減らしたことがあります。でも、凄腕の投資家だって百発百中の人はいません。失敗したら、なぜダメだったのかをちゃんと分析することが大事なんです。そうして最終的に収支がプラスになっていればいいと思います。
株を買うのって、就職するのに似ていると思うんです。就職活動でも業界とか同業他社のことをじっくり調べて、将来性があって自分に合う会社を選びますよね。株も同じように、会社の業績を調べて、将来伸びそうだと思ったら買うわけです。
「株が紙きれになったらどうしよう」と不安に思うのは、「就職した会社が倒産したらどうしよう」と考えることに似ています。でも、就職するときから倒産するかどうかの心配をしても仕方がありません。まずは応援する気持ちで株を買うところからスタートしてみてほしいです。
――株式投資を始めるハードル自体は、だんだん下がってきてはいますよね。
杉原:そうですね。昔は100株単位でしか買えなかったので、大企業の株を買うのは難しかったのですが、今は1株から買えます。まずは安い金額からお試しで買ってみて、自分に投資が合うか合わないかを見極めるのもいいと思いますよ。
あるいは、優待を目当てに好きな銘柄から始めてもいいと思います。たとえば、テーマパークは入場料が年々上がっていますが、株を買って優待で安く楽しむこともできます。そうした優待をメインの目的にすれば、ハードルも下がるんじゃないかな。
個別株の取引に手を出しにくいという方は、投資信託から始めるのもいいですね。プロのファンドマネージャーが選んだ投資先に投資して運用できますし、興味をもったら後々その投資信託の保有割合の中から個別に投資することもできます。
――杉原さんもそうですが、今は投資関連の情報発信をする方が増えましたよね。初心者も学ぶ手段が増えています。
杉原:それはいいことですよね。でもだからこそ怪しい情報も増えたと感じます。「この株を買っておけばいいよ」みたいに言ってくる人は、あまり信用しないほうがいいと思います。そうではなくて、株式投資の考え方や、やり方をメインに教えている人を選んで学んだほうがいいです。
投資の成功・失敗談と今ウォッチしている業界は?
――どのくらいの金額から資産の増加が加速していったのでしょうか。
杉原:やはり1,000万円が1つの目安ですね。そこを超えたあたりから、複利で増加がどんどん加速していきました。
――とくに資産が増加したタイミングは?
杉原:2010年代の前半頃、スマートフォンのゲーム会社の株が軒並み高騰したことがありました。私自身もゲームが好きでそうした会社の株を買っていたので、うまく波に乗って資産がふえた時期がありましたね。また、アベノミクスや東京オリンピックの招致が決定して日本全体が盛り上がっている時期でもありました。
その頃、私の影響でマネージャーさんやメイクさんなど周りの人も投資を始めたので、とても楽しかったです。楽屋が投資の話一色になって、ぜんぜんタレントの楽屋っぽくない雰囲気でした(笑)。
――逆に失敗して、資産が減った経験はありますか?
杉原:たくさんありますよ。たとえば、大手航空会社が破綻する前に株を何度も売買していたら上場廃止になって紙きれになったり、エアバッグの会社の株を買ったらリコール問題で暴落したり……。基本的に好きな会社の株を買うので、もう少しすれば戻るはずだと考えて持ち続けた結果、どうにもならなくなるという経験をしてきました。
それに、投資を始めた当初はどんどん下がる株価に耐えきれず、「狼狽売り(※1)」をしてしまったこともあります。
――トレンドだからという理由で、あまり詳しくない分野に投資するのはリスクがありますか。
杉原:もちろんトレンドを見ることも大事です。ただ、流行りのセクター(※2)はすぐに風向きが変わってしまうことも多いので、見極めが必要です。私も一応そうしたテーマ株(※3)を持つこともありますが、あまり長くは持たずに短期的に売買するようにしています。
例外としては、高配当を持続的に出していて増配傾向にある会社であれば、仮に株価が下がっても持っておくこともあります。配当を一種の不労所得のように考えるわけです。ただ、それ以外については急な株価変動リスクを考えると、基本的にあまりトレンドに左右され過ぎないほうがいいと思います。
(※1)株価の急落に動揺して、保有する株式を急いで売却すること。
(※2)業種や株価などのテーマ・特性によって分類したグループのこと。株式市場や相場の分析に使われる。
(※3)時事性や社会の関心が高い話題などによって分類された銘柄のこと。
――今、注目されている業界などはありますか?
杉原:インバウンドですね。業種の幅が広いのですが、たとえば今、業績がいいのが航空系です。コロナが「5類感染症」になって海外からのお客さんが増えていますし、大阪万博も控えています。海外の観光客が国内を移動することも考えたら、鉄道系も注目しています。ほかにも百貨店やホテル関連も上がりそうだなとか。
いろいろと考えて投資をしているので、今後の答え合わせが楽しみですね。株式投資に慣れてきたら、トレンドを考慮するのもいいと思いますよ。
――初心者がとっつきやすい業界はありますか?
杉原:わかりやすいところだと、小売業でしょうか。私はなかでもファッションが好きなので、アパレル企業はチェックしています。アパレル系が初心者向きなのは、その多くが内需ということと、月次の売上も出るので状況が把握しやすく、また海外の事情をそれほど考慮しなくていいからです。
たとえば、海外に大きな工場を建てると、一時的に会社の利益が落ち込むことがあるのですが、工場完成後はまた伸びる可能性が高くなります。そうした海外の動きまでチェックするのが大変であれば、内需で理解しやすい会社がおすすめです。
投資が人生の可能性と世界を広げてくれた
――お金に関する話題として、保険についてはどう思われますか?
杉原:私は自分で医療保険と生命保険を選んで加入しています。保険は自分に何かあったとき、残された家族のために必要なものです。高額をかける必要はないですが、本当に必要な保険には入っておくと、いざというときに安心できます。
――投資は、杉原さんの人生をどう変えましたか。
杉原:お金の面で人生の可能性が広がったのもそうですが、知識が増えることで世界が広がった感覚があります。日常的に見るニュースがすべて自分ごとになるので、興味をもって真剣に見るようになりました。それに、グラビアの仕事をしていただけではできなかっただろう人脈も作れました。
私が主宰するオンラインサロンでも、投資で人生が良い方向に変わった人がたくさんいます。そういう人を見るととても誇らしくなるし、そんな人同士でコミュニケーションがとれるのも嬉しいですね。
今になって思うのが、私はちょうどいいキャラクターになれているのかなということです。私は良い大学を出て経済を専攻していたわけでもないので、「杉原杏璃でもできたんだから、自分にもやれるかも」と思ってもらえるのかもしれません。
――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
杉原:まずは、夢をもっていただきたいです。その夢を実現するためには何をすればいいのかを明確にして、そこに向けて資金をためるつもりで株式投資を始めるといいと思います。ただお金を儲けたいというよりも、夢を叶えたいという想いを描いてスタートするほうが、上手くいくんじゃないかと思います。
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号