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民間の介護保険は必要?公的介護保険との違いやメリット・選び方

目次

生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護保険・介護特約に加入している世帯は16.7%です。約9割の世帯が加入している医療保険や約7割の世帯が加入しているがん保険と比べると、決して多いとはいえません。介護の面で将来に不安を感じているものの、加入すべきか迷っている人もいるのではないでしょうか。

介護保険の必要性は人によって異なります。預貯金だけで介護費用を賄えるか不安な人や、公的介護保険の対象となりにくい65歳未満で介護が必要になった場合に備えたい人は、加入を検討しておいた方が良いでしょう。

この記事では、介護保険の必要性や加入するメリット・デメリットなどを詳しく解説します。介護保険を選ぶときのポイントも解説しますので、介護保険への加入を迷っている人はぜひご覧ください。

【出典】
生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf#page=98

介護保険への加入は必須?

PCを見ながら説明を行う女性

介護保険には公的介護保険と民間の介護保険の2種類があります。40歳以上の人は公的介護保険への加入が必須です。一方、民間の介護保険は任意加入なので、必要かどうかを検討したうえで加入しましょう。

公的介護保険制度の概要

公的介護保険制度とは、高齢者の介護を社会全体で支えるためにつくられた制度です。40歳以上の人が被保険者となり、年齢や所得に応じた介護保険料を納める仕組みになっています。

公的介護保険制度の対象となる人は、65歳以上の第1号被保険者と、40〜64歳の第2号被保険者に分けられます。第1号被保険者は要介護や要支援状態と認定された場合に給付を受けることが可能です。一方、第2号被保険者は末期がんや関節リウマチなど、加齢に起因する16種類の特定疾病を原因として要介護・要支援の認定を受けた場合に給付対象となります。

給付対象となった場合は、1~3割の自己負担で「在宅サービス」「地域密着型サービス」「施設サービス」などの介護サービスを受けられます。

■公的介護保険で受けられるサービスの内容

在宅サービス

・訪問介護

・訪問入浴

・訪問看護

・訪問リハビリ

・福祉用具貸与

地域密着型サービス

・認知症対応型通所介護

・小規模多機能型居宅介護

・夜間対応型訪問介護

・定期巡回・随時対応型訪問介護看護

・地域密着型通所介護

施設サービス

・特別養護老人ホームへの入所

・介護老人保健施設への入所

・介護療養型医療施設への入所

・介護医療院への入所

※要介護度によって、一部利用できないサービスもあります。また、上記以外のサービスを受けられる

公的介護保険の仕組み自体は全国共通ですが、自治体によっては紙おむつの支給や配食サービスなど、独自のサービス(市町村特別給付)を受けられる場合もあります。

【出典】
厚生労働省「介護保険制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf
厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html
厚生労働省「公表されている介護サービスについて」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/publish/

公的介護保険と民間の介護保険の違い

民間の介護保険は、生命保険会社が取り扱う任意加入の商品です。介護で生じる経済的な負担に備えるために加入するケースが多くなっています。
公的介護保険と民間の介護保険には、以下のような違いがあります。

【公的介護保険と民間の介護保険の違い】

公的介護保険と民間の介護保険の違い


民間の介護保険は、各保険会社が提供する商品の中から、自分の希望するプランを選んで契約します。公的介護保険とは違い、保障内容や保険料などは商品によってさまざまです。

また、40歳未満であっても、支払い条件を満たせば給付を受けられる点や、現金給付である点なども大きな違いと言えるでしょう。

【出典】
公益財団法人 生命保険文化センター「公的介護保険への加入はいつから? 保険料はどのように負担する?」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/8808.html
厚生労働省「介護保険制度の概要」
https://www.mhlw.go.jp/content/000801559.pdf

民間の介護保険への加入は必要?

