介護費用の平均は?在宅と施設の平均費用と介護費用を抑える方法
内閣府の「令和5年版高齢社会白書(全体版)」によると、日本は2005年に先進諸国の中で最も高齢者の割合が多い国となり、今後も高水準で高齢化が進むと予想されています。実際に2000年から始まった公的介護保険制度の介護認定者数は右肩上がりになっています。
高齢化とともに今後も介護が必要な人口の割合が高まることが予想され、自分や家族が要介護状態になったときの不安が頭によぎるのではないでしょうか。どのくらいの介護費用がかかるのか、在宅介護と施設介護の違い、要介護状態とはどのような状態かといったことが気になる方も多いと思います。
人によって体の状態や、どのような介護を受けたいのかという要望も変わるため、一概に「介護にかかる総額は○○円」とは言えません。本記事では、介護費用の平均や在宅と施設の介護による費用の違い、介護費用を抑える方法をお伝えします。
【出典】
内閣府「令和5年版高齢社会白書(全体版) 高齢化の状況第一章(第一節)2高齢化の国際的動向 (2) 我が国は世界で最も高い高齢化率である」
https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2023/html/zenbun/index.html
厚生労働省「令和3年度 介護保険事業状況報告(年報) 概況(PDF)P7 図1 認定者数の推移(年度末現在)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/21/dl/r03_gaiyou.pdf
介護費用の平均はどのくらい?
介護にはさまざまなお金がかかりますが、介護期間や体の状態、介護を受ける場所などによって必要になるケアや金額が違います。ここでは、介護にかかる平均的な費用の目安をお伝えします。
1カ月の介護費用
生命保険文化センターの「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に必要な費用の平均金額は月額8万3,000円でした。
しかし全体の分布を見ると月額15万円以上(16.3%)が最も多く、次いで1万~2万5,000円未満(15.3%)、2万5,000~5万円未満(12.3%)、5万〜7万5,000円未満(11.5%)となっています。
また、要介護認定が上がるほど介護費用も高額になる傾向があります。要介護度別の介護にかかる平均月額費用は、「要介護1」の5万3,000円に対し、「要介護5」では10万6,000円と2倍の費用がかかる結果となっています。
介護費用の総額と目安
では、介護はどのくらいの期間続くのでしょうか。生命保険文化センターが2021年に公表した調査によると、平均的な介護期間は5年1カ月(約61カ月)という結果が出ています。介護期間の分布を見ると、4~10年未満(31.5%)が最も多く、次いで10年以上(17.6%)、3~4年未満(15.1%)、2~3年未満(12.3%)となっています。
介護に必要な費用や期間は介護度やどのようなケアが必要かによって変わってきますが、介護費用の平均月額と平均期間をもとに試算すると、介護に必要な総額の目安は平均506万3,000円と計算できます。
≪介護に必要な総額の目安(平均的な介護費用)≫
平均月額費用×平均介護期間=8万3,000円×5年1カ月(約61カ月)=506万3,000円
老後の資金には、日常生活費の他に介護費用として平均約500万円が必要となる可能性があると考えておきましょう。
なお、公的医療保険制度には、同じ月に支払った医療費が上限額(年齢や所得に応じて決定)を超えると、その超えた金額が支給される「高額療養費制度」があります。さらに公的介護保険制度を利用した場合にも、同じ月に支払った介護サービス費の利用者負担合計額が自己負担限度額(個人の所得や世帯の所得に応じて決定)を超えた場合、申請することにより限度額を超えた分が払い戻される「高額介護サービス費※」といった制度もあります。制度を知り、うまく活用することで介護費用を抑えることもできます。
※支給限度額を超過した場合、超過分は全額自己負担となります。
【出典】
生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」「介護費用」
https://www.jili.or.jp/files/research/zenkokujittai/pdf/r3/2021honshi_all.pdf
在宅介護と施設介護の費用
