ふるさと納税の始め方 初めての人でも簡単 3ステップ
総務省の調査によると、2021年度のふるさと納税による寄附金額は約8,300億円を超え、前年度より約1,580億円も増加しました(総務省自治税務局市町村税課、2022年7月29日)。このことから、ふるさと納税への関心が高まっていることがうかがえます。
ふるさと納税に興味はあるけど、いま一つメリットがわからない、手続きが難しそう、といった理由でなかなか始められない人も多いでしょう。本記事では、ふるさと納税のメリットや利用方法を解説します。
ふるさと納税はどんな制度?
ふるさと納税は、2008年度の税制改正で導入され、2008年1月1日以降の寄附金から制度がスタートしました。制度の主な目的は、国民が寄附先を自ら選択できるようにすることで、地方から大都市への人口流出による税収面の格差を改善することです。
「納税」と名がついていますが、実際には都道府県や市区町村への「寄附」にあたります。一般的に自治体に寄附をした場合、確定申告を行うことで、寄附金額の一部が所得税および住民税から控除されます。ふるさと納税では、この住民税の控除に特例分が上乗せされ、一部の自己負担額を除いた全額が税額控除されるのです(一定の上限あり)。この自己負担額は制度の開始当初は5,000円でしたが、2011年からは2,000円へと引き下げられました。また、2015年度の税制改正では、全額控除されるふるさと納税枠が約2倍に拡充されるとともに、確定申告が不要になる「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されたことで、次第に浸透していきました。
ただし、全額控除される寄附金額には、収入や家族構成等により違いがあります。詳しくは後述します。
ふるさと納税のメリット
次に、ふるさと納税のメリットを3つ紹介します。
納めるべき税金が控除される
前述の通り、ふるさと納税は自治体に対する「寄附」であり、確定申告をすることで、寄附金額のうち自己負担額2,000円を超えた部分が、所得税および住民税から全額控除されます。なお、後で解説する「ふるさと納税ワンストップ特例制度」を利用した場合は、所得税からの控除はなく、その分も含めた全額が、翌年度の住民税から控除されます。
たとえば、給与収入500万円の独身の人が61,000円の寄附をした場合、自己負担額の2,000円を超える部分、59,000円が全額控除されます(総務省「ふるさと納税ポータルサイト」の「全額控除されるふるさと納税額(年間上限)の目安」より」。
納付額に応じて返礼品がもらえる
ふるさと納税のメリットは税額控除だけではありません。多くの自治体では「返礼品」を用意しています。返礼品の費用は、地方税法により「寄附金額の30%以下」と定められていますが、控除が適用されるうえに返礼品がもらえれば、得するケースが多いはずです。
返礼品は、牛肉や米、果物といった地域の産品や、キャラクターグッズなどが主流で、最近ではモノだけでなくレジャーなどの体験を返礼品とする自治体もあります。たとえば、奈良県大和高田市では花魁(おいらん)の衣装着付け体験、鹿児島県奄美市ではウミガメシュノーケリング体験などが提供されています(2023年3月7日時点、筆者調べ)。
決済方法が選べ、簡単に利用できる
「ふるさとチョイス」「楽天ふるさと納税」といった、ふるさと納税ポータルサイトから寄附を行う場合、クレジットカードや電子マネーなどのキャッシュレス決済を利用できることがほとんどです。パソコンやスマートフォンがあれば、自宅で簡単に申し込み・決済を完了することが可能です。
もちろん、銀行振込やコンビニ決済といった決済方法にも対応しているケースが多いので、クレジットカード情報をウェブ上で入力することに抵抗があるという人も安心して利用することができます。
簡単3ステップでふるさと納税に挑戦!