介護保険の案内資料

介護にまつわる各種データを参考にしながら、民間の介護保険の必要性について、考えてみましょう。

介護や支援が必要な人は年々増加傾向にある

介護が必要な人は年々増加傾向にあります。厚生労働省の「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」によると、2021年末時点での要介護(要支援)認定者数は約690万人です。公的介護保険制度がスタートした2000年度の約256万人から、20年で約2.69倍に増加しています。
今まで以上に介護は身近になりつつあるので、介護に対する備えは万全にしておいた方が良いでしょう。

【出典】
厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/21/dl/r03_gaiyou.pdf#page=2

介護や支援が必要な人の割合

以下は年齢階級別に、要介護・要支援認定を受けた人の割合をまとめた表です。

年齢要介護・要支援認定者の割合
40~64歳0.03%
65~69歳2.05%
70〜74歳4.16%
75〜79歳8.28%
80〜84歳18.53%
85〜89歳37.12%
90歳以上64.70%

年齢を重ねるにつれて、介護認定を受ける人の割合は増えていく傾向があり、90歳以上の約6割は要介護や要支援の認定を受けています。また、割合は小さいものの、介護保険に加入する前の40歳未満で要介護状態になる可能性もゼロではありません。
今後も平均寿命は延びると見込まれており、いずれ介護が必要になるリスクは高いと考えられます。

【出典】
厚生労働省「介護給付費等実態統計月報 2023年12月」統計表3 受給者数,要介護(要支援)状態区分・性・年齢階級別
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00450049&tstat=000001123535&cycle=1&year=20230&month=24101212&tclass1=000001123536&tclass2=000001208320&result_back=1&tclass3val=0
総務省「人口推計2023年12月」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&layout=datalist&toukei=00200524&tstat=000000090001&cycle=1&year=20230&month=24101212&tclass1=000001011678&result_back=1&tclass2val=0

民間の介護保険への加入を検討した方が良いケース

とくに民間の介護保険に加入する必要性が高い人の特徴は、以下の通りです。

  • 身近に介護を頼める人がいない
  • 収入や預貯金で自分や家族の介護費用を支払えるか不安
  • 64歳までの間で介護が必要になった場合に備えたい

身近に介護を頼める人がいない場合や、家族に介護の負担をかけたくない人は、必然的に外部の介護サービスを利用することになるので、費用面での備えをしておく必要があるでしょう。

生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、住宅改修や介護ベッドの購入など、介護にかかる一時費用の平均は74万円です。また、介護に要した費用の平均は1か月当たり8.3万円で、介護期間の平均は61.1か月です。

以上から費用を単純計算すると、平均的に約581万円が必要になると言えます。この金額を自身の収入や預貯金の範囲で支払うことが難しい場合は、民間の介護保険に加入しておいたほうが良いでしょう。

また、65歳未満で介護が必要になるケースもゼロではありません。40〜64歳は、特定疾病が原因で要介護・要支援認定を受けた場合を除けば、公的介護保険の対象外になります。40歳未満の場合は、そもそも公的介護保険の対象外です。

65歳未満で介護サービスを受ける場合、全額自己負担となる可能性もあり、経済的な負担が大きくなる恐れがあるので、民間の介護保険への加入を検討したほうが良いでしょう。

【出典】
生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf#page=198
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf#page=201
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf#page=202

民間の介護保険に加入するメリットとデメリット

介護保険の案内資料


民間の介護保険は、介護が必要になったときに発生するさまざまな費用に対して柔軟に備えられるメリットがあります。一方で、全員が加入できるわけではない点や、給付が受けられない可能性があることも理解しておきましょう。

民間の介護保険に加入するメリット

現金支給のため、状況に応じた使い方ができる

公的介護保険は一部の現金給付を除き、一定の自己負担額を支払うことで介護サービスを利用できる「現物給付」です。一方、民間の介護保険は、一時金や年金などの形式で現金が給付されるため、介護生活で発生する費用をカバーできます。

