リスキリングでは何を学ぶ?おすすめのスキルと資格取得の意義を解説

近年、働き方やビジネス環境が急速に変化する中で、「リスキリング」という言葉が注目を集めています。これは、どうしてでしょうか。
デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進や、AIなどのテクノロジーの進化が進む現代において、既存のスキルだけでは対応できない場面が増えてきています。そんな中、企業も個人も新しいスキルを学び直すことが求められているのです。
そこでこの記事では、「リスキリングで何を学ぶべきか?」という疑問に答えるとともに、具体的なスキルや資格の例、リスキリングのメリットについて詳しく解説します。これからのキャリア形成や、企業での活躍を目指す人にとって、有益な情報が満載です。ぜひ最後までご覧ください。
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リスキリングとは何か?
「リスキリング」は単なるスキルアップとは異なります。現在の業務やスキルセット*にとらわれず、「将来の職務に向けた学び直しを行う」という俯瞰的な視点が重要です。
ここではリスキリングの定義を確認し、企業がリスキリングに何を求めているのか。また個人としてどのように活動することがポイントとなるのかをみていきます。
*スキルセットとは、特定の職務や業務を遂行するために必要なスキルや能力の集合体を指します。個人が持つ技術的な知識や専門的な能力だけでなく、コミュニケーション能力やリーダーシップなどのソフトスキルも含まれます。
リスキリングの定義
リスキリング(Reskilling)とは、既存のスキルや知識を活かしつつ、新たに必要なスキルを習得する過程(プロセス)を指します。
最近では、デジタルトランスフォーメーション(DX)の進展や市場の変化に伴い、企業や個人が新しい環境に適応するための欠かせない取り組みとなっています。具体的には、次のような場面でリスキリングが必要とされています。
キャリアチェンジ
従来の職種から異なる分野に転職や異動をする際に、新たな知識やスキルを身につける必要があります。
AIや自動化技術の普及
従来業務が効率化され、AIに仕事を命じることによって仕事を幅広くこなす必要が出てきています。AI活用も新しいスキルのひとつです。
市場競争への対応
グローバル市場での競争力を保つため、時代の変化に合ったスキルを獲得する必要があります。
企業と個人の視点
企業から見たリスキリングは、組織の競争力を維持するための戦略の一つといえます。急速に変化する市場環境に対応するためには、従業員が最新の技術や知識を習得し、新しい業務を担う必要があります。企業がリスキリングを推進する理由を3つにまとめて解説していきます。
❶ 優秀な人材を定着させたい
国際的に見ても、雇用の流動化が進んでいます。エン・ジャパン「8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査」を見ると、組織の中核を担う26~34歳の層が「人間関係の悪さ」や「評価人事制度に対する不満」よりも「自分の成長が止まった」ことを理由として退職を考えていることが分かります。
世の中でキャリアチェンジが一般的なものになっていく中、中核人材を組織に留めておく必要が出てきています。その為、会社が社員に成長機会を提供することで、離職率を下げることが期待できるといえます。
❷ DXを推進して業務を効率化したい
多くの企業がDXの推進を掲げていますが、そもそも企業内のどの分野や業務をDXにより効率化させていくのかが整理できていないことが多くあります。
このような環境下でデジタル化を進めるためには、各部署にITスキルを持つ人材が育っていくことが理想です。そこで、外部のDX人材を採用すると同時に、従業員のスキルを高めていくことが、より重要になってきています。
❸ 柔軟な人材配置を行いたい
大きな組織ほど、各部署の専門性は高まり、一つの部署に長く就業していると属人化していくスキルや知識が出てきてしまいます。他部署でも活躍できるスキルを身につけることで、企業内の人材異動を円滑に進め、部署間のスキル共有を行うことが組織の強靭化に寄与すると言えるでしょう。
このように組織内でのリスキリングを成功させるためには、効果的な研修プログラムの導入や、社員のモチベーションを高める仕組みが必要になってくると考えられます。一方で、個人から見たリスキリングには、どのようなことが期待できるのでしょうか。
個人にとってリスキリングは、キャリアの可能性を広げる大きなチャンスです。やる気になれば、学ぶ場は以前よりも多く提供されていると言えます。例えば、リスキリングのための支援制度や、自己学習するためのオンライン学習プラットフォーム(e-ラーニング等)は以前よりも手軽に使えるようになっています。
リスキリングの価値を理解し、モチベーションを高めれば、年齢や職種を問わず、誰もが学び直す機会は与えられる時代になってきています。
リスキリングで学ぶべきスキルと資格
