介護保険制度のしくみとは?わかりやすくサービス内容を解説します!
誰もがお世話になる可能性がある介護。日本には、介護が必要な人をサポートする公的な制度、「介護保険制度」があります。とはいえ、制度の詳細はよく知らない、という人もいらっしゃるのではないでしょうか。
いざ自分や家族に介護が必要な状態になった時、「具体的にどのような支援を受けられるか不安」という人も少なくないでしょう。
そこでこの記事では、介護保険制度について解説します。制度のしくみやサービス内容、利用方法などについて、わかりやすく解説していきます。ぜひ参考にしてください。
介護保険の基礎知識
両親や配偶者など身近な家族が病気や事故等で要介護状態になると、介護の負担が大きくなります。超高齢化した日本において、高齢者が高齢者を支える「老老介護」も大きな問題の一つです。介護疲れにより、介護者が鬱状態になってしまうケースも問題視されています。
このような背景から、厚生労働省は2000年より公的な保険制度である「介護保険制度」を運用しています。まず、介護保険制度の基本を確認していきます。
介護保険制度とは何か?
介護保険制度とは、介護にかかる費用の一部をサポートする公的な保険制度のことです。
たとえば要介護認定を受けた人が介護サービスを利用した場合、支払う自己負担額が1~3割で済みます。
現行制度では、自己負担額の割合は利用者の所得に応じて決められています。大半の人が1割負担ですが、一定の基準より所得が高い人は2~3割負担となります。
介護保険の加入者は、
- 65歳以上:第一号被保険者
- 40歳から64歳まで:第二号被保険者
に分けられます。
第二号被保険者の場合、16の特定疾病によって要介護(または要支援)状態になったケースに限り、介護保険制度を利用できます。
介護保険制度設立の経緯と目的
日本は、他の国々と比べても高齢化率の高い国です。介護保険制度は、高齢者が安心して生活できるしくみとして2000年にスタートしました。
そこから3年おきに制度の見直しを図りながら、最適な介護サービスが行き届くよう設計されています。
制度の策定にあたっては、理念として次の3つの考え方が提示されています。
自立支援
「高齢者ができるだけ自分の力で生活できる状態」を目指して必要なサポートを行う
利用者本位(利用者主体)
利用者自身の意思・選択によって総合的にサービスを利用できる
社会保険方式
被保険者が支払う保険料を財源とし、条件を満たした人に給付を行う
介護保険制度の利用方法
原則として、65歳の誕生月を迎えると市区町村から「介護保険被保険者証」が交付されます。ただし、そのままでは介護保険制度によるサービスを受けることはできません。
介護認定を受けるまでの流れ
介護保険サービスを利用するためには、要介護または要支援認定を受ける必要があります。ここでは、要介護認定を受けるまでの流れを紹介します。
❶ 介護認定の申請を出す
まずは、住んでいる市区町村の役所の介護保険担当窓口で介護認定を申請します。第一号被保険者は介護保険、第二号被保険者であれば医療保険の「被保険者証」を提示する必要があります。
❷ 認定調査
介護認定の申請後は、役所窓口で認定調査員による訪問日程を調整します。
介護認定にあたっては、役所から任命された認定調査員が直接自宅や病院を訪問し、介護が必要な本人の日常生活の状況を聞き取り調査します。身体機能や認知機能など、基本調査は74項目にも及びます。
また、市区町村が被保険者の主治医に、意見書作成を依頼します。
❸ 結果通知
認定調査の結果と主治医の意見書をもとに、要介護度の認定が行われます。
- 非該当
- 要支援1~2
- 要介護1~5
のいずれかに分類され、1か月ほどで結果が通知されます。この認定結果は、受けられるサービスの判断基準となります。
介護認定が出た後の流れ
要介護認定が出た後のサービスを受けるまでの流れを紹介します。
❹ ケアマネジャーを探す
まずはケアマネジャーを探します。介護認定を受けた場合、市区町村から地域で活動しているケアマネジャーを紹介してもらえます。
❺ ケアプランの決定
ケアマネジャーは要介護者本人や家族の希望を聞きながら、今後の介護計画書(ケアプラン)を作成します。日常生活で困っていること等を、ケアマネジャーに相談できます。
どのようなケアプランが最適かは、介護を受ける本人や家族の考え方、価値観等によって異なります。しっかりと相談にのってくれる人に依頼することがおすすめです。
作成したケアプランに基づく介護サービスを受けた場合、介護保険制度によって窓口での自己負担額を軽減できます。
介護サービスの種類と内容
介護サービスといっても、その内容は様々です。
大きく分けると、
- 在宅介護サービス
- 施設介護サービス
の2種類があります。
各サービスについて見ていきましょう。
在宅介護サービスの内容
自宅で介護を受けたいという人向けのサービスが「在宅介護サービス」です。在宅介護で受けられる主なサービスを紹介します。
訪問介護
ホームヘルパー等による
- 身体介護(食事・排泄・入浴等)
- 生活援助(掃除・洗濯・調理等)
- 通院等乗降介助
といったサービスを受けられます。
訪問看護
看護師等が病状安定期の利用者の自宅を訪問し、療養上の世話や診療補助を行うサービスです。主治医の指示に基づくサービスが提供されます。
訪問入浴
浴槽を積んだ入浴車で利用者の自宅を訪問し、入浴の介護を行うサービスです。
訪問リハビリ
理学療法士・作業療法士・言語聴覚士が利用者の自宅に訪問し、必要なリハビリを行います。
デイサービス(通所介護)
利用者が自宅で自立した日常生活を送れるよう、施設等に通って
- 日常生活上の支援(食事・入浴等)
- 機能訓練
- レクリエーション
といったサービスを受けられます。
デイケア(通所リハビリ)
病状安定の利用者が医療機関や介護老人保健施設に通い、
- 日常生活上の支援(食事・入浴等)
