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保険とお金のキホン

1-1.入院・手術への備え~医療保障の検討時に知っておきたいこと~

  • 民間の医療保険を検討する際、入院給付日額をいくらにすべきかを悩むケースはよくあります。
    もし、長期間にわたって入院をすることになれば、入院時の自己負担額もそれだけ多くなることが予想されます。

    では、平均的にどのくらいの日数入院することになるのでしょうか。

    <グラフ>平均在院日数の推移(総合病院、精神病院、専門病院での入院含む)

    入院日数の推移


    厚生労働省の「医療施設調査・病院報告 平均在院日数」によると、退院患者の平均在院日数は27.3日となっています。

    ここ20年ほどで3割近く入院日数が短くなったことになります。

    昨今、治療は入院から通院に移ってきているという現状があります。ですから、治療費を補填する目的で医療保険を比較検討する際は、入院給付金だけでなく通院給付金なども合わせて総合的に検討するようにしましょう。

    特に、十数年前に医療保険の提案を受けた方は、入院給付金に重点をおいたものに加入されているケースもあります。

    現在ご加入の内容が、今の医療事情や健康保険制度にマッチしているものかどうか一度確認してみましょう。

  • 入院時にかかる費用の分布を見てみると、20万円未満が約7割を占めます。ただし、疾病の種類によっては入院が長期化することもあり、個室等の利用による費用の負担増が予想されます。

    <グラフ>直近の入院時の自己負担費用

    入院時の自己負担費用




    また、退院後のリハビリや休職中の収入減を含めると治療費以外にも費用がかかることが考えられます。

    医療保障の商品は健康増進型などの保険、認知症を保障する保険、入院時の自己負担に連動して給付金が受け取れる保険など多様化しているため、それぞれの保障が必要かどうかをしっかりと見定めて選ぶようにしましょう。

    特に見落としがちなのは、入院と通院が併用された治療に移ってきていることです。例えばがんの治療では、通院で放射線治療を受ける日々が何クールも続きます。

    このようなケースは1回の入院にカウントされません。しかし、仕事を制限しながら交通費をかけて通院するという点では入院よりも負担が増す部分もあります。

    このような状況で、どのような保障が役立つのか確認してみましょう。

  • 差額ベッド代とは、入院時に患者側の希望で個室等に入室した場合にかかる費用で、正式には「特別療養環境室料」といいます。

    全額が自己負担となりますが、約71%の方が差額ベッド代を負担してでも「個室や少人数部屋」を希望しています

    個室等に入室することで患者の入院中のストレスが減り、治療経過にも好影響を与えることが期待される一方で、入院日数が長くなると差額ベッド代は大きな負担となっていきます。

    * エフピー教育出版 令和3年「サラリーマン世帯生活意識調査」より作成

    <グラフ>一人部屋の差額ベッド代の推移

    一人部屋の差額ベッド代の推移




    上記の表は一人部屋における差額ベッド代の平均額の推移です。年々平均額が上昇していることがわかります。

    「個室に入院なんて贅沢をするつもりはない」と考える方もいるかもしれません。

    しかし、健康な状態で、健康な人と4人部屋で過ごすわけではないことをしっかりと考えておく必要があります。

    4人部屋というのは1つの部屋にベッドが4台置かれていて、それぞれをカーテンで仕切られている部屋です。同じ部屋になる人は選べませんし、生活音や匂いというものは漏れ伝わってくるものです。話し声やいびき、痛みに耐える声、ため息が聞こえてくることもあります。

    また下半身が動かない等の理由でベッドの上、もしくは簡易トイレで用を足さなければならない場合はカーテンの間仕切り一つで行わなければなりません。

    長く入院するときこそ、よりよい環境で治療に専念したいと考えることは普通のことかもしれませんね。もしも入院した際は個室に入院したいという方は、差額ベッド代を賄える様、医療保険への加入を検討してみてはいかがでしょうか。

  • 入院時の治療費以外の自己負担には、食費、差額ベッド代、日用品・衛生用品等があります。これらの費用は入院日数に比例して金額が大きくなっていきます。

    例えば、脳梗塞で51日入院した場合では、約55万円の費用がかかると想定されます。

    <グラフ>脳梗塞で51日入院した場合の自己負担額の例

    治療費以外にかかる費用例




    【内訳】
    ■病院食:70,380円(3食1,380円×51日分)
    病院での食事代は一般的な所得区分では1食460円と決まっています。3食で1日1,380円、51日で70,380円の出費となります。

    ■お見舞いに来る人の交通費:21,000円(往復600円×35回)
    長期入院となればご家族も心配し、お見舞いに来てくれることも多いでしょう。電車で来た場合は交通費がかかります。電車賃が片道300円だとして、1週間に5回くらいお見舞いに来ると仮定すると、35回分の交通費21,000円がかかることになります。

    ■差額ベッド代:424,422円(1日8,322円×51日分)
    差額ベッド代は病院によって単価が異なります。一人部屋の全国平均額は1日8,322円となっており、入院期間中継続的に利用した場合は424,422円となります。

