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男性の育休における平均取得期間は?日数の公表義務化を解説します!

目次

近年、男性の育児休業(育休)取得が注目を集めています。2023年4月から従業員が1,000名を超える企業において、男性従業員の育児休業取得日数を公表することが義務化されました。

そして2025年4月からは従業員が300人超1,000人以下の企業も義務化されることになっています。このように、育休を取り巻く環境が大きく変わってきているのです。

一方で「男性の育休の平均取得期間はどれくらいなのか?」「実際に育休を取得するためには何が必要なのか?」といった疑問を抱えている人も多いのではないでしょうか。

そこでこの記事では、男性の育休取得に関する最新データや、法改正で義務化された日数公表制度について詳しく解説します。加えて、育休を取りやすくするための職場の工夫や、育休取得を成功させるためのポイントもご紹介します。

これを読めば、男性が育休を取得する際の不安や疑問が解消されるはずです。ぜひ最後までご覧ください!

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男性の育児休業取得の現状

男女の育児休業取の得率の状況




厚生労働省の「令和6年版 厚生労働白書」や積水ハウス株式会社が調査した「男性育休白書 2024」をもとに、日本における男性の育児休業の現状を紐解いていきましょう。

育休取得率と取得日数の増加

「男性育休白書 2024」によると、育休取得率は2019年の9.6%から2024年には27.3%へ、約2.8倍に増加し、過去最高を記録しています。また、厚生労働省の育児休業取得率の推移は、2022年までの推移しか統計がありませんが、男性の育児休業取得率は右肩上がりで伸びていることが分かります。

政府は目標として2025年に50%、2030年には85%を掲げているので、これからも推進されていくことでしょう。

また、平均取得日数も2019年の2.4日から2024年には29.9日へと約12.6倍に増加し、取得期間の長期化が進んでいます。

2人目以降の育休取得傾向

2人目以降で初めて育休を取得した男性は36.8%に上っています。つまり1人目が誕生したときよりも育児休業を取得しやすい環境に移ってきていると推測されます。更に平均取得日数も2人目以降の育休取得者の平均取得日数は129.9日と、1人目よりも長期化する傾向が見られ、こちらもより制度が浸透していることを表しているのではないでしょうか。

育休取得の効果

育休取得により、様々な良い効果が出ています。例えば、育休取得後に復職した男性は、職場でのコミュニケーションの増加や業務効率の向上など、ポジティブな変化を感じているようです。

また、夫が育休を取得した際の、妻の職場復帰率が高くなっており、復職のタイミングも早い傾向が出ています。そして、夫の育休取得日数が長いほど、妻の仕事への意欲やキャリアアップへの前向きな姿勢が高まっています。

「とるだけ育休」の課題

一方、育児休業を取得した夫が、ほとんど育児をしないケースがあることも課題として挙がっています。これは「とるだけ育休」と呼ばれています。

育休を取得した夫の34.8%が自分の育休を「とるだけ育休」と自覚する一方、妻の42.0%が夫の育休を「とるだけ育休」と評価しています。残念ながら、夫が認識する以上に妻は夫の育児への寄与度が低いと感じているようです。

このように妻が夫の育休を「とるだけ育休」と感じている場合は、育休期間中の満足度が低くなる傾向があり、本来の目的が機能しない恐れもあるようです。

日数の公表義務化とは?

データ分析




上述した通り、男性の育児休業取得は急速に広まっていますが、その背景には国が企業を後押ししていることが大きく寄与しています。

その後押しをする施策の一つが「育児休業取得日数の公表義務化」です。正式には「育児休業取得率等の公表義務化」といい、企業に対し、男性の「従業員の育児休業取得率」と「育児休業以外の制度利用状況」の公表を義務付ける制度です。この制度により、企業は男性従業員の育休取得をより積極的に推進する責任を負うことになります。

また、データを可視化することにより、男性従業員やその家族、そして社会全体が育児に関する意識を高めるきっかけとなることが期待されています。

政策の意図

「男性従業員の育児休業取得率等の公表」は、日本政府が進める育児休業促進政策の一環として、育児と仕事の両立を支援する目的で導入されました。
この政策には次のような3つの意図があります。