ふるさと納税の手順は、大きく分けると次の3つです。
ステップ1.控除上限額を調べる
ふるさと納税による自己負担額を最小の2,000円に抑えるには、「いくらまで寄附できるのか」という控除上限額を調べることが重要です。この金額を超える寄附を行っても、想定したほどの効果が出ず、無駄が出てしまいます。
住民税からの控除(特例分)の目安としては、自身が納付する住民税所得割額のおよそ2割にあたる額までです。より詳しく知りたい場合には、総務省のウェブサイトで公開されている「寄附金控除額の計算シミュレーション」を利用してください。給与所得者向けですが、収入や家族構成などを入力するだけで簡単に控除上限額がわかります。
このツールを使うと、たとえば年収600万円で共働き・高校生のお子さんが1人いる場合、控除上限額が69,000円であることがわかります。
ただし、医療費控除や住宅ローン控除など、他の控除の制度を利用している場合は、控除上限額はもっと少なくなります。あくまで目安として、上限を超えないように気をつけましょう。
ステップ2.寄附する自治体を選ぶ
現在、多くのふるさと納税を扱うポータルサイトがあり、国税庁に指定されているものだけでも、18事業者が存在します(2023年1月13日時点)。
各ポータルサイトが独自にポイント還元などを行っているので、ポイントを目的にポータルサイトを選ぶことも有効です。また、ポータルサイトを経由せずに自治体へFAXや郵送などで直接申し込むこともできます。
寄附する自治体は、自分の生まれ故郷の自治体でも、全く縁のない自治体でも構いません。返礼品が魅力的な自治体を選ぶ人が多いです。
ふるさと納税のメリットを最大限に受けようとする場合、控除上限額の範囲内なら、いくつの自治体に申し込んでも構いません。ただし、後述する「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の利用は、5自治体までに限られます。
また、現在住民票がある自治体へ寄附する場合は、税額控除の対象にはなるものの、返礼品は受け取れないことに注意してください。
ステップ3.寄附金控除の手続きを行う
寄附金控除を受けるには、「確定申告」または「ふるさと納税ワンストップ特例制度」の申請のどちらかを行う必要があります。
ワンストップ特例制度は、2015年から開始された制度で、次のいずれにも当てはまる場合に限り、利用することができます。
- 確定申告や住民税申告の必要がない給与所得者や年金受給者等
- 寄附先が5団体以内
たとえば、給与所得者(会社員や公務員)のうち年収2,000万円を超える人や副業収入が20万円を超える人、医療費控除の適用を受ける人などは、確定申告をする必要があるため、ワンストップ特例制度は利用できません。
ワンストップ特例制度を利用できる場合、控除の手続きは簡単です。「寄附金税額控除に係る申告特例申請書」に必要事項を記入し、個人番号確認書類および本人確認書類を添付して、寄附翌年の1月10日までに自治体へ郵送(必着)するだけです。マイナンバーカードを利用したオンライン申請に対応している自治体であれば、本人確認書類の提出が不要のため手間が省ける場合もあるでしょう。
確定申告を行う場合は、以下のいずれかの書類を添付します。
- 自治体が発行する「寄附金の受領書」
- 特定事業者(ふるさと納税ポータルサイト)が発行する「寄附金控除に関する証明書」
なお、確定申告をe-Tax(電子申告)で行う場合、原則として紙の証明書は提出不要です。
ふるさと納税で注意すること
返礼品が届いて終わりではなく、手続きをすべて完了させるまでが「ふるさと納税」です。今年の寄附を終えた方も、忘れていることはないか今一度確認してみましょう。
控除の手続きを忘れると恩恵を受けられない
寄附の申し込みはいつでも行えますが、その年の寄附金額としてカウントされるのは、1月1日~12月31日に支払いを完了したものに限られます。クレジットカードなら決済日が寄附の受領日となるため、比較的ぎりぎりまで寄附を行えます。
ただし、現金書留などの場合は自治体に到着した日(入金が確認できた日)が受領日となるため、想定以上に時間がかかってしまうと、年末に手続きした場合は翌年分の寄附としてカウントされてしまう恐れがあります。余裕をもって寄附を済ませるようにしましょう。
また、前述の通り、ワンストップ特例制度を利用する場合の申請期限は、寄附翌年の1月10日までです。この期限を超えてしまった場合、2月16日~3月15日の1か月間に確定申告を行う必要があります。ふるさと納税のためだけに確定申告を行うのは手間なので、ワンストップ特例制度の対象となる場合は、期限内に済ませることをおすすめします。
寄附後に転居したら手続きが必要
ワンストップ特例制度の申請後に転居した場合には注意が必要です。