介護にかかる総額費用の目安をお伝えしましたが、自宅で介護を受けるのか施設に入って介護を受けるのか、介護を受ける「場所」によっても介護費用は変わります。生命保険文化センターの調査によると、介護を受ける場所の割合は在宅介護が56.8%、施設が41.7%という結果になっています。では、在宅介護と施設介護の費用はそれぞれどのくらいになるのでしょうか。
在宅介護でかかる費用
施設などに入居せず、自宅や家族、親戚の家で介護を受けることを「在宅介護」といいます。在宅介護の費用は、一時的なものと毎月かかるものを合わせて計算します。
たとえば、介護を受けやすいように自宅を改修する、介護ベッドや車いすをレンタルせず購入する費用は一時的な費用です。デイサービスやショートステイ、訪問介護などの公的な介護保険制度を利用してサービスを受けるための費用、福祉用具(介護ベッドや車いす・歩行器など)のレンタル費用、食費や日用品(おむつ代・清拭シート・マスク・手袋など)などは毎月の費用と考えます。そこで次に、在宅介護にかかる平均的な自己負担額を見ていきます。
一時的な費用
在宅介護をする場合の一時的費用は平均74万円となっています。
一時的な費用とは、介護目的の自宅の改修や、介護用ベッドや車いすなどを購入する初期費用です。
要介護度別の一時的な費用(平均額)は要介護1が39万円、要介護5が107万円となっており、要介護度が高くなるほど一時的な介護費用が高くなる傾向があります。
1カ月の費用
在宅介護の場合、毎月かかる介護費用は平均4万8,000円です。
ここでいう1カ月の費用には、居宅サービスなどの公的な介護保険制度対象のサービス利用料、福祉用具(介護ベッドや車いす・歩行器など)のレンタル費用、日用品、食費や光熱費などの費用が含まれます。
在宅介護のメリットとしては、住み慣れた自宅で家族と一緒に暮らせる、介護の費用負担を抑えられるといった点があります。一方、デメリットとしては少数の人に介護の負担がかかる、介護離職のリスクが高まる、転倒したときなどの対応が遅れる場合がある、といった点が考えられます。
介護施設の種類と施設介護でかかる費用
自宅を離れて介護施設に入所して介護を受けることを「施設介護」といいます。介護施設には、民間の企業が運営する施設と地方自治体や社会福祉法人・医療法人などの公的な団体が運営する公的施設があります。
民間施設には、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、介護付き有料老人ホーム、住宅型有料老人ホーム、グループホームなどがあります。そして地方自治体や社会福祉法人・医療法人などが運営する公的施設には特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護療養型医療施設、ケアハウスがあります。
入居一時金
入居一時金とは民間の介護施設に入居する際に支払うお金で、前払い家賃にあたります。施設によって金額が異なり、入居一時金が不要の施設もあります。なお、公的施設は入居一時金が不要です。
1カ月の費用
生命保険文化センターによると、介護施設に入居して介護を受ける場合、毎月かかる介護費用は平均12万2,000円です。
1カ月の費用には、家賃や管理費、公的介護保険制度対象・対象外のサービス利用料、食費や日用品費などの生活費、医療費などが含まれます。
施設介護のメリットは、専門家による介護が24時間受けられることです。また、在宅介護では労力が必要な食事や入浴、排せつのケアなども任せることができます。しかし、費用が高額になりやすい、施設の環境が合わない場合があるのがデメリットといえます。
【出典】
(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」「介護費用」
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html
ベネッセスタイルケア「【介護の基礎知識】在宅介護サービスの種類・特徴|サービス利用開始までの流れを解説 1.在宅介護とは「自宅で介護を受ける」ということ」
https://kaigo.benesse-style-care.co.jp/article/knowledge/beginner/zaitaku
日刊 介護新聞「施設介護サービスとは?」
https://e-nursingcare.com/guide/insurance/insurance-servicetype/institutional-care-service/
ケアスル介護「入居一時金の必要性は?仕組みと無理のない介護施設選びを解説 入居一時金の有無と介護施設の費用の内訳」
