確定申告、忘れたらどうなる?ふるさと納税や住宅ローンの控除は
自営業者やフリーランスの方が行うことの多い確定申告ですが、実は会社員でも確定申告が必要となるケースがあります。副業で20万円を超える所得を得ている会社員の方などは確定申告が必要です。また、確定申告には申告期限があります。
では、確定申告を忘れていて申告期限を過ぎてしまった場合はどうなるのでしょうか。この記事では、確定申告を忘れた場合の対処法や追加で発生する税金の種類について解説します。
ふるさと納税や住宅ローン控除での還付申告の期限についても紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
確定申告を忘れたらどうすればよい?
会社員でも所得税の確定申告が必要となる場合があります。申告期日は、所得が生じた年の翌年の2月16日〜3月15日です。では、期限までに確定申告をできなかった場合にはどのような対応が必要なのでしょうか。
期限内にするのを忘れた場合は期限後申告
期限内に確定申告を忘れた場合は、期限後申告が必要となります。期限後申告で使用する申告書の書式などは通常の確定申告と同じです。
ただし、期限後申告をすると、本来納めるべき税金のほかにも原則として追徴課税が発生します。また、所得税の期限後申告では青色申告特別控除の適用が認められません。
やむを得ない事情があるときは猶予や延納の申請
やむを得ない事情があって期限内に税金を納付するのが難しい場合は、税務署に相談しましょう。税務署長の承認を得れば、期限後に納税ができる猶予制度を利用できます。
猶予制度を使えば無申告加算税などは課されず、課される追徴課税は延滞税のみです。また、延滞税の税率も通常より低くなります。
所得税は、本来の期限までに納付すべき税額の2分の1以上を納付すれば、残りの納税を延長することができます。ただし、延納期間中は利子税がかかります。
期限内での修正は訂正申告
提出した確定申告の内容が誤っていたことに確定申告期限内で気づいた場合、訂正申告が必要です。再度申告書を作成して、期限内に提出します。再提出したものが、正式な確定申告書として取り扱われます。
この場合、追徴課税などのペナルティはありません。誤りに気づいた場合は、速やかに正しい申告書を提出しましょう。
また、確定申告期限後に申告内容の誤りに気づいた場合は修正の手続きが必要です。税額を実際より少なく申告していた場合、過少申告加算税を課される場合があります。
期限内の確定申告を忘れたら追徴課税
期限内の確定申告を忘れた場合や、申告に誤りがあった場合に発生する追徴課税について解説します。
無申告加算税
確定申告の期限後に申告した場合、原則、無申告加算税が課されます。無申告加算税の税率は以下の通りです。
要件 | 納付すべき税金の額 | 加算税率 |
---|---|---|
税務調査の通知前に自主的に申告した場合 | - | 5% |
税務調査の通知後に申告した場合 | 50万円までの部分 | 10% |
50万円を超える部分 | 15% | |
税務調査後に発覚した場合 | 50万円までの部分 | 15% |
50万円を超える部分 | 20% |
※2017年1月1日以後に法的申告期が到来するもの
出典:国税庁No.2024「確定申告を忘れたとき」を基に筆者作成
たとえば、確定申告をしておらず税務調査後に80万円の納税が必要であることが発覚した場合、本来の税金とは別に追加で納める無申告加算税は135,000円(50万円×15%+ 30万円×20%)です。
一方で、税務調査の前に自主的に申告した場合の無申告加算税は40,000円(80万円×5%)で済みます。税務調査後に発覚した場合との差は95,000円とかなりの額に上ります。
申告を忘れていることに気づいたら、できるだけ早く税務署に申告しましょう。
また、期限後申告が申告期限から1か月以内に行われていて、3月15日までに納税手続きが終わっている場合(申告書の提出を忘れていただけの場合)などは、一定の要件を満たしていれば無申告加算税が免除されます。
過少申告加算税
確定申告で本来納めるべき税額よりも少ない税額を申告した場合、過少申告加算税が発生する場合があります。過少申告加算税の税率は以下の通りです。
要件 | 新たに納める税金の額 | 税率 |
---|---|---|
税務調査の通知前に自主的に申告した場合 | - | 課税されない |
税務調査の通知後に申告した場合 | 50万円までの部分 | 5% |
50万円を超える部分 | 10% | |
税務調査実施後に発覚した場合 | 当初の申告納税額か50万円のいずれか多い金額を超えるまでの部分 | 10% |
当初の申告納税額か50万円のいずれか多い金額を超えている部分 | 15% |
出典:国税庁No.2026「確定申告を間違えたとき」を基に筆者作成
