4人家族の光熱費は? 一戸建てと集合住宅の光熱費の違いとは
物価上場が続く中、光熱費の上昇はみなさんの悩みの種になっているのではないでしょうか。特に、一戸建ての生活でかかる光熱費は、マンションやアパートなどの集合住宅よりも高い傾向があるため、生活に大きな打撃を与えかねません。
しかし住宅の気密性や断熱性の向上、電気料金のプラン見直しなどを行うことで、光熱費を抑えられる可能性があります。
4人家族の光熱費の現状を確認し、一戸建てと集合住宅の光熱費の傾向を比較して、特に一戸建ての光熱費を節約する方法をお伝えします。
一戸建てに住む4人家族の光熱費っていくら?
多くの公的な調査では、「一戸建てに住む4人家族の光熱費」に絞ったデータを取っていないため、今回は次の2つのデータから光熱費の傾向を推定します。
- 日本生活協同組合連合会の「電気・ガス料金調査」(2019年)
- 総務省統計局の家計調査「1世帯当たり1か月間の収入と支出/世帯人員・世帯主の年齢階級別」
電気・ガス料金調査によると、1か月の電気代の平均額は、集合住宅が6,477円であるのに対し、一戸建ては8,546円で、一戸建てのほうが約2千円上回りました。この調査では世帯人数を考慮していませんが、一般的には一戸建てのほうが集合住宅よりも光熱費が高額になる傾向にあるようです。
次に家計調査の「光熱・水道費」の項目から、4人家族の1か月の金額について、2021年と2022年のデータを紹介します。
用途分類 | 2021年 | 2022年 |
---|---|---|
電気代 | 11,376円 | 13,948円 |
ガス代 | 4,882円 | 5,427円 |
他の光熱(※) | 754円 | 1,005円 |
上下水道料 | 6,465円 | 6,196円 |
合計 | 23,477円 | 26,577円 |
引用:総務省統計局 家計調査 1世帯当たり1か月間の収入と支出/世帯人員・世帯主の年齢階級別
※灯油、石炭、薪、木炭、カードリッジ式ガスボンベ、ドライアイスなど電気代・ガス代に分類されない燃料・冷却製品のこと
2022年の1年間の金額として考えると、光熱・水道費は約32万円、光熱費に絞ると約24万円だった計算です。2022年は燃料費高騰などの影響で、2021年よりも電気代が大きく上昇しました。集合住宅よりも一戸建ての光熱費が高い傾向にあることを踏まえると、一戸建ての4人家族の光熱費は、この表の金額よりやや高くなる可能性があると考えてよいでしょう。
なお、後述するように、家計調査では家族の人数別に光熱・水道費を集計しており、「家族がふえると光熱費が高額になりやすい」という傾向がうかがえます。
この後は、4人家族の光熱・水道費に絞って詳しく見ていきます。
一番高いのは電気代
先に紹介した家計調査の表を見ると、光熱・水道費の中で一番高いのは電気代です。これは家庭での家電利用がふえているためだと考えられます。照明器具、冷蔵庫、エアコン、パソコン、テレビ、洗濯機などが一般的ですが、近年ではオール電化を導入する住宅もふえており、その場合は調理器具やお風呂の湯沸かしにも電気代がかかります。
家計調査の季節ごとのデータを見ると、1年間で特に電気代が高い季節は冬(1~3月)です。そこで、2022年の冬と夏(7~9月)で、4人家族の1か月の光熱・水道費を比較しました。
用途分類 | 冬(2022年1~3月) | 夏(2022年7~9月) |
---|---|---|
電気代 | 16,286円 | 12,922円 |
ガス代 | 7,119円 | 3,772円 |
他の光熱 | 2,056円 | 240円 |
上下水道料 | 6,236円 | 5,972円 |
合計 | 31,697円 | 22,906円 |
2022年1月~12月の月別の電気代は次の通りです。
年月 | 電気代(4人家族) |
---|---|
2022年1月 | 14,068円 |
2月 | 16,934円 |
3月 | 17,856円 |
4月 | 14,963円 |
5月 | 12,470円 |
6月 | 10,705円 |
7月 | 10,967円 |
8月 | 13,024円 |
9月 | 14,776円 |
10月 | 14,141円 |
11月 | 13,081円 |
12月 | 14,391円 |
引用:総務省統計局 家計調査 家計収支編 二人以上の世帯
冬はガス代も増加傾向にあることから、電気代とガス代を合わせると、夏よりも冬の方が光熱費の負担は大きいと言えます。夏よりも冬が高額になるのは、屋内と屋外の温度差が大きいからだと考えられます(地域差はあります)。
今後気に留めておきたいのは、2023年以降も電気代の値上げが続く可能性があることです。2023年初めには、東京電力や東北電力などの大手電力会社が値上げ方針を示しています。
電気代の値上げの主な原因として、以下のものがあげられます。
- ウクライナ情勢などによる資源価格(石炭や液化天然ガスなど)の世界的な高騰
- 火力発電所や原子力発電所などの休止・停止
- 為替レートの変化による輸入価格の上昇
いずれもすぐに解決できる問題ではないので、電気代上昇がすぐ沈静化することはなさそうです。
3人家族と4人家族の光熱・水道費の差は月920円