    ■日用品・衛生用品:30,600円(600円×51日分)
    また、日用品や衛生用品にもお金がかかります。ティッシュや水などのほか、調味料や嗜好品などが必要なケースもあります。

    他にも治療によっては免疫力が低下するために、できるだけ新しいものを食べるように気を付けたり、薬の副作用で頭髪が抜けた際のウィッグ、骨折した際のコルセットなどにもお金がかかります

    【補足】
    ● 金額は脳梗塞で51日入院したと仮定した場合に、必要になる出費をまとめたものです。差額ベッド代等、各項目の単価にかける日数はあくまでイメージです。

    ● 交通費や差額ベッド代、日用品等にかかる費用には個人差があります。

    ● 治療以外にかかる費用を考える際の目安としてご覧ください。

    治療費に関しては健康保険で補填できる部分もありますが、今回ご紹介したような治療費以外のお金(健康保険が適用されない)も結構かかる可能性があります。

    医療保険から給付された給付金は、こういった費用に充当することも可能です。治療費だけに焦点をあてず、治療費以外のお金をどうやって準備するのかも、一度検討してみましょう。

2-1.三大疾病への備え~三大疾病保障の検討時に知っておきたいこと~

  • 三大疾病とは「悪性新生物(がん)」「心疾患」「脳血管疾患」の3つの病気のことを指します。

    <グラフ>三大疾病のイメージ図

    三大疾病とは?



    ■悪性新生物(がん
    体のなかで発生したがん細胞が増殖して体に害を与える病気です。がんが発生した細胞の種類によって、がんや肉腫、造血器腫瘍(血液のがん)などに分類されます。代表的ながんの例では「大腸がん」「乳がん」「胃がん」などが挙げられます。

    心疾患
    心疾患は、心臓の周りに張り巡らされた冠動脈に動脈硬化などが起こることで心筋に酸素が流れなくなり、心臓の機能が停止してしまう病気の総称です。心疾患の中でも「急性心筋梗塞」冠動脈が急に詰まってしまい、血液を失った心筋が徐々に弱ってい病気です。

    脳血管疾患
    脳血管疾患とは脳血管のトラブルによって脳細胞が障害を受ける病気の総称です。耳にする機会が多い脳卒中は、この脳血管疾患に含まれます。脳卒中には「脳梗塞」、「脳出血」「くも膜下出血」の3つがあり、いずれも脳の一部に血液が行きわたらなくなり、その部位が壊死してしまう病気です。

    日本においては、これらの疾患を原因とする死亡率が高くなっています。また、三大疾病は、通常の病気と比べて入院日数が長くなったり、治療費が多くかかったりすることが特徴です。

    したがって、医療保険を考える際は、これら3大疾病に罹患したときに保障が手厚くなるように対策を打つ方も多くいらっしゃいます。

    自分が受けたい治療を、お金のために諦めることがない様、事前に対策を打っておきましょう。

  • 八大疾病とは三大疾病である、がん(悪性新生物)、心疾患、脳血管疾患に、高血圧性疾患、糖尿病、慢性腎不全、肝硬変、慢性膵炎を加えた生活習慣病のことを指します。

    ところで生活習慣病とは何でしょうか。一般社団法人 日本生活習慣病予防協会では、次のように解説されています。

    病気の原因としてわかりやすいのは、細菌やウイルスなどの「病原体」や「有害物質」などです。また、なにかの病気になりやすい体質が先祖から引き継がれる、「遺伝的な要素」も、病気の発症や進行に影響します。そして、もう一つが食習慣、運動習慣、休養のとり方、嗜好(飲酒や喫煙)などの「生活習慣」も、糖尿病、高血圧、さらにはがん、脳卒中、心臓病など多くの疾病の発症や進行に深く関わっていることが明らかになっています。生活習慣病とは、これら三つの要素のうち、三番目の生活習慣にかかわる要素が強い病気をまとめて言い表した総称です。”

    図で表すと次のようになります。

    <グラフ>八大疾病と三大疾病の違い

    八大疾病と三大疾病の違い




    高血圧性疾患
    高血圧症が原因で発症する病気のことです。高血圧症は、三大疾病である心筋梗塞や脳卒中などの重篤な疾病の原因にもなります

    糖尿病
    糖尿病は、インスリンが十分に働かないために、血液中を流れるブドウ糖という糖(血糖)が増えてしまう病気です。血糖の濃度(血糖値)が何年間も高いままで放置されると、血管が傷つき、将来的に心臓病や、失明、腎不全、足の切断といった、より重い病気につながります。

    慢性腎不全
    腎臓病が進行して腎臓の働きが弱くなると腎不全といわれる状態になります。腎不全には、急激に腎臓の機能が低下する急性腎不全と、数か月から数十年の長い年月をかけて腎臓の働きがゆっくりと悪くなる慢性腎不全があります。

    肝硬変
    肝臓に血液中の細胞である「リンパ球」が集まる「炎症」が起こり、これが原因で肝臓の主たる働きをしている「肝細胞」が、長期間にわたって壊れ続ける病気を慢性肝炎と呼びます。慢性肝炎が持続すると、肝細胞が壊れた跡に線維が沈着し肝臓が硬くなります。これが進むと肝硬変になります。