たとえば、公的介護保険適用後の自己負担額の支払いや、介護が必要になって収入が減少した場合の補填、介護施設の入居費用などに幅広く活用できるでしょう。

ニーズに合わせて保障内容を選べる

給付内容が一律である公的介護保険に対して、民間の介護保険では保険会社や商品によって保障内容が大きく異なります。軽度の介護状態から認知症による要介護状態まで、保障される範囲は保険商品によってさまざまです。民間の介護保険には、異なる特色をもつ商品の中から、自分のニーズに合わせて保険を選べるというメリットがあります。

公的介護保険の適用外となるサービス費用の補填ができる

公的介護保険制度を利用して居宅サービスを受ける場合、以下のように介護度合いに応じて利用できるサービスの限度額が決まっています。

介護度支給限度額
要支援150,320円
要支援2105,310円
要介護1167,650円
要介護2197,050円
要介護3270,480円
要介護4309,380円
要介護5362,170円

この限度額を超えてサービスを受ける場合は、全額を自己負担しなければなりません。
また、施設で介護サービスを受ける場合は、施設サービス費(自己負担額は1〜3割)のほかに居住費や食費、日常生活費などを支払う必要があります。

さらに、移動・送迎費用や見守りサービス、家事代行サービス、配食サービス、お泊まりデイサービスなどは、基本的に公的介護保険制度の給付対象外となるため、全額自己負担が必要です。

つまり、手厚い介護サービスを受けたいと考える場合は、公的介護保険制度の枠内では賄いきれない費用も多く発生する可能性があるということです。民間の介護保険に加入しておけば、現金で給付を受けられるため、これらの費用をカバーしやすくなるでしょう。

【出典】
厚生労働省「サービスにかかる利用料」
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html

民間の介護保険に加入するデメリット

公的な介護保険とは異なり、加入には健康状態や年齢などの条件を満たす必要がある

民間の介護保険に加入する際は、保険会社への告知が必要です。健康状態によっては、審査に通過できず加入できない場合もあります。介護が必要な状態になってからでは加入できないケースがほとんどですので、早めに検討しておきましょう。

給付条件に該当しない場合は給付が受けられない

民間の介護保険は、保険会社によって給付条件が異なります。たとえば「要介護3以上の認定を受けること」が給付条件であれば、要介護2の認定を受けていたとしても、給付金は支払われません。
つまり、公的介護保険と異なり、介護が必要な状態になっても必ずしも保障対象になるとは限らないということを意味します。商品によって給付条件は細かく異なるため、必ず加入前に確認しておきましょう。

保険料の支払いが家計の負担となる場合もある

当然ではありますが、民間の介護保険に加入する場合は、保険料の支払いが必要になります。公的介護保険の保険料に加えて支払うことになるため、とくに子育て中や年金生活中は家計への負担が重くなる可能性があるでしょう。
保険料が未納になると、契約が解除され、いざというときに保障を受けられなくなるリスクがあります。家計に無理のない保険料で加入することが大切です。

民間の介護保険を選ぶときのポイント

介護保険要介護認定申請書のイメージ

自分に合った民間の介護保険を選ぶために、チェックしておきたいポイントを解説します。

保険のタイプ

介護保険には「貯蓄タイプ」と「掛け捨てタイプ」の2種類があります。

貯蓄タイプの介護保険は、所定の介護状態になったときだけではなく、死亡・高度障害状態になったときには死亡保険金、解約時には解約返戻金が受け取れるタイプの保険です。要介護状態にならなかったとしても、万が一のことが起きた場合や、介護以外で大きなお金が必要になった場合にも備えられるメリットがあります。一方で、掛け捨て型と比べると、貯蓄部分があるため、保険料は割高になる傾向があります。

掛け捨てタイプの介護保険は、貯蓄型よりも割安な保険料で介護時に手厚く備えられる点がメリットです。ただし、商品ごとに決められている支払い条件を満たせなければ、給付金を受け取れず、保険料が掛け捨てになってしまう点は理解が必要です。

