認知症対策は予防あるのみ!リスク低減につながる予防法や脳トレ術
認知症は一度発症すると、現時点では根本的な治療法がありません。
したがって、唯一の対策は予防をすることしかないのです。では、認知症のリスク低減につながる予防法や脳トレにはどのようなものがあるのでしょうか?
今回は、認知症介助士であり、放送作家でもある新田英生氏に3回シリーズで執筆いただいた介護に関する記事の第3回目です。
「認知症にならない為にはどうすればよいのか?」
ぜひ最後までお読みください。
はじめに
「人らしく過ごす」
当たり前と思っていた日常を奪い、家族にも影響が及ぶ認知症。
2023年12月20日、日本初の認知症治療薬レカネマブが発売されニュースになりました。しかし、発売元のエーザイによる新薬の説明は“進行を抑制し、認知機能と日常生活機能の低下を遅らせる”とあります。あくまで進行を遅くするもので、根本から治療できるものではないのです。
そう、認知症には、現時点で根本的な治療法はなく、認知症にならない為には、予防が最強の手段となっているのです。
「○○をしている人は認知症リスクが1/8」というように、正しい知識があれば認知症リスクを大幅に低減することが期待できます。
そして、認知症を発症させる有害物質は、発症する20~30年前から脳内に溜まり始めるという事実があります。
認知症は老人の病という概念を捨て、若いうちから予防をすることで、より認知症リスクを減らすことが出来るのです。
今回は、既に認知症の症状が現れている人は進行を遅らせ、まだ症状が現れていない人は発症を防ぐ効果が期待出来る認知症予防法を紹介します。
「人らしく過ごす」当たり前の暮らしを守る為に役立てていただければと思います。
認知症の元を出さない為に
認知症の元とは?
カラダ全体の司令塔であり、生きる上で大切な殆どのことを担っている脳。
その脳の記憶の連携が機能せず、善悪の判断や身体の動かし方まで機能しなくなり、人間らしい暮らしを奪ってしまうのが認知症です。
その認知症はなぜ発症してしまうのでしょうか?
アルツハイマー型認知症を引き起こす最大の要因が、アミロイドβタンパクです。
この物質が溜まると脳で記憶の中継地点となっている神経を破壊し、当たり前にできていたことが出来なくなるのです。
そう、このアミロイドβタンパクが増えすぎないようにすることで、健常者は認知症を予防し、既に発症している人も進行を遅くする効果が期待できるのです。
では、どうすればアミロイドβタンパクの発生を抑えられるのでしょうか?
ポイントは、脳の血管の老化を防ぎ、血流を高めることです。
アミロイドβタンパクは、本来、脳に毒物が侵入するなど脳に悪影響が出そうになる時に守ってくれる物質です。
しかし、栄養が不足する、炎症が起きるなど脳に赤信号が点滅すると、防衛する為に増殖します。これが過剰に生産されすぎると、正常な脳細胞まで攻撃してしまうのです。
この時、脳の危機情報の指標となっているのが、脳へ送られる血液の状態です。
血液が不健康な状態だったり、血管が細く血液を十分に届けられないことでアミロイドβタンパクが溜まると考えられています。
では、脳の血管を若く保ち、健康な血液にするには、どうすればいいのでしょうか?