❶ 男性の育児参加を促進する

「育児は女性だけでなく、男性も積極的に関与すべき」という認識を広めます。男女ともに育児休業を取得しやすい社会環境の整備を目指します。

❷ 企業の意識改革を行う

男性の育休取得率を公表することで、企業に対し育児休業を推進する責任を課します。他企業との比較により競争意欲を高め、育休取得促進に繋げます。

❸ 出生率の向上を目指す

育児休業を取得しやすい環境を整えることで、家庭での育児負担を軽減し、子どもを持つことへの心理的・経済的負担を軽減します。

制度の詳細

従業員が1,000人以上の大企業は、「男性従業員の育児休業取得率」および「育児休業以外の制度利用状況」を毎年公表することが義務付けられています。そして、2025年4月からは従業員が300人超1,000人以下の企業においても、「男性従業員の育児休業取得率等の公表」が義務化されます。

公表内容は主に2つあります。まず「育児休業取得率」は直近の年度における男性従業員の育児休業取得率となっています。もうひとつの「育児休業以外の制度利用状況」は育児のために利用可能な短時間勤務やフレックスタイム制度の利用実績を指します。

公表方法は企業のウェブサイトや会社案内など、公衆が閲覧可能な形で公開する、もしくは書面やオンライン形式などとなっています。

具体的な公表手段は企業に委ねられますが、透明性を確保することが求められています。実施しない場合、直接的な罰則は設けられていませんが、未公表や虚偽公表が発覚した場合、企業の社会的信頼に影響する可能性があります。

男性が育児休業を取りやすくするために必要なこと

ビルの前で上を見上げるビジネスマン




男性が育児休業を取りやすくするには、「支援体制の強化」「企業文化の改革」「柔軟な働き方の導入」そして「職場全体の理解」の4つの要素が不可欠です。企業と職場が一丸となってこれらの課題に取り組むことで、男性が育児休業を取得しやすい環境が整います。

1. 支援体制の強化

男性が育児休業を取りやすくするためには、安心して休業を取得できるような支援体制が欠かせません。

企業側が育児休業に関する法律や社内制度を従業員にしっかりと伝え、制度を周知させることは最初の段階で必要なことでしょう。

また、男性が育休取得に関する不安を相談できる窓口を設けることや、育児や育休の重要性を学ぶ研修を実施し、男性が主体的に育児に関与できる環境を作ることも、育児休業を推進する上で重要な取り組みになります。

2. 企業文化の改革

男性が育児休業を取りづらい背景には、これまでの既成概念が妨げになっているケースもあります。このような古い企業文化を見直し、企業が「男性も育児休業を取るのが当たり前」という文化を醸成することが重要になってきます。これらを実現するためには、経営陣が率先して育児休業取得を推奨し、その価値を従業員に伝えることが大切です。

また、育休を取得した男性従業員の事例を社内で広め、ロールモデルとして推奨することで、取得しやすい雰囲気をつくることも効果的です。更に、人事評価制度を見直し、育児休業取得がキャリアにマイナスにならない評価基準を設けることで、より安心して取得できる環境を作っていくこともポイントになります。

3. 柔軟な働き方の導入

支援体制が整い、企業文化として取得推奨される環境となったとしても、実際に運用しづらければ意味がありません。このような環境を改善し、育児休業後の職場復帰をスムーズにするために、柔軟な働き方を推進することが効果的です。テレワークやフレックスタイム制度は、育児中でも家庭と仕事を両立しやすい働き方を提供する制度です。

また、短時間勤務制度があれば、育児休業終了後も、子育てに充てる時間を確保しやすい勤務形態を用意することができます。

4. 職場全体の理解

会社というのは組織で仕事をしています。育児休業を取っている人の仕事は部署のメンバーでフォローするため、職場の理解が進まないと育児休業を取りづらい環境になります。同僚や上司の協力を引き出すためにも、育児休業の目的や重要性を部署内で共有し、理解を深めておくことが求められます。

また、育児休業を取得しても業務が滞らないよう、事前に分担や調整を行うことも上司に求められる差配のひとつになります。

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育児休業取得で得られるメリットと不安の解消

子育てをしながら不安を感じている男性




男性が育児休業を取得することで得られるメリットは非常に多く、家庭内外でのポジティブな影響が期待されます。一方で、取得にあたっての不安も存在します。その不安に対する解消方法についても見ていきましょう。