- リハビリテーション
といったサービスを受けられます。
ショートステイ(短期入所生活介護・短期入所療養介護)
普段は自宅で生活する利用者が、
- 介護老人福祉施設
- 介護老人保健施設
- 病院
- 診療所
に短期的に入所するサービスです。「家族の介護負担の軽減」という目的でも利用できます。
施設介護サービスの内容
自宅ではなく、施設で介護サービスを受けたい人向けの「施設介護サービス」もあります。施設介護サービスでは、下記のような施設に入居したまま介護サービスを受けられます。
- 特別養護老人ホーム
- 介護老人保健施設
- 介護療養型医療施設
- 介護医療院
民間が運営する施設でも、「特定施設入居者生活介護」の指定を受けていれば、要介護認定の段階別に毎月定額で介護保険サービスを利用することが可能です。
介護用品と福祉用具のレンタル
要介護状態になった場合、現状の住環境のままでは生活しにくいケースも少なくありません。そのような時は、必要な介護用品や福祉用具のレンタル・購入費用を補助するサービスも受けられます。
- 介護ベッド・車イスなどのレンタル
- 入浴・排せつ関係の福祉用具の購入費の助成(年間10万円が上限/1~3割の自己負担額で購入できる)
介護保険の費用
介護保険制度は、公費(税金)や介護保険料によって支えられています。ここでは、介護保険制度の費用面について見ていきましょう。
介護保険料の仕組み
介護保険の被保険者である40歳以上の人は、介護保険料を支払います。40歳を迎えると介護保険への加入が義務付けられ、保険料を支払う必要があります。
40歳から64歳までの第二号被保険者は、健康保険料と一緒に介護保険料が徴収されます。協会けんぽ(全国健康保険協会)、共済組合等に加入している場合は、給与に介護保険料率を掛けて保険料が算出され、労使折半で支払っています。
介護保険料率は、加入している健康保険によって異なります。なお、被保険者の扶養に入っている配偶者は、保険料を納める必要はありません。
65歳以上の第一号被保険者の場合、原則として年金からの天引きによって市区町村が保険料を徴収します。
一方、被保険者は介護保険制度によって、所得に応じた1~3割の自己負担で介護サービスを受けることができます。
自己負担の割合と計算方法
公的な介護保険サービスを受けられる金額には、上限があります。
上限額は、要介護度別に異なります。たとえば要介護2の場合、月に197,050円までのサービスを一定の負担割合で受けることが可能です。負担割合は、所得に応じて1~3割と決められています。
もちろん、上限を超えてサービスを利用することも可能です。ただしその場合、上限を超えた分は全額自己負担となります。
今後の介護保険制度
ここまでご紹介したとおり、介護保険制度は介護を必要とする人や家族にとって、非常にありがたい社会保障といえます。
ただし、「公的な制度があるから絶対安心」とは言い切れない側面もあります。介護保険制度の今後には、「2025年問題」「2040年問題」と呼ばれる懸念事項が横たわっているためです。
それぞれの問題について、詳しく見ていきましょう。
2025年問題
2025年は、団塊世代(1947~49年生まれ)が75歳を超える年です。
人口のボリューム層である団塊世代が後期高齢者となることで、国民の5人に1人が75歳以上になります。
年齢と要介護認定率との関係をグラフで表すと、高齢になるほど要介護認定率が上がっていきます。特に75歳を超えたあたりからは、認定率が急増していることが分かります。
このように後期高齢者になると、要介護状態になる人が増加します。団塊世代が後期高齢者となり、日本の人口のボリューム層が75歳を超える超高齢社会では、介護保険サービスの財源がひっ迫するのではないかと不安視されています。
2040年問題
2040年には、団塊世代の子ども世代にあたる団塊ジュニア世代(1971~1974年生まれ)が65歳以上になります。
現役世代の人口のさらなる減少が予想され、介護サービスの維持が一層難しくなることが懸念されています。
民間の介護保険に加入する必要はあるの?
高齢化が進む日本では、将来的に公的な介護保険制度による十分なサービスを維持できなくなる恐れがあります。必要な備えを自分で準備しなければならなくなる可能性も考えられるでしょう。そこで、民間の介護保険に加入することは、有効な対策の一つとなります。
また公的な介護保険制度の場合、サービスを受けるためには一定の自己負担が必要となります。一方で、民間の介護保険は、介護給付金が現金で支給される仕組みとなっています。保険商品によっては、年金として受給することもできます。
さらに民間の介護保険には、公的介護保険制度の認定基準とは異なる独自の認定基準を設けている保険会社もあります。
公的な介護保険サービスではカバーしきれない部分を補填できる可能性もあります。自分や家族の将来を考え、民間の介護保険への計画的な加入を検討しておくと安心です。
人生100年時代に備えよう
今回は、介護保険制度について解説しました。
40歳以上の人が被保険者となる介護保険制度では、要支援または要介護認定を受けた場合、1~3割の自己負担で介護サービスを受けられます。
ただし、公費(税金)や介護保険料によって支えられている介護保険制度には、「2025年問題」「2040年問題」と呼ばれる懸念事項もあります。自分や家族に介護が必要になった際に、十分なサービスを受けられるよう、民間の介護保険への加入を検討することもおすすめです。
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▼参考
年齢階級別の要介護認定率
厚生労働省「令和4年版厚生労働白書-社会保障を支える人材の確保-(本文)」
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号