たとえば当初の申告納税額が50万円以下で、税務調査実施後に60万円追加で納税が必要であることが発覚した場合、過少申告加算税は65,000円(50万円×10%+ 10万円×15%)です。
一方で、税務調査の通知前に自分で申告した場合には過少申告加算税が発生しません。申告内容に誤りがあったことが発覚した場合、できるだけ早く税務署に申告しましょう。
重加算税
仮装や隠蔽があったと判断された場合は、過少申告加算税や無申告加算税に代わって重加算税が課されます。
重加算税の税率は、過少申告加算税に代わる場合が35%、無申告加算税に代わる場合が40%です。
また、過去5年以内に無申告加算税や重加算税を課されたことがある場合はさらに10%が加算されます
延滞税
期限後に確定申告をする際には、納付が遅れた日数に応じて延滞税が発生します。とくに、期限から 2か月以後の日数に対する延滞税は高額です。
延滞税を少しでも抑えるために、確定申告を忘れたことに気づいた場合は速やかに申告しましょう。
悪質な所得隠しや脱税は刑事罰の可能性
悪質な所得隠しや脱税と判断された場合、刑事罰が課されることもあります。
所得税法によると、正当な理由がないのに所得の確定申告をしなかった場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が課されます。(所得税法第241条)
また、故意に確定申告書を提出しないなどで納税を免れた場合に課される罰は、「5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金または併科」です。(所得税法第238条3項)
さらに、偽りその他不正の行為で納税を免れ、税金の還付を受けた場合は「10年以下の懲役もしくは1,000万円以下の罰金、または併科」が課されます。(所得税法第238条1項)
刑事罰は非常に重いです。確実な申告と納税を心がけましょう。
ふるさと納税などを忘れたときは還付申告
確定申告の義務がない会社員の方でも、医療費控除や住宅ローン控除を利用して税金の還付を受ける場合は「還付申告」が必要です。(住宅ローン控除に関しては、1年目に還付申告を行えば、2年目からは年末調整で処理できるため還付申告を行う必要はありません)
また、ふるさと納税でワンストップ特例の申請を忘れた方も還付申告により税金の還付が受けられます。
還付申告は、確定申告の期日と同じ翌年の3月15日までに申請する人が多いです。しかし、実は還付申告の申請期間は確定申告の申請期間と関係ありません。
還付申告の申告期間は、その年の翌年1月1日から5年間です。確定申告の期日までに還付申告の手続きを終えられなかった方も、ぜひ申請をしましょう。
確定申告は忘れないように期限内で終わらせよう
確定申告は期限を過ぎると追徴課税が発生します。さらに、罰金や懲役が課されることもあるため、期日内の確定申告が重要です。
確定申告を期日内に終わらせるために早くから準備を行うようにしましょう。とくに、副業をしている会社員の方は仕訳や決算書の作成などに時間がかかります。事前にスケジュールを立てて、早めに仕訳や決算書の作成に取りかかりましょう。
また、最近は国税庁ホームページの確定申告書等作成コーナーを利用すれば、パソコンやスマートフォンで確定申告が可能です。税務署へ行くことや紙での作成を手間に感じる方は、確定申告書等作成コーナーを利用するのも一つの選択肢です。
ただし、初めての確定申告は手続きや書類の作成方法がわからず戸惑うことがあるかもしれません。そのような方は、税の専門家である税理士へ相談することを考えてみてはいかがでしょうか。
▼参考資料
- No.1211-1 住宅の新築等をし、令和4年以降に居住の用に供した場合(住宅借入金等特別控除)|国税庁
- 令和4年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ|国税庁
- 令和3年分確定申告期の確定申告会場のお知らせ|国税庁
- No.4429 贈与税の申告と納税|国税庁
- No.4102 相続税がかかる場合|国税庁
- No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
- 更正の請求書、修正申告書とは何ですか。
- No.2024 確定申告を忘れたとき|国税庁
- No.2072 青色申告特別控除|国税庁
- 国税を期限内に納付できないときは、どうしたら良いですか?
- 【税金の納付】|国税庁
- 【申告が間違っていた場合】|国税庁
- No.2026 確定申告を間違えたとき|国税庁
- 延滞税の計算方法|国税庁
- 所得税法 | e-Gov法令検索
- No.2030 還付申告|国税庁
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