男性が育児休業を取得するメリット

男性が育児休業を取得することには、多くのメリットがあります。まず、最も大きなメリットの一つは、家族との絆が深まることです。

育児休業中に子どもと過ごす時間を持つことで、父親としての存在感を子どもに示し、子どもの成長を間近で感じることができます。また、育児を通じてパートナーの負担を軽減することで、夫婦間の信頼関係や協力体制が強化され、家庭全体がより安定したものになります。さらに、男性自身の育児スキルが向上する点も見逃せません。

育児を経験することで、子どもの欲求や日々の生活リズムを理解しやすくなり、長期的には家庭内での役割分担がスムーズになります。これは、育児だけでなく、将来的に子どもが成長しても父親としてのサポートがしやすくなるという大きなメリットにつながります。

また、育児休業は仕事に対する視点を広げるきっかけにもなります。育児を通じて効率的な働き方やタイムマネジメントのスキルが磨かれるため、育休後の仕事においてもその経験が活かされます。

さらに、家庭と仕事の両立を体験することで、ワークライフバランスの重要性を改めて実感し、より充実した生活を送る基盤を築くことができます。

このように、男性が育児休業を取得することは、家族や職場にとっても有益であり、父親としてだけでなく、個人としての成長にもつながる大きなメリットがあると言えます。

男性が感じる不安とその解消方法

男性が育児休業を取得するにあたっては、どのような不安を抱えることが多いのでしょうか。その不安の内容と解消方法をみていきましょう。

職場復帰への影響

男性に限ることではありませんが、育休取得が出世に悪影響を及ぼすのではないかという不安は、キャリアを重視する人に取って大きな問題です。この場合、休業を取得する前に、育児休業取得者を評価する制度について確認しておくことで安心できることもあります。

また、育休取得後のキャリアを考える上で、企業が提供する「育休者向けのキャリア支援」を活用するのも一つの方法です。復帰後のキャリア相談や、時短勤務者向けのプロジェクトなど、働き方の選択肢がふえている企業もあります。また、育休中にオンラインで資格取得をすることで、復帰後のキャリアの幅を広げることも可能です。

厚生労働省が中小企業向けに「育休復帰支援プラン」策定マニュアルを提供しているので、環境が整っている企業もふえてきていると考えられます。人事部門に問い合わせをしてみましょう。

収入減少への不安

育児休業中は基本的に、給与は支払われません。ただし、収入が完全になくなるわけではなく、育児休業給付金などの一定の経済的支援を受けることができます。
育児休業給付金や企業独自の支援など、利用可能な経済的支援制度を調べて、活用できるかを確認してみましょう。

職場や同僚の目線

男性の育児休業取得に対して、企業文化や職場の理解が追い付いていないと、「休業を取得すること」に対する偏見の目を恐れ、取得を控えるケースもあります。
取得前に職場のメンバーや上司と丁寧にコミュニケーションを取り、理解を求めることで、歪を生まないように心がけましょう。

育児への不安

自分が育児をきちんとこなせるかということも心配のひとつです。育児に貢献できなければ、「とるだけ育休」に繋がり、配偶者の負担を減らすことに至りません。
偶者と協力して育児関連の情報を収集し、スキルを身につけ、スムーズに育児に入れるよう準備していきましょう。

育児休業の取得を成功させるためのアドバイス

向かい合って話し合いをする夫婦




育児休業をスムーズに取得し、有意義な時間を過ごすためには、しっかりとした計画が必要です。

男性が育児休業を取得するための具体的なステップをご紹介します。これから育児休業の申出をしようと考えている人は参考にしてください。

ステップ1. 自分自身の目標と目的を明確にする

育児休業を計画する際は、まず自分自身の目標や目的を明確にすることが重要です。「育児休業でどのような役割を果たしたいのか」「子どもや家族にどのように関わりたいのか」を考えましょう。