保険金の受け取り方

介護保険金の受け取り方には、年金タイプと一時金タイプの2種類があります。

年金タイプは、1年に1回もしくは毎月、年金形式で保険金を受け取れるタイプです。継続的に発生する介護サービスの自己負担額のような費用に備えられるメリットがあります。

一時金タイプは、支払い条件を満たした場合に、まとまった一時金が受け取れるタイプです。自宅のリフォーム費用や介護施設への入居費用など、まとまったお金が必要な場面で役立ちます。ただし、介護が長引いた場合には保険金が不足する可能性もある点に注意が必要です。

なお、介護保険には年金と一時金の両方を受け取れる「併用タイプ」もあります。

支払いの条件

介護保険の保険金支払い条件には、大きく以下の2種類があります。

  • 公的介護保険連動タイプ:公的介護保険が定める要介護認定の基準に準じて保険金が受け取れる
  • 独自基準タイプ:保険会社が独自に定める基準(寝たきり状態が一定期間継続するなど)を満たせば保険金が受け取れるタイプ

公的介護保険連動タイプは、支払い基準が明確でわかりやすさがある反面、特定疾病に該当する場合にしか介護認定を受けられない第2号被保険者や、そもそも公的介護保険の対象外である40歳未満の人は、保険金を受け取れない可能性があります。

独自基準タイプであれば、第2号被保険者、40歳未満であっても保険金を受け取れるケースがあるでしょう。ただし、保険会社によっては条件が細かく設定されており、支払い条件が厳しくなっている場合もあります。

支払い基準によって、保険金の受け取りやすさや保険料は大きく変わる可能性があるため、加入前にしっかりチェックしておきましょう。

保障が受けられる期間

介護保険には、一定期間のみ保障される「定期タイプ」と、一生涯保障が続く「終身タイプ」があります。

定期タイプは、「80歳まで」「20年間」のように、保障期間があらかじめ決められている分、割安な保険料で保障を備えられる点がメリットです。しかし、保障期間を過ぎてから介護が必要になっても一切保障を受けられません。
前述したように、高齢になるほど、介護のリスクは高まります。定期タイプと比べると保険料は高くなる傾向はありますが、保障が途中で途切れない終身タイプを選んでおいた方が安心感を得られるでしょう。

特約の有無

介護保険の中には特約を付加することで、要介護状態になった際に手厚く備えられる商品もあります。
認知症特約や保険料払込免除特約は、介護保険に付加できる特約の代表例です。認知症特約は、認知症と診断された際に一時金が受け取れます。保険料払込免除特約は、要介護度などの条件を満たした場合に、保険料の払込が不要となる特約です。適用されると、保険料の負担はなくなりますが、保障は継続します。

介護費用の支払いが不安な人は介護保険が必要

高齢化に伴い、介護が必要となる人の数は増加しています。公的介護保険制度を利用すれば1〜3割の負担で介護サービスを利用できますが、ある程度の自己負担は必要です。公的介護保険制度だけではカバーしきれない費用もあるので、これらの費用を自己資金だけで捻出できるか不安な人は民間の介護保険に加入しておくと良いでしょう。

ただし、民間の介護保険は、保険会社や商品によって加入条件や保障内容が異なります。自分に合った介護保険を選びたい方は、ソナミラの「無料相談」をご活用ください。
ソナミラは、複数の保険会社の商品を取り扱う保険代理店です。コンシェルジュが豊富な商品からあなたにぴったりの介護保険を提案します。希望に応じて店舗やオンラインでの相談も可能なため、まずはお気軽にご相談ください。

  • 著者
    荒木 和音さん

    保険代理店にて、個人を対象とした家計相談やライフプランニング、企業向けのリスクコンサルティングを経験。現在は金融分野専門ライターとして活動中。大手金融機関や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。

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    「健康で豊かなミライにソナえる」をコンセプトに、マネー・ライフデザインをテーマとしたコンテンツを発信しています。 あなたの可能性を広げるため、読んでためになったと思える記事の制作を心掛けています。

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ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者  関東財務局長(金仲)第 1010号