では、リスキリングを通じて何を学んでいけばいいのでしょうか。おすすめのスキルと資格取得の意義について解説していきます。
注目のスキル
現代のビジネス環境や技術の進化に対応するために、以下の3つのスキル・カテゴリーがリスキリングの対象として注目されています。
❶ デジタルスキルの例
- データ分析
データを活用した意思決定が求められる時代において、統計や分析ツール(例:Excel、Tableauなど)の習得が重要視されています。 - プログラミング
ソフトウェアやアプリ開発、ウェブ開発に必要なスキル。PythonやJavaScriptなど、汎用性の高い言語が注目されています。 - AI・機械学習
AIや自動化技術が普及する中で、基礎的なAIアルゴリズムや機械学習の知識は高い価値があります。 - サイバーセキュリティ
デジタル化が進むほど、企業や個人のデータを守るスキルが必要とされます。
❷ ソフトスキルの例
- 問題解決能力
複雑な課題に対処するための論理的思考やクリエイティブなアプローチのことを指します。 - コミュニケーションスキル
チーム内やクライアントとの円滑な意思疎通を図る能力で、スキルとして磨くことが可能です。 - リーダーシップスキル
プロジェクト管理やチームを率いる能力は、どの職場でも求められます。
❸ 業界特化スキルの例
- プロジェクトマネジメント手法
大規模なプロジェクトを効率的に進める手法が求められています。アジャイルやスクラムなど、システム開発に用いられるフレームワークは複雑なプロジェクトを運営する際にも応用されています。 - 老年学に関する知識
超高齢社会となる中で、消費者のニーズも高齢化しています。高齢者向けのサービスやマーケティングを行うためには、高齢者の動向を読み取る、これまでとは異なるアプローチが必要です。人、物、事、サービスなどあらゆるものに老年学的な視点が必要となってきています。 - サステナビリティ
サステナビリティ(持続可能性)は、企業が長期的に存続し、社会や環境に貢献するための重要な概念です。具体的には、経済的な成長だけでなく、環境保護や社会的な責任をバランスよく追求することを指します。短期的な利益追求ではなく、長期的な成長と社会への貢献を両立する企業の姿勢を示すために、これらの経営に明るい人材が求められています。
おすすめの資格
資格取得は、身につけるべきスキルが知識として定着しているのかを確認する良い仕組みです。資格への合格を目標とすることで、学びのモチベーションを維持することができ、取得すればキャリアチェンジにも大きく役立ちます。興味のある分野には、積極的にチャレンジしてみましょう。
❶ デジタルスキルに関連する資格
- データ分析に関する資格
◆MOS(Microsoft Office Specialist)Excel Expert:高度なExcel操作を学びながら、データ分析の基礎スキルを証明できます。
◆Tableau Desktop Specialist:Tableauの基本操作を学べる資格で、初心者にも取り組みやすい内容になっています。
◆データ分析実務スキル検定(CBAS) ベーシックレベル:日本国内で受験可能な資格で、データ分析の基礎(統計やデータ整理)を対象としています。 - プログラミングに関する資格
◆Python認定エンジニア資格試験(基礎編):初心者向けにPythonの基本文法や簡単なプログラム作成を学べる試験です。
◆JavaScript Developer Certification:JavaScriptの基礎的な知識を習得しているかを確認できます。簡単なウェブ開発に役立つ内容です。 - AI・機械学習に関する資格
◆E資格:AI・機械学習の基礎知識や、AIの現状や仕組みを学べる試験です。実装スキルではなく理論や知識に焦点を当てているため、初心者にも最適です。
◆Google Cloud Skill Badge: Machine Learning Foundations:無料トレーニングコースを通じて基礎知識を学べる認定です。初心者向けの学習認定バッジです。 - サイバーセキュリティに関する資格
◆CompTIA Security+:セキュリティの基礎を幅広くカバーしており、IT初心者にも適した内容です。
◆情報セキュリティマネジメント試験(ISMS):日本国内の資格で、セキュリティの基本的な管理やリスクについて学べる試験です。
❷ ソフトスキルに関連する資格
- 問題解決能力に関する資格
◆Six Sigma Green Belt(シックスシグマ):世界的に有名な資格で、プロセス改善や問題解決スキルを証明する資格です。製造業やサービス業で広く活用されています。
◆ロジカルシンキング認定講座:日本国内で人気が高く、論理的思考を学びたい初心者から中級者に最適です。 - コミュニケーションに関する資格
◆ビジネスコミュニケーション技能認定試験:日本国内で幅広い業種に対応しており、基礎から実務的なコミュニケーションスキルを認定する資格です。