    慢性膵炎
    慢性膵炎は膵臓が作る消化酵素の影響を受けて膵臓自体に慢性的な炎症が起こることで、細胞が変性し線維化や石灰化などが生じる病気です。進行すると膵臓の消化酵素やホルモンが適切に放出できなくなります。

    死亡率は三大疾病の方がより高くなりますが、三大疾病に上記5つを加えた八大疾病においても闘病期間は長くなっています。

    病気も多様化している中で、八大疾病は他の病気と併発する可能性もある怖い病気です。

    より幅広い保障範囲を求める方は八大疾病保障も検討に入れてみてはいかがでしょうか。

  • 日本人の死亡原因の第一位は悪性新生物(がん)、第二位に心疾患が続きます。そして第三位は老衰となっています。

    これまでの統計では第三位は脳血管疾患でした。しかし近年、高齢者の増加にともない、老衰が第三位に上昇してきました。

    <グラフ>日本人の死亡原因

    日本人の死亡原因




    結果として、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患が死因となる割合は約46%となりました。

    1995年の統計では三大疾病が死因の59%を占めていたことを考えると、三大疾病で死亡に至る割合は減っていると言えます。

    それは、医療の進化により、早い段階で有効な治療ができるようになったことも大きく貢献していると考えられます。

    一方で、予後に介護が必要な状態になるケースは多くあります。。

    高度障害状態や要介護状態になると本人が仕事を続けられないばかりか、周りで看護・介護をする人の経済力をも奪ってしまう可能性があります。

    したがって、三大疾病保障とともに高度障害保障や介護保障といった点も合わせて見直しておくと安心でしょう

3-1.就業不能保障~就労不能保障の検討時に知っておきたいこと~

  • 就業不能状態とは「働けなくなる状態」のことです。もし突然の病気やけがで働けなくなったら、障害年金等が支払われるものの、これまで働いていたときのような収入を期待することはできません。

    一方で、収入は減少するにもかかわらず、生活費、住宅費、子どもの教育費などの固定費を急に下げることはできません。

    そのため、働けなくなると収支のバランスが大きく崩れてしまうこともあるのです。

    <グラフ>就業不能時の家計のバランス

    就業不能時の家計のバランス




    そうなると、食費や住宅費を切り詰めたり、子どもが希望していた進学先を諦めるなど、ライフプランの変更を余儀なくされるかもしれません。

    このような事態に備え、就業不能保険に加入する方が増えています。生命保険文化センター「生命保険に関する全国実態調査(2021年度)」によると、生活障害・就業不能保障保険、生活障害・就業不能保障特約の加入率は2018年度の調査時に比べ増加しています。

    共働き世帯が増える中で、夫婦二人の収入が前提で家計が成り立っていることも多くあります。どちらかが働けなくなったときに、もうひとりのパートナーにかかる負担はとても大きいものです。

    どちらかが働けなくなったときにどのようなことが起こるのか話し合い、足りない部分は保険で準備してみてはいかがでしょうか。

    各ご家庭にどのようなリスクが潜んでいるのか、自分たちだけで考えるのは難しい部分もあります。ソナミラに是非一度ご相談ください。

  • 就業不能状態となったときに保障される保険には「就業不能保険」と呼ばれるものがあります。

    民間の就業不能保険がどの部分をカバーするのかを確認しておきましょう。

    <グラフ>就業不能保険のしくみ

    就業不能保険のしくみ




    病気やケガで働けない状態で給付される社会保険制度等には、次のようなものがあります。

    ●障害手当金

    厚生年金に加入している人が障害厚生年金の障害等級(3級)よりも軽い障害状態の場合に、一時的に支給される給付金です。

    ●障害年金

    「障害基礎年金」と「障害厚生年金」があり、病気やけがで初めて医師の診療を受けたときに、国民年金に加入している場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入している場合は「障害厚生年金」が支給されます。

    しかしこれだけでは、働いていたときと同じような生活水準を維持することは難しいケースもあります。

    そこで民間の就業不能保険に加入することで、所定の就業不能状態が所定の期間継続したときに、給付金の支払いを受けることができます。その給付金で収入を補填することができるでしょう。

    「所定の就業不能状態」や「所定の期間の継続日数」は保険商品により異なります。精神疾患によって就業不能状態になった際に給付されるものもあるので、保険を検討するにあたっては具体的なケースを確認しましょう。

    厚生労働省の「雇用の分野における女性活躍推進等に係る現状及び課題(令和6年2月29日)」によると、平成25年と令和6年を比較したときに女性の労働力率は全年代で上昇しています。

