【30代からの学び直し】毎日のニュースで流れる「株価」!実は株に興味がない人も関係ある、ってどういうこと?
「『国債の金利』…なかなか手ごわかったぜ」。そうつぶやくのは、とにかく「学ぶ意欲」だけは誰にも負けない男「金尾学(かねおまなぶ)」。
金尾:お金に関する知識と教養がドンドン身についていく…。これは近い将来、本当に億万長者になれるかも!?
馬渕:なれるといいですねー。お疲れさまでーす。
横をスッと通り過ぎたのは、「国債の金利」の解説を終え、帰路に着こうとしている人気経済アナリスト・馬渕磨理子(まぶちまりこ)さん!
金尾:ジャスタモーメン!先生、もうひとつだけお聞きしたいことが!!
馬渕:(先生じゃないけど)なんですか、金尾さん?
金尾:実は、友人からとんでもない儲け話を聞いたんです。なにやらカブを買うとむちゃくちゃ儲かるとか?さっそくスーパーで買ってきたので、使い方を教えてくださいぃぃぃ!
馬渕:…。
今回の「30代からの学び直し」では、経済アナリスト・馬渕磨理子さんに、知っているようで知らないかもしれない「株価」について、わかりやすく解説していただきます!
馬渕 磨理子さん
一般社団法人 日本金融経済研究所 代表理事。コメンテーターとしてテレビ各局に出演し、ラジオ番組のレギュラーももつ人気経済アナリスト。通称「うまちゃん」。
金尾 学
30代のとにかく学びたい男。学ラン姿にグルグル眼鏡のトラディショナルスタイルが特徴。いかにも真面目そうな外見だが、その実態は…?
そもそも「株券」とか「株式会社」って何?
金尾の天然ボケに固まる馬渕さん
馬渕:…。ベーコンと一緒にコンソメスープで煮込むとおいしいと思いますよ。
金尾:なぜそんなさげすむような目でレシピ紹介を…。まさか…儲かるカブってこれじゃないんですか!?
馬渕:あまりに古典的なボケで、一瞬、感情を失ってしまいました。もう仕方ないですね。では、「株」についても解説しましょうか!
金尾:お願いしますぅぅぅ!(カブを突き付けて)
馬渕:ふぅ(やれやれ)。
金尾:まず「カブ」って、野菜じゃないなら何なんですか?
馬渕:株とは、株式会社が発行する「株券」のことです。株式会社の始まりは、17世紀初頭にオランダで設立された「東インド会社」という貿易会社です。世界史の授業にも出てきたので覚えている人も多いかもしれませんね。
金尾:たしかに何だか聞いたことがある。睡眠学習の効果ですね!
馬渕:授業中は寝ないように…。当時の船舶による貿易は、途中で難破したり、海賊に襲われたり、とてもリスクが高いものでした。しかし、当時のアジアの香辛料は宝石並みに高価でリターンも大きい。リスクの高い事業にチャレンジする人に対して、「がんばって」と応援する気持ちで資金を渡し、「その代わり、大きな利益が出たら、たくさんリターンをちょうだいね」という取引をしたのが、株式という形の始まりだといわれています。
金尾:おお、わかりやすい!
馬渕:事業を始めるには、まずお金が必要ですよね。そうした資金を提供してくれる人が「投資家」であり、そのお金と引き換えに会社から投資家に渡されるのが株券です。
金尾:投資ってお金儲けのためにやるものではなくて、応援の気持ちがスタートだったとは。まさに「令和の虎」みたいなものだったんですね!
馬渕:そうです!東インド会社の時代と同じように、若い起業家が新たに作った会社を応援するための、投資型クラウドファンディング、エンジェル税制(スタートアップ企業への投資に関する税の優遇制度)といった仕組みも存在します。
金尾:証券取引所という言葉もよく聞くんですけど、あれはどういった施設なんですか?
馬渕:証券取引所は、株式や債券を取引する場所です。日本には、東京証券取引所(東証)と名古屋証券取引所(名証)、福岡証券取引所(福証)、札幌証券取引所(札証)の4つがあります。海外では、アメリカのニューヨーク証券取引所やナスダックが知られていますね。
金尾:なかではやはり、魚市場のセリみたいに、株の売買が行われているんですね?
馬渕:昔は本当に証券取引所のなかに人がたくさんいて、「売り!売り!」「買い!買い!」と声が飛び交っていたようですけどね。今は証券会社からの注文も証券取引所内の取引もコンピューター上で行われるので、なかはシーンと静まりかえっていますよ。
金尾:「東証一部上場!」みたいな言葉も見かけますが、あれは…?「喧嘩上等!」みたいなこと?
