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事実婚を選ぶカップル、お金の制度はどうなっている? 社会保障や税金、相続の注意点を解説

目次

「事実婚」とは、「法律上の要件(届出)を欠いているが、事実上夫婦としての実態を有する関係」を指しています。これに対して、婚姻届を出している結婚を「法律婚」と呼びます。法律婚で姓が変わることによる不都合などから、現在は成人人口のおよそ2〜3%が事実婚を選択しているようです。ところで、法律婚と事実婚には、お金の面でも違いがあるのはご存知でしょうか。この記事では事実婚でのお金の制度について解説します。事実婚と法律婚のどちらを選ぶべきか迷っている人は参考にしてみてください。

社会保険や年金などは法律婚とほぼ同じ扱いを受けられるケースが多い

社会保険や年金などは法律婚とほぼ同じ扱いを受けられるケースが多い


社会保険や年金などの社会保障制度を利用する上では、事実婚というだけで不利になるケースはさほど多くないようです。

たとえば、健康保険には収入が少ない家族を援助する「扶養」と呼ばれる制度があります。年収などの要件を満たした配偶者は「被扶養者」として、保険料の負担なしで健康保険の制度を利用できます。

この場合の「配偶者」が誰を指すのかが問題ですが、実は事実婚であっても要件を満たせば配偶者になれます。というのも「届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者も配偶者に含む」と法律で定められているからです。

また、配偶者が亡くなった場合、生計を維持されている遺族が受け取れる「遺族年金」も、事実婚であっても一定の条件さえ満たせば、法律婚と同様に受給できます。

そのほかにも、育児休業・介護休業を取得する場合や、労災の遺族補償年金を受け取る場合なども法律婚と同様の扱いを受けられます。

ただし、民間企業のサービスを利用する場合、事業者によって対応が分かれる点に注意しましょう。たとえば住宅ローンを組む際に、事実婚の配偶者の収入も加味して審査を受けられる金融機関もあれば、加味されない金融機関もあります。

事実婚が経済的な不利益を被る場面とは?

事実婚が経済的な不利益を被る場面とは?


税制面や相続面では、法律婚と事実婚の間で明確な差があります。

たとえば配偶者の年収が一定額以下の場合に所得から控除を受けられる「配偶者控除」や「配偶者特別控除」は、事実婚の配偶者には適用されません。これらの制度における「配偶者」は民法上の規定に則って解釈するのが妥当とされているからです。民法では、市区町村に婚姻届を提出し、受理された者のみを配偶者として認めています。

また、事実婚の配偶者は法定相続人になれないため、法定相続人に最低限の相続分が保証される「遺留分」もありません。つまり、外見上は法律婚と同様に親しく過ごしていたとしても、遺産を全く相続できない可能性もあるのです。もし遺産を相続できたとしても、法律婚の場合に認められている「相続税の配偶者の税額軽減」は適用されません。そのため、遺産の額によっては相続税の負担が重くなる可能性もあります。

ただし、事実婚をしている人たち全てがこれらのデメリットを必ず被るわけではありません。たとえば、フルタイムで共働きをしている場合など、そもそも所得控除の対象外となるくらいの年収を得ている場合は、控除が適用されなかったとしても大きな影響はないでしょう。

また、生命保険会社によっては、死亡保険金の受取人として事実婚の配偶者を指定することを認めている会社もあります。その場合、法律婚の配偶者がいないことや、一定期間同居して生計をともにしていることなど、保険会社によって条件が設定されています。事実婚を考えている方は、自分やパートナーが加入する保険会社がどのような制度や条件なのか、調べておくことも大切です。

事実婚を選ぶなら知っておきたい手続きとは

事実婚を選ぶなら知っておきたい手続きとは


これまで述べたように、事実婚を選んだとしても法律婚と同様の扱いを受けられる場面は多くあります。しかし、同様の扱いを受けるためには「事実上の婚姻関係であること」の証明が必要です。以下の手続きを知っておくと、日常生活がより過ごしやすくなるでしょう。

住民票の変更手続き

市区町村で行う手続きです。2人で世帯を同一にし、世帯主との続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」と記載して住民票を届け出ます。

公正証書の作成

公正証書とは、公務員である「公証人」がその権限に基づいて作成する公文書のことです。事実婚の夫婦であることや、財産の分け方などを記載することで、契約書のような役割を果たします。

パートナーシップ制度の利用

パートナーシップ制度とは、主に同性カップルに対して法律婚と同様の関係性を認める制度のことです。自治体によっては事実婚のカップルに適用できるケースもあり「パートナーシップ宣誓書」などの書類を受け取れます。

想定されるデメリットを知り、安心した結婚生活を

事実婚と法律婚を比べると、社会保障の面ではあまり違いがないものの、税金や遺産相続など経済的な面ではやや不利な点もあります。事実婚を選択する場合は、年収や家族構成、将来のライフプランなどを踏まえて、自分たちの場合にどのようなデメリットが想定されるのか考えてみるとよいかもしれません。結婚生活を安心して送るために、お金にまつわる制度についてもパートナーと話し合ってみてはいかがでしょうか。

▼参考資料

  • 男女共同参画白書 令和4年版 コラム3 事実婚の実態について(内閣府)
  • いわゆる事実婚に関する制度や運用等における取扱い(内閣府)
  • 公正証書(日本公証人連合会)
  • 横浜市パートナーシップ宣誓制度(横浜市)
  • 著者
    荒木 和音さん

    保険代理店にて、個人を対象とした家計相談やライフプランニング、企業向けのリスクコンサルティングを経験。現在は金融分野専門ライターとして活動中。大手金融機関や大手金融メディアでの豊富な執筆実績をもつ。

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