    例えば25~29歳の労働力率は平成25年時点で79.0%だったものが令和6年では88.2%まで上昇しています。

    このように男女ともに、ほとんどの人が働く時代です。就業不能となるリスクをしっかりと確認し、不足部分は保険を活用して準備しておきましょう。

  • 令和6年版厚生労働白書(資料編)から「障がい者の概数」を見てみましょう。

    <グラフ>障がい者の概数

    障がい者の概数




    障がいを持つ人の数は1,160.2万人です。この人数には15歳未満や75歳以降の人も集計されています。つまり、就業可能な年齢ではない人も含まれています。

    障がいを持つ人の内訳では、精神障がい者が全体の約53.0%を占めています。このことから、身体の障がいで働けなくなるケースよりも、精神疾患により働けなくなるケースの方が多くなっていると予想できます。

    しかし、病気やケガで働けないときの収入減を補填する就業不能保険の多くは、うつ病や統合失調症などの精神疾患は保障の対象外となっています。

    民間の就業不能保険で、うつ病などの精神疾患が保障対象外とされる理由には、主に次の2点が挙げられます。

    精神疾患は、見た目で疾患の有無が判別しにくい
    ・罹患や回復の状態が把握しにくく、保険の適用範囲を判断しづらい

    精神疾患による就業不能状態に備えるには、傷病手当金などの公的保険制度が中心となることを覚えておきましょう。

    一方で、身体の障がいが原因で働けなくなる場合に関しては公的保険制度に加え、民間の就業不能保険で保障を手厚くすることが可能です。

    病気やケガで手や足などがが動かせなくなってしまうと、日常生活はもちろん、仕事においても制限されてしまうことが多くなります。治療のための入院と異なり、体の機能の改善や回復が見込めない状態になると、、その後の生活にも展望が見いだせないケースが出てきます。

    このような不測の事態に備えて、民間の就業不能保険はこれからも需要が伸びていくものと予想されます。

    就業不能保険は支払の範囲を事前に確認することが大切です。治療にかかる保障とともに、働けなくなった際の保障も検討してみてはいかがでしょうか。

4-1.介護保障~介護保障の検討時に知っておきたいこと~

  • 要介護認定者数は2021年の3月末時点で約690万人となっており、下のグラフのとおり、毎年徐々に増えていることが分かります。

    <グラフ>要介護認定者数の推移

    要介護認定者数の推移




    そもそも「要介護状態」とはどういう状態でしょうか?

    「要介護状態」とは、介護が必要な状態のことで、「身体上又は精神上の障害のために入浴・排せつ・食事等の日常生活の基本的な動作について6か月にわたり継続して、常時介護を要すると見込まれる状態」とされています。

    公的介護保険サービスを受けるためには、「介護が必要な状態である」という客観的な判定を受けなければいけません。

    介護がどれくらい必要か、つまり要介護の度合いを数値で表したのが「要介護度」です。要介護度は「自立」から「要介護5」までの5段階に分けられています。

    2025年には団塊の世代が後期高齢者になり、2040年には団塊ジュニア世代が後期高齢者となることから、今後も要介護認定者数は増えていくと予想されています。

    これらのことから、現在の公的介護保険サービスの内容を維持していくことは、非常に難しいと考えられています。介護の世界では2025年問題や2040年問題として取り上げられています。

    もし、「自分の面倒は自分で!」「できるだけ家族に迷惑をかけたくない!」という想いが強いのであれば、民間の介護保険も選択肢に入れておきましょう。

  • 介護の悩みは、住んでいる地域の市区町村に設置された、地域包括支援センターで相談することができます。地域包括支援センターは、介護や高齢者の生活に関する悩みを無料で相談できる総合窓口となっています。地域包括支援センターで介護の現状や悩みを相談すると、適切なサービスや制度を紹介してくれます。また、要支援と判定された高齢者には介護予防のケアプランを作成します。その他に、まだ介護が必要でない方への予防支援や、高齢者の権利擁護などを行ってくれます。

    怪我や病気で介護が必要になった時は、通院や入院をしている医療機関のソーシャルワーカーが相談に乗ってくれます。

    介護者が介護うつになるケースも出ているため、早めに相談することが大切です。介護者(介護をする人)は、ひとりで抱え込まず、まずは公的機関のサービスを利用しましょう。

    では、どのような人が介護者になりえるのでしょうか。

    <グラフ>要介護者等からみた「主な介護者」の続き柄

    要介護者等からみた「主な介護者」の続き柄




    このグラフのように、配偶者が22.9%、子が16.2%、子の配偶者が5.4%と続きます。このように「同居している人」が45.9%となっている現状をみると、別居しながら介護をすることは難しいということも想像できます。

    もし、介護を受ける親が大阪に住んでいて、介護をする子どもたちが東京に住んでいた場合、週1回帰省するだけで約3万円の交通費がかかります。このくらい距離が離れてしまうと、週1回面倒を看るだけでも、月12万円の介護プランになってしまいます。

    子どもが遠方に住んでいるという人は、最終的には特別養護老人ホームなどの介護施設に入居することも視野に入れて検討をすることになります。

    また、公的介護保険サービスを受けるにあたっては、必ず自費負担が発生するので、金銭的な補填ができる民間の介護保険を検討しておきましょう。

  • 老老介護とは、高齢者の介護を高齢者が行うことです。介護者(介護をする人)も要介護認定者(介護を受ける人)も共に65歳以上であるケースを指します。

    では、老老介護の割合はどのくらいでしょうか?