馬渕:全然違いますね。たとえば東証から「業績がよく、経営がクリーンな、優秀な企業」と認められ、東証での株式取引が始まったことを上場と呼びます。証券取引所という場で取引される分、上場した企業の株式は投資家にとって売買がしやすくなります。企業にとっても、市場での取引によって資金が集めやすくなり、また会社の信用度も高まるメリットがあるんです。
金尾:上場していない株はどうなるんですか?
馬渕:未上場の企業の株も、売買したり保有したりすることは可能です。しかし、上場していないため取引が難しく、リスクもあるので、投資初心者は手を出さないほうが良いでしょう。
金尾:なるほど!では「東証一部」というのは?
馬渕:かつての東京証券取引所には、「市場第一部」、「市場第二部」、「マザーズ」、「JASDAQ(スタンダード・グロース)」の4つの市場区分がありました。そのうち「市場第一部」に上場した企業を「東証一部上場」として、一流企業の仲間入りをしたように扱ったという経緯があります。
金尾:「かつて」ということは、まさか、今はもうない?
馬渕:2022年4月に市場区分の見直しが行われて、東証では「プライム市場」「スタンダード市場」「グロース市場」の3つの新しい市場区分に再編されています!
金尾:出合う前に「東証一部」がなくなっていたなんて。この気持ち、フレディ・マーキュリーの曲に出合ったときやブルース・リーの映画を観たときと似ているかも…。
株価ってなんで変わるの?株価が動くと世の中はどうなる?
金尾:「株価」ってつまり何ですか?なぜ変動するんですか?
馬渕:極めて単純化すると、株価は「企業の人気度」と言えます。人気が集まって買う人が多い株は高値を付け、人気がない株は株価が低迷します。需要と供給のバランスで、「株価」は決まっていくので、市場取引されるうちに日々変動していきます。
金尾:YouTuberの登録者数みたいなものか!では、どういった企業の株が、人気があるんですか?
馬渕:人気がある企業はやはり、ほかに替えが効かない企業ですね。独自の製品を作っていたり、独自のサービスを提供していたり。
金尾:よくニュースで「日経平均株価」という言葉が出てきますが、あれはどういったものですか?
馬渕:『日本経済新聞』は金尾さんもご存じですかね?日経とはまさに日本経済新聞社のことなんです。そして日経平均株価は、日経が「流動性が高い(取引量が非常に多い)」として選定した225銘柄の株価をもとに算出する株価指数です。株価指数とは、市場全体、あるいは日経平均のように特定の銘柄の全体的な値動きを示すための数値と理解してください。225銘柄は、東証プライム上場企業のなかでもとくに優良とされる企業で構成されています。つまり、日本の代表的な、頂点に位置する225社であり、日本経済を占うための代表的な指標として、ニュースでもよく取り上げられています。
金尾:225銘柄だけで、本当に日本経済が占えるんですか?
馬渕:そこは注意が必要ですね。日本のトップ企業225銘柄の株価をもとに算出しているので、すべての日本経済を表しているとは言えません。日本経済のおおまかな方向性はわかる指標ですが、日経平均株価に選ばれていない企業や中小企業の状況を反映しているものではないというのは覚えておきましょう。
金尾:ほかにも指標ってあるんですか?
馬渕:TOPIX(東証株価指数)という指標もあります。TOPIXは東証に上場するすべての銘柄の時価総額を指数化したものなので、日経平均よりもTOPIXの方が日本経済の実態により近いといわれています。
金尾:株価の変動は、僕たちの暮らしに影響を与えることはありますか?
馬渕:たとえば、企業の株価が暴落して信用が低くなり経営がうまくいかなくなると、事業規模も縮小され、これまで普段購入できていた商品が入手できなくなってしまう可能性があります。また、私たちの納めている年金は年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)という組織が運用・管理していますが、株価が下がって運用状況が悪化してしまうと、私たちの年金の積立額が目減りしてしまうことも考えられます。
金尾:株価の変動は、ときの政権の支持率にも関係あると聞くのですが?
馬渕:そうです。政権が安定しているときは、次から次へと景気対策が取れます。景気対策を打つと、株価が上がり、政権支持率が高くなるという流れがあると思います。日本の経済をきちんと見てくれる政府のもとだと、日経平均も上がりやすくなります。まさに好循環ですね!しかし、経済政策がうまくいっていないと、えてして株価は低迷しがちです。
金尾:リーマンショックで株価が大暴落!ということもありましたよね。あれは何事だったんですか?