まず、住民税は1月1日時点で住民票に記載されている自治体に納めるため、転居したら速やかに住民票の異動手続きを行います(原則14日以内)。
その後寄附した自治体に住所変更の旨を知らせるため、「寄附金税額控除に係る申告特例申請事項変更届出書」を提出する必要があります。ふるさと納税ポータルサイトの登録住所を変更するだけでは不十分なので、手続き方法をよくご確認ください。
これらの手続きも、寄附翌年の1月10日が期限です。なお、この期限を過ぎた場合は、確定申告で手続きをしましょう。
代表的なふるさと納税サイト3選
ふるさと納税ポータルサイトは数多くあり、「どれを利用したらいいかわからない」と悩む人も多いでしょう。ここでは、国税庁が指定する特定事業者の中から、掲載自治体数トップ3のサイトを順に紹介します。
ふるさとチョイス
「ふるさとチョイス」は、1,600か所を超える自治体を掲載し、掲載自治体数No.1を誇ります。プレゼント企画や大感謝祭などのイベントも充実しており、さまざまな楽しみ方が選べます。
アカウント登録には、Amazonや各種SNSの登録情報を利用することで、メールアドレスや住所などの入力を省略することができます。支払い方法は、郵便振替・銀行振り込み・現金書留・納付書支払い・クレジットカード決済・電子マネー決済・コンビニ決済など、幅広く対応しています。
ウェブサイト内の「かんたんシミュレーション」のページで、ふるさと納税を行う手順がわかりやすく解説されていることも、初心者におすすめのポイントです。
楽天ふるさと納税
「楽天ふるさと納税」は、1,500か所を超える自治体を掲載しており掲載自治体数No.2です。
楽天会員であれば、個人情報などを改めて登録する必要がなく、楽天市場でのショッピングと同じ感覚でスムーズに利用を開始できます。また、寄附金額に応じて「楽天ポイント」が付与されるのに加え、クーポンの配布やポイントアップなどの期間限定キャンペーンもうまく活用すれば、楽天ユーザーにはとくにお得感が得られます。
決済方法はクレジットカードやオンライン決済など、おおむね他社と大差はありませんが、自治体によって異なる場合もあるため、申し込みページで確認しましょう。
さとふる
「さとふる」は1,200か所を超える自治体を掲載しており掲載自治体数No.3です。
自治体向けに寄附の募集から受け付け、寄附金の収納、返礼品の在庫管理や配送など、ふるさと納税の運営に必要な業務を一括代行するサービスを提供しています。そのため配送状況の確認や問い合わせがしやすいと言え、ふるさと納税初心者も安心して利用することができるでしょう。
さとふるでは、「ソフトバンクまとめて支払い」「au かんたん決済」「d払い」といった各種キャリア決済に加え、クレジットカード、コンビニ決済、金融機関(Pay-easy決済)、PayPayオンライン決済など多様な支払い方法が選択できることも強みの1つです。
メリットいっぱいの「ふるさと納税」を始めてみては
ふるさと納税は「税金の控除」「返礼品」という魅力を兼ね備えており、パソコンやスマートフォンで簡単に利用できるなど、メリットいっぱいの制度です。税金の控除を受けながら、普段買うことができない贅沢な食材や、生活必需品などが受け取れるふるさと納税のメリットを、ぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
物価高騰により家計への負担が大きくなっている昨今だからこそ、生活費の節約にもつながるふるさと納税を活用していきたいですね。
▼参考資料
- ふるさと納税に関する現況調査結果(概要)(総務省自治税務局市町村税課)
- よくわかる!ふるさと納税(総務省)
- ふるさと納税の概要(総務省)
- 税金の控除について(総務省)
- 地方税法(昭和二十五年法律第二百二十六号)
- 現代風花魁体験(1名様分)(株式会社さとふる)
- お礼の品詳細(株式会社トラストバンク)
- 国税庁長官が指定した特定事業者(令和5年1月13日現在)
- 自分の住んでいる同じ自治体へのふるさと納税は可能!損になる理由も解説(株式会社アイモバイル)
- ふるさと納税ワンストップ特例制度について(佐野市)
- ふるさと納税に係る寄附金控除に関する証明書等について(国税庁)
- ふるさと納税はいつまで?期間や期限、おすすめの支払方法を解説(株式会社クレディセゾン)
- 個人住民税(総務省)
- 転居した場合の手続きについて(株式会社トラストバンク)
- ふるさとチョイス(株式会社トラストバンク)
- 【楽天市場】楽天ふるさと納税(楽天グループ株式会社)
- [プレスリリース] さとふる、2023年2月に2自治体のふるさと納税を取り扱い開始 ~2月末時点で、「さとふる」で取り扱う自治体数が1,223に~(株式会社さとふる)
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号