    <グラフ>「同居の主な介護者」と「要介護者」が65歳以上の割合

    「同居の主な介護者」と「要介護者」が65歳以上の割合




    「同居の主な介護者」と「要介護者」が65歳以上の割合をみてみると、2001年に40.6%だった割合が2022年には63.5%まで上昇しました。

    子どもには迷惑をかけたくないという想いから、高齢の人の介護を、高齢の配偶者が看るケースは今後も増えていくと予想されます。

    そして、老老介護では対応しきれなくなったケースでは、介護の担い手が若い世代に移ってきています。それがヤングケアラーです。

    厚生労働省のヤングケアラーの定義は「家族にケアを要する人がいる場合に、大人が担うようなケア責任を引き受け、家事や家族の世話、介護、感情面のサポートなどを行っている、18歳未満の子どものこと」とされています。

    晩婚化が進んでいることで高齢出産が増え、祖父母と父母、孫たちの年齢差が開くようになりました。共働きが増えたために、祖父母の介護を父母が看られないという事態が増えてきています。結果的に孫にそのしわ寄せが行くというのがヤングケアラーとなるケースです。子ども自体の数も少なく、一人っ子が増えたために、負担が孫に集中してしまうことも問題です。

    更に子どもが介護を担えないケースもあるため、結果的にビジネスケアラーも増えています。

    経済産業省では、仕事と両親の介護を両立させていかざるを得ないビジネスマンが2030年には318万人になると推計されています。

    自分の子どもたちに迷惑をかけたくないという想いから、民間の介護保険を検討する人も増えてきています。

    公的介護保険制度が見直しされている今、自分自身の介護についても考えてみると良いのではないでしょうか。

  • 特養(とくよう)とは「特別養護老人ホーム」の略です。一度は名前を聞いたことがあるのではないでしょうか。この特養は公的機関が運営している老人ホームであるため、比較的低価格で入居ができることから人気の施設となっています。

    看取りまでできる施設が多く、終の棲家として入居できる点が安心できるポイントです。

    入所できる対象者は原則「要介護3以上の認定を受けた65歳以上」となっています。

    一方で、入所申込者数に対して施設の数が足りておらず、待機者数も多いという現状があります。その点では条件を満たせば誰でも入所する資格はあるものの、待機者数が多くて、実際には入所できないというのが実情です。

    <グラフ>特別養護老人ホーム待機者数の推移

    特別養護老人ホーム待機者数の推移




    こちらのグラフのように毎年、待機者数は減ってきてはいるものの未だに約25万人以上が待機している状況です。

    待機者数には地域差もあるため、入所が難しい地域では有料老人ホームへの入所も併せて検討するとよいでしょう。

    また、特別養護老人ホームが比較的安い金額で入所できるとはいえ、決して小さな負担ではありません。入所する上では費用の1~3割は自費負担になるため、資金がどうしても必要になります。

    老後に年金以外の収入がない場合は不安も出てくるかもしれません。公的年金制度だけでは心もとないという方は、個人年金保険や民間の介護保険で賄いましょう。特に介護保険の介護保険金や給付金は非課税で受け取ることができるため、有効な対策になります。

    老後の所得をふやすためには、公的年金の繰り下げ受給も有効ですが、年間の課税所得がふえてしまいます。

    老後の収入がふえてしまうと、社会保険料や公的介護サービスを受けるための自費負担割合も高くなる可能性があります。

    せっかく、老後の所得をふやしても、社会保険料がふえ、公的介護保険サービスの負担もふえていたのでは、あまり意味がありません。

    一方で介護保険金や給付金の場合は課税対象の所得がふえません。非課税で給付されるしくみは有効に活かしていくべきでしょう。

    地域の特別養護老人ホームの状況を調べ、対策を考えておきましょう。

5-1.遺族保障~遺族保障の検討時に知っておきたいこと~

  • 日本では年間、約157万人が亡くなっています。ですから、1日あたりにすると約4,300人が亡くなっていることになります。

    亡くなる方の多くは高齢者であり、若いときから死亡リスクが高いわけではありません。高齢になるほど、死亡のリスクは上がっていきます。

    年齢別にみた死亡者数、およびその主な死因をみてみましょう。

    厚生労働省「人口動態統計(確定数)」令和4年

    <グラフ>年齢別にみた主な死因の状況

    年齢別にみた主な死因の状況




    このように死亡者数で見れば、高齢になるほど死亡者数が増えていくことがわかります。

    死因を見ると、40歳代以上では、悪性新生物(がん)、心疾患、脳血管疾患による死亡が多くなっていきます。

    働いている人がお亡くなりになると、その方によって支えられていた家計の収支のバランスが崩れます。この40歳代や50歳代では子どものいる家庭も多く、万一のときの遺族の生活資金と教育資金は確実に用意しておきたいものです。

    また、20歳代や30歳代でも、不慮の事故に遭遇することがあります。事故はいつ誰に起こるかはわかりません。若いからといって他人事ではないといえるでしょう。

    これに対して、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(2022年度)」によると、「万一」に備えて経済的な準備をしている人の割合は全体で73.1%となっています。