馬渕:リーマンショックは、アメリカの大手投資銀行だったリーマン・ブラザーズが破たんしたことが原因で起こりました。有力な金融機関が破たんしたことで、金融に対する不安が広がってしまい、連鎖的にほかの金融機関の経営危機も招きました。ついには、金融以外のすべての産業にも波及。世界的な株価下落、金融危機を引き起こした出来事です。
金尾:恐ろしい…。すべての産業に影響があるということは、消費者もただじゃすまないですよね?
馬渕:株価の低迷が続くと、企業経営者の事業への意欲が冷えこみ、たとえば人員削減にもつながってしまいます。さまざまな企業が提供する製品やサービスへの発注も減り、結果的には消費者の生活に波及してしまいますね。
金尾:株をもっていなくても、生活に株価の影響はあるということですね…。
株式投資はやるべき?やめておくべき?注意するポイントは?
金尾:よし、株式投資を始めてみます!とりあえず、覚えておくことはありますか?
馬渕:株価は常に変動しており、下落によって損失が出てしまうことは十分に考えられます。さらに当然、倒産の可能性もありますね。企業が倒産してしまえば、株券は紙切れ…つまり価値がなくなってしまうので、注意は必要です。
金尾:いきなり冷や水をぶっかけられた。
馬渕:ただ、逆にいうと投資したお金以上の損をすることはないとも言えます。レバレッジを効かせた取引(レバレッジの原義は「てこの原理」で、金融用語としてはお金や証券を借りて取引すること。具体的には、信用取引など自己資金以上の出資とリターンを図る投資方法)をしない限りは、10万円を投資すれば10万円以上損することはありません。自分の許容範囲での投資をしていくことは大切ですね。
金尾:投資に向けて、株価から何を読み取る練習をしておけばいいんでしょうか?
馬渕:最初から株価・指標を見極めるのは難しいですが、まずは企業を観察することから始めてはいかがでしょうか?たとえば、自分がよく行くカフェや飲食店。新メニューが話題になっているなどの情報を見て、株価の変動を確認してみると、企業の人気と株価の連動を実感できるでしょう。いきなり投資家の目で見ようとしなくても、一般的な消費者目線で企業の人気を感じてみることが、良い投資先を見分ける一歩になるかも。
金尾:なるほど!自分なりの目線から投資先を選ぶことも大切なんですね。
馬渕:もちろん、経済や投資の基礎知識は必要ですし、投資は自己責任であるということも忘れてはいけません。もっとも、株式投資を始めようと思うのは、少なからず資産を運用してふやしたい気持ちによるものですよね。そういった気持ち自体があるのは悪いことではなく、働いて稼ぐといった手段以外でも、運用して資産をふやす方法があるのを知っておくのは有意義だと思いますよ。
金尾:少なからずと言わず、ガッツリとふやしたい。
馬渕:資産形成は、焦ってふやそうとしてもうまくいくものではありません。10年、20年といった長いスパンで、ゆっくりと株式・株価と付き合っていくような考え方が必要なのではないでしょうか。
金尾:あぁ、逆に損したらやめてしまいたいと思うかも…。
馬渕:それも悪くはありません。まずは、低リスク低リターンの安心・安全な資産形成を目指していきましょう。「このままじゃ損してしまいそう」と不安になったら、一旦休んだって良いんです。自分なりの無理のない目標を立てて、少しずつふやしていくのが良いと思います。
金尾:はい、検討します…。今回もありがとうございました!なんだか野菜を持っていた自分が遠い過去のようです。
馬渕:最初はどうなることかと思いましたよ。株価の動きは、人の心理ともつながっています。知れば知るほど面白いと思いますよ。
まとめ
金尾の突然の疑問から始まった、今回の「株価」についての解説。株価が及ぼす生活への影響など、実は知らなかったということもあったのではないでしょうか。では最後に、今回の学びポイントを整理してみましょう!
- 株の仕組みは、資金をもたない実業家を応援するために始まった!
- 「東証一部」はもう存在しない。東証の市場区分の見直しから丸1年が経っている。
- 「株価」とは「企業の人気度」!人気の株は高値に。
- 株価の変動は、景気への影響も大きく、私たちの暮らしに大きく関わる!
- 資産形成は、焦らずに。目標を立てて、長いスパンで少しずつふやしていこう!
経済アナリスト・馬渕磨理子さんのわかりやすい解説で、「株価」について理解できたのではないでしょうか。読者のみなさんも、ぜひ株式投資を行なう際の参考にしてみてくださいね。
新聞の株式欄を眺めながら「日本の将来」に思いを馳せる。そんな時間をぜひお過ごしください!
- 取材・文:庄子洋行
- 撮影:竹下朋宏
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号