◆DiSC認定トレーニング:世界的に認知されている資格で、コミュニケーションスタイルの違いを理解し、効果的な対話を促進するスキルを学べます。 - リーダーシップに関する資格
◆PMP(Project Management Professional):国際的に最も有名なプロジェクト管理の資格。リーダーシップスキルの証明として高い評価を得ています。
◆Certified ScrumMaster (CSM):アジャイル手法を採用する企業で非常に評価が高く、リーダーシップとチーム管理能力を証明します。
❸ 業界特化の資格
- プロジェクトマネジメントに関する資格
◆PRINCE2 Practitioner:欧州で広く採用されているプロジェクトマネジメント手法の資格で、プロジェクトを体系的に進めるスキルを認定します。日本語で資格取得ができます。 - 老年学に関する資格
◆社会福祉士資格(日本):高齢者福祉や支援に必要な専門知識を持つ資格。特に日本の高齢社会で重要性が高い資格です。
◆Certified Senior Advisor (CSA):高齢者向けのサービスやマーケティングに特化した国際的な資格で、老年学的な視点を取り入れることを目指します。CSA資格を取得するためには、CSA試験に合格する必要があります。試験はオンラインで受験可能で、米国以外からでも受験できます。
◆Gerontology Certificate Programs(老年学認定プログラム):海外の大学や機関で提供される老年学に関する基礎的な知識を学べる認定プログラムです。 - サステナビリティに関する資格
◆SDGs認定資格(日本):持続可能な開発目標(SDGs)に関する基礎知識を学べる資格です。企業活動や社会貢献に役立ちます。
◆LEED Green Associate:環境に優しい建築や持続可能性に関する基礎知識を学べる国際資格です。特に環境デザインや建築業界で評価が高いです。日本語と英語の併記で受験することができます。
◆GRI Certified Training Program:サステナビリティレポート作成のための知識を学ぶプログラムで、企業の持続可能性戦略をサポートする資格です。日本でGRI認定トレーニングプログラムを受講し、資格を取得することが可能です。
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リスキリングのメリットとデメリット
リスキリングは、成長を支える大きな可能性を持つ一方で、コスト(時間や費用)がかかります。個人でリスキリングに取り組む際、どのようなメリットやデメリットが存在するのかをみてみましょう。
メリット
メリット1. キャリアの安定と成長
新しいスキルを習得することで、企業内での解雇リスクを減らすことができます。また社内でより良いキャリアパスを築くことができます。
メリット2. 収入アップの可能性
より専門性の高い部署への異動を実現させることで、給与や待遇の向上が期待できます。
メリット3. 自己実現
興味のある分野や新しい技術を学ぶことで、自己成長を実感することができます。給与を得るための働き方から、やりがいを高める働き方へ変えていくことができます。
デメリットと課題
デメリット1. 時間と費用の負担
新しいスキルを学ぶには、まとまった時間と費用が必要です。学ぶための費用を個人で捻出することは、想像以上に負担の大きいことでもあります。なぜなら、就業している人の個人金融資産保有額は決して大きくはないからです。その一例として金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査 二人以上世帯調査 令和5年」および「家計の金融行動に関する世論調査 単身世帯調査 令和5年」より、年齢別の金融資産保有額をみてみましょう。
単身世帯40歳代の貯蓄額の中央値は47万円となっています。この貯蓄額では、ケガや病気の時に必要な緊急予備資金としても十分ではないと考えられます。このような経済環境の中で費用を捻出することは厳しいのが現実です。
デメリット2. スキルの定着が難しい
習得した技能を実務で活用する機会が少ない場合、スキルが十分に定着しない可能性があります。例えば、動画編集を覚えても、実務をこなさなければスキルは発揮されず、身につけたものが失われていく可能性もあります。
デメリット3. 効果がすぐに出ない
習得したスキルを成果に結びつけるには時間がかかることがあり、短期的な効果を期待しにくい場合があります。一般的に学んだスキルが仕事に活かせるレベルにまで高まるには時間がかかります。結局、仕事の納期に間に合わず、旧来のやり方で仕事をこなしてしまうということも出てきます。
リスキリングの具体的な取り組み方
上述した通り、リスキリングにはコストがかかります。変化の激しい現代社会において、無駄なくリスキリングを成功させるためには、体系的なアプローチが必要です。個人の視点からリスキリングに取り組むための方法を解説します。
取り組むための5つのステップ
リスキリングを実践するには、明確な目標と具体的な計画が欠かせません。次のような5つのステップを踏むことで、リスキリングを効果的に進めることができます。