    30歳代で75.0%、40歳代50歳代では8割以上の人が何らかの準備をしています。自分自身に「万一」のことが起こったときに、家族のその後の生活まで準備しておくということが、働いている大人の責任だと考える人が多いのかもしれません。

    生命保険に加入する際は、健康状態を告知することが一般的です。

    大きな病気に罹患している場合は、生命保険に加入することが難しい場合が多くなります。いずれは、生命保険に加入するというお考えであるならば、早くから加入しておくことがお勧めです。

    「あー、あのとき加入しておけばよかった」そうならないようにしましょう。

    今現在、働いて家族の生活を支えている人は、もし自分が亡くなったときに、自分の代わりに誰が家族を養うのかを考えてみましょう。

  • 世帯主が40歳代の4人世帯で有業者1人の場合は生活費が平均約27万円かかるとされています。世帯主に万一のことがあると、一般的にはこの金額の7割くらいが必要と言われます。ですから約19万円くらいかかる試算になります。

    総務省「家計調査(令和4年)」(4人世帯で有業者1人の場合。教育費・住宅費を除く)
    <グラフ>月々の生活費はいくらかかる?

    月々の生活費はいくらかかる?




    万一のときに、その後に遺族が必要するお金には次のようなものがあります。 

    • 遺族の生活費
    • 子どもの養育費
    • 子どもの教育費
    • 子どもの結婚資金
    • 住居費用
    • 自分の葬儀費用
    • 負債の清算資金
    • 相続費用・相続税

     このうち、今回解説している「遺族の生活資金」はもっとも大きなお金の一つとなります。働いて家計を支えている人は、自分が亡くなったあとの生活費を遺族がどのように工面できるか考えてみてください。

    支払可能な毎月の保険料で、家族を養うことができる大きな保険金を用意できる仕組みは、最も合理的な準備方法のひとつではないでしょうか。

    一方、専業主婦(主夫)に万一のことがあった場合は、死亡保障は不要なのでしょうか?専業主婦(主夫)が亡くなった場合、遺された家族が家事等を負担することになります。

    家事をこなすために就業時間を短くしたり、家事代行サービスをお願いするなど、収入の減少や追加の出費が出てくる可能性もあります。このような無償労働も貨幣評価することができます。

    子ども(6歳未満)のいる世帯の無償労働(家事・育児など)を貨幣評価すると次のとおりです。

    • 専業主婦:524.0万円/年
    • 専業主婦の夫:116.6万円/年
    • 共働き世帯の妻:364.4万円/年
    • 共働き世帯の夫:123.0万円/年

     出典:内閣府経済社会総合研究所「「無償労働等の貨幣評価」に関する検討作業報告書(2022年度)」

    家事や育児中心だという方も、貨幣評価した金額が準備できなければ、遺族の誰かがその仕事を担うことになるのです。

    経済的に家計を支える人はもちろん、家事や育児をする人も遺された家族が困らないような準備をしておきましょう。

  • 葬儀費用の目安は、葬儀代やお墓代を合わせて282.6万円となっています。 

    ※出典:株式会社鎌倉新書「第5回お葬式に関する全国調査」「第15回お墓の消費者全国実態調査(2024年)」
    <グラフ>葬儀費用の目安は?

    葬儀費用の目安は?




    万一のことがあったときは、若くても高齢であっても「死後の整理資金」が必要です。「死後の整理資金」とは、主に葬儀やお墓のための費用のことです。

    一時的な費用ではありますが、遺された家族にとって負担になることは間違いありません。

    若いころに不慮の事故等でお亡くなりになると、その葬儀をご両親が行うことになります。ご自身の「死後の整理資金」を準備していない場合は、葬儀費用を両親の老後の貯えの中から捻出させてしまうことになるかもしれません。

    また、医療費の精算なども「死後の整理資金」に含まれます。

    不慮の事故や重い疾患を患った上でお亡くなりになったとすれば、治療に大きなお金がかかっている可能性があります。

    それらの費用の最終的な清算を行うのも遺族になるため、死亡保障は葬儀費用にプラスアルファして準備しておくようにしましょう。

    死亡保障は亡くなったときにしか役立たないと思われがちですが、高度障害状態になった場合にも支払われます。高度障害状態とは、次のような状態を指します。

    〇 両眼の視力を全く永久に失ったもの

    〇 言語またはそしゃくの機能を全く永久に失ったもの

    などです。高度障害状態の詳細は保険契約の約款に記載されています。

    また、死亡保険金は原因にかかわらず医師から余命6か月以内であると判断された場合、将来受け取る死亡保険金に代えて所定額の範囲内で保険金の一部または全部を生前に受け取ることができます。これをリビング・ニーズ特約と言います。

