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心不全の入院期間はどのくらい?疾病別の入院期間をランキング

目次

日本では、死因の第1位は「がん」であり、第2位が「心疾患」とされています。このような統計から、「心疾患は死に至る可能性もある怖い病気」という認識が、多くの人の中にあるのではないでしょうか。

心疾患は心臓の病気の総称であり、ここに分類される病気は、虚血性心疾患や不整脈、心不全があります。これらの病名の中で、もっとも聞きなじみのある言葉が心不全かもしれません。
日本循環器学会の『急性・慢性心不全診療ガイドライン』によると、心不全とは、「心臓が悪いために、息切れやむくみが起こり、だんだん悪くなり、生命を縮める病気」と説明されています。症状が悪化すると入院治療が必要となる病気です。

では、心不全と診断された場合、どのくらい入院することになるのでしょうか。
厚生労働省は『令和2年(2020)患者調査の概況』にて、疾病ごとの入院期間を公開しており、これによると心不全を含む循環器系の疾患の平均入院日数は41.5日となっています。

入院日数が長くなれば、それだけ病院内での食事が増え、働けない期間も長くなることから、総医療費について心配となる方も多いでしょう。
そこで本記事では、心不全を含む疾患別の入院期間をランキング形式でご紹介します。また、入院期間の長い疾病にはどのようなものがあるのかを見ていきます。

疾病別の入院期間をランキング

疾患別入院期間ランキング


厚生労働省『令和2年(2020)患者調査の概況』から、疾患別の入院期間をランキングにしました。

第1位は精神及び行動の障害、第2位は神経系の疾患。どちらも長い時間をかけて治療を行う必要があるため、入院期間が長くなっています。
心不全を含む循環器系の疾患は第3位で41.5日。全疾患の平均入院期間が32.3日となっていますので、平均より10日ほど長いことになります。
循環器系の疾患の中で、心不全に絞ると平均入院期間は33.0日となっており、全疾患の平均入院期間とほぼ一緒になります。

一方で、死因の第1位である「がん」の平均入院期間18.2日であり、上位10位のランキングから外れました。
「がん」は近年、様々な治療法の効果が認められ、より効率的に治療ができるようになっています。特に外科療法と比べ、体への負担が少ない放射線治療等に移行していることもあり、通院しながら治療を受けるというケースも増えています。

続いて、上位3つの傷病大分類について、代表的な疾患名や一般的にかかる治療費を紹介していきます。

第1位:精神及び行動の障害とは?

統合失調症で苦しむ女性



精神障害、行動障害は、脳の機能に何かしらの変化が起こり、様々な精神の変化や行動の変化が見られる状態をいいます。この精神及び行動の障害には、統合失調症や気分障害(うつ病等)が含まれます。
精神病患者は、治療が困難な慢性的な状態になるケースが多いことや、患者家族のサポートが難しいなどの理由で、入院が長期化し1年以上同じ病院に入院する可能性もあります。

その中でも、特に入院期間が長くなる「統合失調症」について、厚生労働省の『精神・発達障害者しごとサポーター養成講座』をもとに、症状や原因をご紹介します。

症状
統合失調症は脳の様々な働きをまとめることが難しくなるために、幻覚や妄想などの症状が起こる病気です。症状としては「陽性症状」、「陰性症状」、「認知機能障害」の大きく3つに分けられます。

  • 陽性症状…幻覚や妄想
  • 陰性症状…感情表現の希薄化、意欲の欠如、自閉(引きこもり)
  • 認知機能障害…記憶力の低下、注意・集中力の低下

原因
100人に1人弱かかる、比較的一般的な病気だと言われていますが、原因は今のところ解明されていません。
統合失調症は一度回復しても、薬を止めたらすぐに再発しやすいことや、日常生活が送れるレベルまでなかなか回復しないなどの理由で、もっとも入院期間が長くなる病気の一つです。実際に平均入院期間は570.6日と非常に長くなっています。

費用
厚生労働省の『令和4年社会医療診療行為別統計』によると、統合失調症による入院1日あたりの費用は約14,070円です。
これに入院期間570.6日を掛け合わせると、統合失調症の退院までの平均入院費は約803万円となります。

第2位:神経系の疾患とは?