たとえば、「子どもの成長を間近で見守りたい」「パートナーの負担を軽減したい」といった具体的な目標を設定することで、育休の価値がより実感できます。

ステップ2. 育児休業取得のための手続きを整理する

育児休業を実現するためには、事前の計画が欠かせません。手順を整理しておきましょう。

  • 取得期間の選定
    出産予定日や家族の状況を考慮して、どのタイミングで取得するかを決めます。
  • 必要な手続きの確認
    会社の就業規則や育児休業給付金の申請方法を把握し、スケジュールに組み込みましょう。
  • 仕事の引き継ぎ
    育休中に業務がスムーズに進むよう、上司や同僚と協力して引き継ぎを行いましょう。

ステップ3.  家族との話し合い

育休を有効活用するには、家族全員で話し合い、共通の理解を持つことが大切です。夫からパパに華麗に転身するために、家族の中での新たな役割を具体的に決めましょう。

そして、「とるだけ育休」にならないようにするためには、育休前から具体的な育児スキルを身につけることも大切です。例えば、自治体が開催する育児セミナーに参加して、おむつ替え、夜間対応などを学んでおくと、実践で役立ちます。

このような育児スキルを身につけた上で、家事・育児の分担ルールをパートナーと決めておけば、確りと役割を全うできるのではないでしょうか。

ステップ4. 経験者の話を参考にする

育児休業を成功させるためには、すでに育休を取得した人の経験を参考にすることも有益です。同僚や友人、オンラインコミュニティで情報を収集しましょう。

「実際に育休を取ってどう感じたか」「困ったことは何か」など、リアルな声を聞くことで、自分の計画に活かせるヒントが得られます。

ステップ5. 育児休業中の過ごし方を考える

計画を立てるだけでなく、実際に育児休業中にどのように時間を使うかを考えることも重要です。自分自身で子どもと過ごす時間を大切にするだけでなく、家事やパートナーのサポートにも力を入れましょう。また、育児中の課題や悩みを解決するために、地域の育児支援サービスを活用するのもおすすめです。

ステップ6. 職場との円滑なコミュニケーション

職場との連携も育休取得には不可欠です。計画を立てたら、上司や同僚に早めに相談し、理解を得るように努めましょう。気持ちよく育児休業を取得できる環境を築くことで、職場復帰もスムーズになります。

育児休業を取得するタイミングでマネープランを見直そう

子育てする夫婦




男性の育児休業取得は、家族との絆を深め、子どもの成長を間近で感じられる貴重な機会です。また、夫婦間の協力体制を強化し、家庭内での役割分担を見直すきっかけにもなります。そのため、積極的に利用していきたいものです。

一方で、職場の理解不足や復帰時の悩み、収入減少への不安を抱えて取得をためらう人がいることも事実です。このような不安は、育児休業給付金や柔軟な働き方の導入など、利用できる制度や支援を理解することで軽減させることが可能かもしれません。

また、育児休業を計画する際に、マネープランを合わせて考えることで、不安を解消させることもできます。育児には予想以上に費用がかかることが多いため、事前に家計を見直し、必要な資金を積み立てておくことが大切なのです。

マネープランを考える際は、夫婦で話し合いをすると同時に金融のプロに相談することで、整理しやすくなります。夫婦だけでは気づかなかった積立の仕方やリスク管理の方法など、アドバイスを受けながら計画していけば、より実現性の高いものになるはずです。

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▼参考
育児休業取得率の推移
出典:厚生労働省「令和6年版 厚生労働白書-こころの健康と向き合い、健やかに暮らすことのできる社会に」図表1-1-4 育児休業取得率の推移 

男性の育休取得に日数
出典:積水ハウス「男性育休白書2024」

育休復帰支援プラン
出典:厚生労働省「育休復帰支援プラン」策定マニュアル


  • 監修者
    門脇 麗佳さん

    国家資格キャリアコンサルタント、コーチ 企業研修やキャリアコンサルティングを専門とし、人事制度構築や組織開発の経験を活かして、組織や個人のパフォーマンス最大化をサポート。中小企業経営者、大手企業の若手層からミドルシニア層まで、幅広いクライアントに対応している。 モットーは「活き活きと“はたらく”をデザインする」こと。

  • ソナミラ編集部さん

    「健康で豊かなミライにソナえる」をコンセプトに、マネー・ライフデザインをテーマとしたコンテンツを発信しています。 あなたの可能性を広げるため、読んでためになったと思える記事の制作を心掛けています。