    このように死亡保障を準備しておけば、高度障害になった場合や余命宣告を受けた場合でも役立つ機能があるので、お守りだと思って準備しておく人もいます。

    人はいつか必ず亡くなります。最低限の費用を賄えるよう準備ができていれば、ご家族も安心ではないでしょうか。

  • 団体信用生命保険は団信と呼ばれ、住宅ローンを組む際に契約する生命保険です。住宅ローンの債務者を契約者・被保険者とし、住宅ローンを融資している銀行等を死亡保険金受取人とします。

    住宅ローンの債務者に万一のことがあれば、住宅ローン借入先の金融機関が保険会社から保険金を受け取って住宅ローンの残高の返済にあてるしくみです。

    団体信用生命保険に加入していると、万一のときに住宅ローンの返済が不要となります。したがって、万一のときの遺族の「住居費用」を確保できることになります。

    <グラフ>団体信用生命保険(団信)のしくみ

    団信のしくみ




    団信は住宅ローンの残債を生命保険でカバーします。例えば、次のような場合に住宅ローンの返済が不要となります。 

    • 住宅ローンの債務者が死亡した場合
    • 住宅ローンの債務者が高度障害状態になった場合

    高度障害状態とは、両眼の失明や言語機能の喪失、介護が必要なほどの身体的機能の喪失などです。詳細は団体信用生命保険の契約を行う際に約款で確認してください。

    <グラフ>団体信用生命保険(団信)による債務の返済

    団信による債務の返済




    債務者は一家の家計を支える人がなるため、亡くなった際に住宅ローンが完済されれば、遺族は「住居費用」を工面する必要がなくなります。

    遺族の保障を考える際、遺族の「生活費」と「住居費」は大きな金額になりがちです。そのうちの「住居費」が団信で賄えることになるので、住宅購入前に加入していた生命保険の必要保障額を下げられる可能性があります。

    一方で、住宅を購入する理由として、「子どもが生まれて自宅が手狭になったから」というケースも多いと思います。このようなライフイベントが発生しているケースでは、住宅ローンを組むことで必要保障額から「住居費」を除くことができるものの、子どもが生まれたことにより教育資金などを改めて必要保障額に加えることになります。

    ライフプランの大きな変更時には、生命保険の見直しを合わせて行うようにしましょう。

    そうしなければ、万一のときの保険金額が多すぎたり足りなかったりすることがあるかもしれません。

    自分だけで考えることは難しいことが多いため、専門家に相談するようにしましょう。

6-1.資産形成~資産形成を考える際に知っておきたいこと~

  • 「お金の色分け」とは、資産を目的・期間で色分けし、最適な金融商品にどのくらいのお金を預けるのかを考えることです。各項目を色分けすることで、投資に向けるお金をどの程度にするのかを視覚的に把握するために利用されます。

    <グラフ>お金の色分けとは?

    お金の色分けとは?




    お金の色分けを考えるときに、まず確認が必要なのは、「どの位のお金を投資や運用に回すことができるのか?」「どのくらいのお金を保険に回すべきなのか?」を整理しておくことです。

    以下の3つでお金の色分けを考えてみましょう。

    【お金の色分け】

    • つかうお金:当面の生活費として確保しておくお金

    普段の生活で消費する光熱費等とは別に、いざというときのために、ある程度の期間分を確保しておく、予備の生活費です。会社員であれば生活費の3~6か月分、自営業やフリーランスならば1年分を目安にしておきましょう。

    • ためるお金:使いみちの決まっているお金

    今後5年~10年以内に迎えるライフイベントで「使いみちの決まっているお金」の計画を立てましょう。住宅購入、子どもの教育費、引っ越し費用などがあたります。

    使いみちや目的ごとに確保しておくべきお金について、早めに考えておきましょう。
     

    • ふやすお金:当面使う予定のないお金

    資産総額から上記「つかうお金」「ためるお金」を差し引いたお金が、「ふやすお金」です。

    投資や運用に回せるお金は「ふやすお金」が基本になります。この金額を明らかにした上で、目的にあった金融商品を選びましょう。

    投資や運用を行う際は、早く始めることが大切です。

    お金の色分けは自分だけではなかなか進まない作業ですので、金融のプロに相談して、なるべく早く着手するようにしましょう。

  • 日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果」によると、大学にかかる費用は国公立で約481万円。私立文系の場合は約689万円で、私立理系の場合は約821万円です。

    平均的な教育費を、幼稚園(3歳)から大学を卒業するまで試算すると次のようになります。

    <グラフ>平均的な教育費の試算

    平均的な教育費の試算




    全て国公立を選んだとしても、約1,055万円の費用がかかることがわかります。すべて私立であった場合、教育費の合計は理系の場合で約2,660万円になります。

    中学校くらいまでは、両親がある程度進路を決めることが多いと思いますが、高校入学あたりから子どもにも興味や関心が生まれ、自分の目指す学校の希望が出てくることがあります。大学入学にあたっては、お子さん自身が進路を決めるケースがほとんどではないでしょうか。