ステップ1. 現在のスキルの棚卸し
最初に、自分が持っているスキルセットを見直し、どの分野に強みがあるのかを把握します。
また、今後のキャリア目標や興味を踏まえ、スキルマップ*等を活用し、どのスキルが不足しているかを特定しましょう。
*スキルマップとは「仕事に関する具体的なスキルを洗い出し、各従業員の持っているスキルを一覧にした表」のことです。組織内のスキルの状況を把握し、計画的な人材育成を図るために使われます。
ステップ2. 目標の設定
具体的な目標を設定することで、リスキリングを効果的に進めることができます。
目標は「3か月でデータ分析の基礎を学ぶ」など、明確かつ達成可能なものにします。
ステップ3. 学習方法の選択
目標に基づき、適切な学習方法を選びます。
- オンライン学習
e-ラーニングプラットフォーム(例:Udemy、Coursera)はいつでもどこでも学べることが強みです。 - ワークショップやセミナー
実践的な学びを得るための場として活用でき、参加者同士の交流により実践的な知識を養えます。 - 資格取得
学びの成果を証明するための手段になります。
ステップ4. 学んだスキルの実践
学んだスキルを実務やプロジェクトで活用することで、定着を図ります。可能であれば、社内プロジェクトや副業を活用して実践経験を積むと良いでしょう。
ステップ5. 進捗のレビューと改善
定期的に進捗を振り返り、必要に応じて目標や学習計画を見直します。これにより、目標達成に向けた道筋を調整できます。
企業が提供する支援制度の活用
外部に学びの場を求めずとも、会社が提供してくれる場合もあります。企業においても、従業員のリスキリングを支援する制度の整備が進んでいるのです。勤めている企業で、次のようなリスキリングの支援制度があれば、積極的に活用しましょう。
1. 研修プログラムに参加する
企業独自の研修制度です。社員が業務に直結したスキルを学ぶのに最適ですが、業界や会社特有の知識も多くなっています。
2. 資格取得支援を利用する
資格取得を促進するために、会社側が試験費用を負担したり、合格時にインセンティブを提供してくれる制度です。
3. キャリアパス設計の支援を受ける
リスキリングを通じて従業員が新しい役割やポジションを目指せるよう、キャリアパス設計を支援する制度です。会社を通じてキャリアコンサルタントなどに将来のキャリアパスなどの相談ができる制度を設けている会社もあります。
4. 新しいプロジェクトへの参加
従業員が新しいスキルを試す場となるプロジェクトが発足している場合があります。学んだ知識を実務に活かす機会として、自ら志願してみるのもよいでしょう。たとえば、DX推進の社内プロジェクトや他部署への異動を希望するなどが挙げられます。
5. メンター制度を活用する
経験豊富な社員が新しいスキルを学ぶ従業員をサポートする仕組みをメンター制度と言います。メンターを受ける側、メンターをする側、双方の経験値が高まります。導入している会社があれば、参加を検討してみましょう。
リスキリングを成功させるためのポイント
リスキリングは、企業の競争力強化や個人のキャリア成長に欠かせない取り組みです。DXの進展やグローバル市場の変化が加速する中で、新しいスキルを学び直すことは、時代の波に乗るための必須条件といえるでしょう。
しかし、リスキリングを効果的に行うためには、時間だけでなく費用の準備も重要です。資格取得やスキルアップのための講座、教材費用などは大きな投資となることがあります。そのため、事前に必要な費用を見積もり、無理のない範囲で資金を確保することが成功への第一歩です。
リスキリングのためだけに貯蓄をしていくのは難しいかもしれませんが、将来の老後に向けて貯蓄を行い、必要があれば取り崩してリスキリングできるような備えがあると安心です。このような仕組みを作るためにはNISAのつみたて投資枠を活用するのもよいでしょう。
一方で保障を持ちながら貯蓄を行い、必要なときには解約して資金準備ができる生命保険も一つの選択肢になります。自分に合った方法を選び、目標に向けて計画的に進めることが大切です。ですから、どこかでリスキリングすることを想定し、学び直すための資金を用意しておきましょう。
ソナミラではお客さまのライフプランをお聞きして最適な金融商品のご提案をしています。リスキリングに興味がある人は、ぜひソナミラのコンシェルジュにお尋ねください。相談は対面でもオンラインでも何度でも無料です。
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▼参考
退職を考えたきっかけ(年代別)
出典:エン・ジャパン「8,600名に聞いた「退職のきっかけ」調査」
年齢別の金融資産保有額(金融資産を保有していない世帯を含む中央値)
出典:金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査 二人以上世帯調査 令和5年」および「家計の金融行動に関する世論調査 単身世帯調査 令和5年」