その方法をご紹介します。
認知症を予防する食生活
血液や血管の健康状態を大きく左右するのが、食生活です。
肥満や高血糖を防ぐ為には次のことに気を付けましょう。
- 食べすぎ、嗜好飲料やアルコールの飲み過ぎを控える
- 1日3食を規則正しく、間食はしない
- 食物繊維が豊富な野菜や海藻類を摂る
これらは一般的に推奨されている食生活ですが、より効果的にする為に食事のタイミングと食事の内容にも気をつけたいものです。
朝食
タンパク質を含む食品を意識して摂りましょう。
睡眠中も私たちの身体は動き続けています。しかし、睡眠中は身体を作り、動かす源であるアミノ酸が血中で不足してしまいます。
すると私たちの身体は、心臓や内臓をはじめ様々な機能を正常に働かせる為に、筋肉のタンパク質を分解してアミノ酸を作り、補っています。
つまり朝起きた時の筋肉は、タンパク質不足で干からびた状態なのです。
もし、朝食がパン1枚とコーヒーであれば、干からびた状態のまま活動することになり、さらに筋肉のタンパク質が減っていくことになります。
朝、20グラムを目安に、卵や乳製品などを摂取することで、健康な血液を脳に送ることが出来、筋肉の衰えも防ぐことができます。
昼食
1日の活動の中間点なので、この時間もタンパク質の摂取を意識しましょう。
昼食では、肉や魚からタンパク質を摂取することで、食事の満足度も高められます。また、揚げ物などは夕食時に食べると睡眠前に消化しにくいので、食べるなら昼食時がおすすめです。
夕食
夕食後は大きく消費することがないので、腹8分目を意識しましょう。
また、睡眠中のタンパク質不足を補えるよう、夕食でもタンパク質を摂り入れたいですね。
認知症を予防する生活習慣
認知症リスクが1/4になる生活習慣
認知症を発症した人としていない人を調査した結果、発症率が4倍違う生活習慣がありました。
それは、定期的に行う適度な運動です。
毎日の散歩など適度な運動をしている人は、全く運動しない人と比べて認知症になるリスクが1/4だったのです。
適度な運動のメリット
- 血流の大きなポンプとなっている脚を動かす為、血流が良くなる
- 食事で摂取したものを消費する為、脂肪などを減らし、健康な血液作りを助ける
- しっかり睡眠がとれる
人間の身体は、起きている間に働き老廃物が溜まりますが、寝ている間に、脳を始め身体の各所をクリーニングするように有害物質を取り除いてくれています。
アミロイドβタンパクも睡眠中にクリーニングされる為、質の良い睡眠は重要なのです。質の良い睡眠をとる為にも適度な運動は効果的です。
認知症リスクが1/8になる生活習慣
運動よりも認知症の発症に大きな影響を及ぼすと考えられる生活習慣とは?
正解は、社会参加。
分かりやすく言うと、家から出て、第三者と楽しく関わることです。
なぜ社会参加がそんな影響を及ぼすのか?その理由は、以下のように推測されています。
新しい快体験が脳を活性化させる。
「こんな美味しいお寿司、初めて食べた!」そんな心を揺さぶるほどの体験は、たった1度きりでも、ずっと昔のことでも深く脳裏に刻まれ、いつでも新鮮な記憶として蘇るのではないでしょうか。
一方、学校の試験の為に仕方なく一夜漬けで覚えた英単語などは、すぐに忘れてしまうでしょう。
このように“新しさ”と“快”が脳の記憶回路を活性化させるのです。
たとえ、夫婦共に健在だったとしても、ずっと家にいては、会話も行動も同じようなことの繰り返しとなり、脳の記憶回路は衰退していきます。
一方、家の外に出れば、近所に新しいお店が出来た!といった楽しみ、また家の外に定期的に会う人がいれば会話も新鮮で、一緒に出かけるなど“新しい快”の機会が増えます。
若いうちから仕事以外に、住んでいる街でもコミュニティに参加して、友人や知人を作っておきたいものです。
認知症を予防する脳トレ
認知症予防の脳トレの重要ポイントは“快”。
脳トレには、超難問の謎を解くという楽しみ方もありますが、認知症予防で大切なのは、「出来る」「出来ない」ではなく「楽しい」ことです。
人気クイズ番組『マジカル頭脳パワー!』で“マジカルバナナ”という連想ゲーム
(バナナと言ったら黄色♪ 黄色と言ったらレモン♬ レモンと言ったら酸っぱい♪)
が大流行しましたが、このように年齢を問わず誰でも楽しめる脳トレが理想的です。
年をとると身体の衰えをはじめ出来なくなることが増え、自分への自信が失われていきます。そんな中、脳トレが難しくて出来ないと、自信を喪失してしまいます。そうすると、精神的にストレスを抱え、認知症には逆効果になってしまうのです。
社会参加した場所で、仲間と楽しい脳トレが出来れば、最高の認知症予防になるでしょう。
ここまで、3回に渡って知っておきたい認知症の知識を紹介してきました。
親御さんも、そして将来の自分も「人間らしい暮らし」を失わない為に役立てて貰えば幸いです。
▼参考
レカネマブの解説
「レケンビ®点滴静注」(一般名:レカネマブ)日本においてアルツハイマー病治療剤として12月20日に新発売
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号