    ですから「子どもの希望をかなえるために、選択肢を用意できるようにしたい」と考える親御さんは多いものです。

    大学は私立に進学することを視野に入れ、700万円を目標額として準備しておくと安心できます。

    子どもが生まれてから大学入学までは、18年間あるため、毎月3.2万円程度を積み立てていけばよいことになります。

    18年の期間があれば長期分散投資することも可能ですので、NISA制度を使い、運用することでお金をふやしていくことにも期待できます。

    もし、NISAで金利5%の運用ができるのであれば、毎月20,050円を積み立てれば、18年間で約700万円を積み立てることが可能です。

    一方で、学資保険という選択もあります。

    学資保険の場合は、契約者である親御さんの万一のときの保障もついていることが多いため、保障面でも安心できるプランになります。

    いずれにしても、子どもの出産やそれにともなう教育資金準備は大きなライフイベントです。計画的に準備できるかどうかで、お子さんの未来も変わってくるかもしれません。

    どのような商品が選択肢にあるのか、一度専門家に相談してみましょう。

  • ゆとりある老後生活を送ろうとした場合、老後資金は約4,291万円必要になります。

    2019年に、金融庁が発出した「金融審査会市場ワーキング・グループ報告書」により、「老後2,000万円問題」が話題になりました。

    この金額は、高齢者夫婦(無職世帯)の平均的な支出263,718円に対して、公的年金だけでは不足する金額(毎月54,520円)を元に計算されています。

    しかし、今後の公的年金の支給額は更に減ってくると予測されるため、老後資金2,000万円を準備するだけでは、少し不安です。

    これから老後資金準備を考えるならば「ゆとりのある老後を送るために必要な老後資金」を考えておきましょう。

    <グラフ>ゆとりある老後のために必要な老後資金

    ゆとりある老後のために必要な老後資金




    ゆとりある老後生活を送ろうとした場合、毎月の生活費は夫婦2人の場合で37.9万円*1かかるとされています。

    *1 生命保険文化センター「2022年度 生活保障に関する調査」

    一方で、夫婦2人の老齢年金額は、会社員と専業主婦の場合では毎月23.0万円*2になると試算されています。

    *2 厚生労働省「令和6年度の年金改定について」平均的な収入(平均標準報酬月額43.9万円)で40年間就業した場合に受取始める年金(老齢厚生年金と夫婦2人分の老齢基礎年金)の給付水準。

    したがって、ゆとりある老後生活を送ろうとした場合、毎月14.9万円が不足する計算になります。60歳で退職した場合、男性の平均余命は約24年*3ありますので、14.9万円かける12か月、そして24年をかけると約4,291万円となります。

    *3 厚生労働省の令和4年の簡易生命表

    これは男性が84歳で亡くなる計算であり、夫が亡くなった後の妻の老後生活資金は含まれていません。人生100年時代と言われる今、この金額では不足する可能性があります。

    長くなった人生においては、老後生活資金準備を効率的に行うと同時に、年金として受け取りながらふやしていくことも考えなければなりません。

    iDeCoやNISAなどの税制優遇制度だけでなく、個人年金保険や貯蓄性のある終身保険など、民間の保険商品もうまく活用しながら準備していくと良いのではないでしょうか。

  • 金融広報中央委員会「金融リテラシー調査2022」によると、「金融知識に自信がある人の割合」は日本人で12%、アメリカ人で71%でした。この点だけを見れば、日本人はアメリカ人と比較したときに、「資産運用には向いていない気質」と言えるかもしれません。

    <グラフ>金融知識に対する自信

    金融知識に対する自信




    金融知識に自信を持ち、資産運用に向かっていくために「金融教育をもっと行うべきだ」という意見もありますが、そもそもの国民性による違いがあるのかもしれません。

    このような違いから、家計の金融資産構成においても日本ではリスク性の金融商品(株式等)の割合が少ない傾向があります。

    日本銀行の調査統計局「資金循環の日米比較」を見てみましょう。

    <グラフ>家計の金融資産構成

    家計の金融資産形成




    このように株式等の保有割合が日本では11.0%、アメリカでは39.4%となっていて、日本とアメリカで大きく異なることが分かります。

    日本では長らくデフレが続いていたため、これまでは元本割れを避ければ資産価値を守ることができました。

    しかし、今後アメリカのようにインフレが継続していくとなると、実質的な資産価値が目減りしていくとも考えられます。

    例えば、公的年金を見てみると、2023年度の国民年金支給額は66,250円から68,000円に2.7%増えていますが、前年度の物価上昇率(消費者物価指数(生鮮食品を含む))は3.0%の上昇となっており、公的年金の上昇率が物価の上昇率に追い付いていないことがわかります。

    同じように預金に預けていると、物価上昇よりも低い金利でしかお金がふえていかないため、インフレが継続すると資産価値が下がっていくのです。

    一方で、株式や債券が組み込まれた銘柄へ投資できる投資信託は、一般的にインフレに強い金融商品だと言われています。今後は、適切な資産の配分として、株式や投資信託の比率を上げる必要が出てくると考えられます。

    そのときに必要なことは、正しい金融知識を身につけ、少しでも優遇されている制度を活用することです。

    このどちらにおいても、信頼できるお金のプロからの意見を聞くことが大事になってきます。これを機会に、一度お金の専門家に相談されてみてはいかがでしょうか。