https://caresul-kaigo.jp/column/articles/5421/#heading-0
介護費用を抑える方法
在宅介護、施設介護ともに差はあるものの、月々の負担は数万円から数十万円程度発生します。ここでは、介護費用を抑える3つの方法をお伝えします。
介護保険制度を利用する
「介護保険制度」とは、要支援・要介護認定を受けた40歳以上の人が、介護給付・予防給付などのサービスを1~3割の自己負担で受けることができる公的な制度です。所定の条件を満たす40歳以上の人は介護保険料を徴収されます。
要支援・要介護の認定を受けるには、自治体(市区町村)の窓口で要介護認定の申請を行います。所定の審査を受け、要支援・要介護の必要があると認定されると介護保険サービスを受けることができます。
なお、介護保険制度は「サービスを1~3割の自己負担で受けることができる」制度であり、お金が給付される制度ではありません。自己負担割合や1カ月当たりの自己負担限度額は、要介護度や本人・世帯の所得・年収などの条件によって変わります。
【出典】
厚生労働省 サービスにかかる利用料
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/fee.html
福岡県ホームページ「介護保険制度とは」
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/kaigohokenseido.html
厚生労働省「第110回社会保障審議会介護保険部会の資料について 参考資料1 給付と負担について(参考資料)P34介護保険制度における利用者負担割合(判定基準)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_36963.html
ケアマネジャーに相談する
介護支援専門員(ケアマネジャー)は、要支援・要介護者(利用者)のケアプランを作成し、自治体やサービス事業者、施設などと連絡調整を行います。ケアプランとは、介護サービスの利用計画書です。利用者が適切なサービスを受けるための計画書で、在宅か施設か、要支援・要介護の度合い、予算などを踏まえて作成されます。
また、ケアマネジャーは利用者やその家族が快適で安心な介護生活を送るために、日常生活の悩み事や金銭面の相談を受けるなどのサポートも行います。ケアマネジャーの力量次第で介護生活が変わると言われるほど重要な役割を果たします。
介護費用を抑えたい場合は、負担できる上限金額をケアマネジャーに伝え、経済状況に合わせたケアプランを計画してもらいましょう。
【出典】
厚生労働省「介護職員・介護支援専門員 2.介護支援専門員 概要」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000054119.html
民間の介護保険を検討する
公的な介護保険制度で介護費用の負担が軽減されるとはいえ、一定程度の自己負担は発生します。また、受けられるサービスも決まっています。サービス対象外で全額自己負担の介護を受けたい場合は、将来受給できる公的年金や貯蓄、家族の収入だけでは介護費用を賄うことが難しいケースもあります。
もし自分や家族が要介護状態となったとき、家計の負担を減らし、快適な介護生活を送るためには民間の介護保険への加入も検討が必要です。保険は時代に合わせてさまざまな商品が販売されています。そのときの介護制度に合った商品を選びましょう。
将来の介護費用準備は早めに計画的に
在宅介護と施設介護の違い、そしてそれぞれの介護費用の平均額などをお伝えしてきました。介護費用について検討する際に大切なことは、「自分や家族がどのような介護を受けたいか、できるのか」「人生の締めくくりをどう過ごしたいのか」などを、具体的に思い浮かべることです。
お伝えした通り、介護は実際にいくらかかるのか、どのくらいの期間続くのかは介護が終わってみないとわかりません。介護をする人、される人(介護者・要介護者)のそれぞれが希望に近い介護生活を送るためには、早めに事前計画を立て、準備をしていく必要があります。
また、公的な介護保険制度は大変複雑です。制度について正しい知識とアドバイスが受けられる専門家への相談を活用するのが良いでしょう。
ソナミラでは、保険に関する無料相談を行っています。介護保険に不安を抱えている方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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