神経痛に耐える男性


脳・脊髄・神経が侵される神経系の疾患です。
神経系は非常に多くの身体機能を制御しているため、該当する症状は多岐にわたります。ここでは日本神経治療学会の『標準的神経治療・三叉神経痛(2021)』をもとに三叉神経障害について紹介します。

症状
顔の皮膚、口の中の粘膜、歯と歯茎の感覚を司る神経が「三叉神経」です。突然顔面に生じる、えぐられるような、突き刺さるような耐え難い痛みがあります。

原因
血管(動脈)が三叉神経痛を圧迫することにより、神経に強い刺激が起こり、痛みとして感じられます。

費用
三叉神経痛の治療費の平均額はわかりませんが、厚生労働省の『令和4年社会医療診療行為別統計』に、神経系の疾患による入院費が掲載されていました。入院1日あたりの費用は約29,770円です。
精神及び行動の障害と比較すると入院1日あたりの治療費が高くなる傾向があります。

第3位:循環器系の疾患とは

脳梗塞の痛みに耐える女性


循環器系の疾患は、全身に⾎液を循環させる臓器の⼼臓や⾎管が、正常に働かなくなる疾患のことで、⾼⾎圧・⼼疾患・脳⾎管疾患などに分類されます。
心不全もこの循環器系の疾患に含まれますが、入院日数で見ると脳血管疾患の方が圧倒的に長くなっています。
脳血管障害(脳卒中)には、脳の血管が詰まる脳梗塞と脳の血管が破れる脳出血、くも膜下出血があります。後遺症がのこることもあるため、入院期間はかなり長期間となります。

ここでは脳血管疾患の一つである「脳梗塞」について、国立研究開発法人、国立循環器病研究センターの解説をご紹介します。

症状
脳梗塞は脳卒中の過半を占める病気です。脳の血管が詰まり、血流が十分に脳細胞に行き渡らなくなると、すぐに脳細胞の働きが悪くなり、半身麻痺などの症状がでます。

原因
脳梗塞の原因の大きなものは、動脈硬化です。血管にコレステロールなどがたまるなどして血管が厚く硬くなり、血液の流れが悪くなってしまうことにより、脳へ血液を運べなくなります。
この動脈硬化を促進させ血管に損傷を与える病気には、高血圧や脂質異常症、糖尿病などがあります。

脳梗塞の平均入院期間は75.1日です。軽症の場合は2週間程度で退院できる場合もありますが、重症度が高くなると、リハビリ期間も長くなるため、入院期間が数か月に渡ることもあります。

費用
厚生労働省の『令和4年社会医療診療行為別統計』によると、脳梗塞による入院1日あたりの費用は約43,130円です。
脳梗塞の平均入院期間である75.1日を掛け合わせると、約324万円となります。

まとめ

男性の医師


この記事では、心不全の入院期間、傷病大分類の入院期間ランキング、各傷病大分類における代表的な疾患について紹介しました。

心不全の入院期間の平均は33日

傷病大分類のランキングでは、心不全を含む「循環器系の疾患」は第3位です。入院期間だけでみると、循環器系の疾患よりも精神疾患や神経疾患の患者の平均入院期間の方が長くなります。
また、循環器系の疾患の中では、心不全よりも脳血管疾患の方が入院期間も長くなっています。

公的健康保険制度が大きな役割を果たす

先に述べた治療費はあくまで統計からみた治療費の一例です。入院費のみ記載しましたが、実際には通院した場合にかかる費用もあります。

ただ、これらの費用を見て、慌てて民間の医療保険を考えていくというのは早計です。これらの金額が全額自己負担となるわけではなく、公的医療保険制度が適用となるからです。
6歳以上70歳未満であれば、公的医療保険制度を使うことで、治療費が3割負担となるだけでなく、月で一定の金額を超えた分が払い戻される「高額療養費制度」が活用できるため、自己負担額は更に抑えられます。

また高額療養費制度には多数回該当という項目があり、数か月の入院が続く場合、更に負担を軽減してくれる制度があります。
厚生労働省の資料に、制度の概要や支給上限額等が詳しく案内されていますので、ご参考にしてください。

大きな病気に罹った人の話を聞いたりすると、治療費のことが心配になるものです。しかし、公的健康保険制度で基本部分はカバーされることをしっかりと認識したうえで、民間の医療保険の検討も進めてみると、より安心ではないでしょうか。

▼参考
厚生労働省 令和2年(2020)患者調査の概況 統計表7
患者調査|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

厚生労働省『精神・発達障害者しごとサポーター養成講座』
精神・発達障害者しごとサポーター 養成講座 e-ラーニング|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

日本神経治療学会の『標準的神経治療・三叉神経痛(2021)』
日本神経治療学会 | 標準的神経治療:三叉神経痛(2021) (jsnt.gr.jp)

国立研究開発法人、国立循環器病研究センター
国立循環器病研究センター 病院 (ncvc.go.jp)

厚生労働省『令和4年社会医療診療行為別統計』
結果の概要|厚生労働省 (mhlw.go.jp)

高額療養費制度について
高額療養費制度を利用される皆さまへ (mhlw.go.jp)

  • ソナミラ編集部さん

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