家計調査の結果を見ると、家族の人数が多いほど光熱・水道費は増加する傾向があります。2022年の具体的な金額を人数別に紹介します。
用途分類 | 単身 | 2人家族 | 3人家族 | 4人家族 | 5人家族 | 6人家族~ |
---|---|---|---|---|---|---|
電気代 | 6,808円 | 11,307円 | 13,157円 | 13,948円 | 15,474円 | 17,869円 |
ガス代 | 3,331円 | 4,900円 | 5,555円 | 5,427円 | 5,506円 | 6,156円 |
他の光熱 | 843円 | 1,600円 | 1,445円 | 1,005円 | 1,052円 | 1,232円 |
上下水道料 | 2,116円 | 4,229円 | 5,500円 | 6,196円 | 7,128円 | 9,033円 |
合計 | 13,098円 | 22,037円 | 25,657円 | 26,577円 | 29,160円 | 34,291円 |
引用:総務省統計局の家計調査「1世帯当たり1か月間の収入と支出/世帯人員・世帯主の年齢階級別」
光熱・水道費がかさむ理由として、以下のような要因が考えられます。
- 家族1人ひとりの生活スタイル(起床・就寝の時刻、テレビ視聴、入浴など)が異なると、総稼働時間が長くなる
- 子育ての期間は在宅時間が長くなり、1人や夫婦での暮らしと比べると電気を使う時間が長くなる可能性がある
- 家族が多いと居住する家も大きくなる傾向にあり、冷暖房や照明の範囲も広くなる
- 家族が多い分、家電の使用回数が多くなる
- 設置する家電が大型になり、必要な電力がふえる
- 子どもが電気や水道を無駄遣いする
家族とは家電やその他の設備を共有して使うとはいえ、使用頻度・時間・消費電力は確実にふえるでしょう。
一戸建てと集合住宅の光熱費比較 高額になる理由も解説
冒頭に紹介した電気・ガス料金調査の結果から、集合住宅と比較して一戸建ての光熱費が高額であるとわかります。では、なぜ一戸建てのほうが高くなるのでしょうか。4人家族の事情を参考にしつつ、一戸建ての光熱費が高額になる理由を解説します。
集合住宅のほうが気密性・断熱性が高い
構造上、一戸建てよりも集合住宅のほうが気密性と断熱性が高い傾向にあります。上下左右が隣家や別の部屋に囲まれており、室内の空気が逃げにくく、外気も入りにくいためです。
一戸建ては、屋根・壁が直接日光や雨にさらされやすく、外気の影響を受けやすい傾向があります。また、マンションなどと比べると隙間が多く、気密性は低いです。そのためどうしても空気の出入りが多くなり、冷暖房の効率が下がります。
一戸建ての床面積は広め
一戸建てと集合住宅を比較すると、一戸建てのほうが床面積が広く、部屋数が多い傾向にあります。住宅金融支援機構の「2021年度 フラット35利用者調査」によると、注文住宅の平均床面積は123.8㎡、一方でマンションの平均面積は64.7㎡でした。
住宅が広いと、冷暖房にかかるエネルギーや、必要な照明の数なども増加するので、どうしても電気代がかさみます。4人家族ともなると、快適に過ごすために必要なリビングはある程度の広さが必要ですし、さらに洗濯機や冷蔵庫、エアコンなどの家電も大きなものが必要になります。
使う部屋がふえて必要な家電の数もふえる
一戸建ては、集合住宅より部屋数も多い傾向があります。子どもに兄弟姉妹それぞれの個室を与えたり、夫婦もそれぞれの部屋に分かれたりすることで必要なエアコンやテレビなどの数もふえます。そのため、どうしても電気代が高くなるのです。
また、部屋が分かれるとそれぞれの生活スタイルの違いが大きくなりやすく、それも電気代がかさむ原因です。例えば、入浴時間がバラバラになることでお風呂の沸かし直しが頻繁に起こります。ひとつ屋根の下に昼型と夜型の生活リズムが混在することで、リビングの照明やエアコンの使用時間も長くなります。
資源エネルギー庁と一般財団法人日本エネルギー経済研究所の調査 によると、家庭における家電製品の1日の電力消費は、エアコンが約3割、照明が約1割、給湯が約1割(冬季は多め)を占めています。消費電力が大きい家電を家族がバラバラに使うと、その分だけ大きな電力消費につながることがわかります。
一戸建てのほうが電気代の基本料金が高い
電気代の基本料金は、契約アンペア数に応じて高くなります。一般的には一戸建てのほうが使用する電化製品が多くなり、契約アンペア数も大きくなります。東京電力の契約アンペア数ごとの基本料金(関東エリア・スタンダードSプラン)は次の通りです。
契約アンペア数 | ひと月あたり基本料金 |
---|---|
10 | 295.24円 |
15 | 442.86円 |
20 | 590.48円 |
30 | 885.72円 |
40 | 1,180.96円 |
50 | 1,476.20円 |
60 | 1,771.44円 |
引用:東京電力 現在のご契約アンペアの確認方法
自宅がどのアンペア数で契約しているかは、原則としてアンペアブレーカーの色や数字で判断できます。電力会社によって色や数字は異なるので、一度確認してみてください。
一戸建てで光熱費を節約するコツは?
一戸建てで光熱・水道費を節約する方法として、「高気密・高断熱住宅にする」「電力会社・ガス会社や契約プランを見直す」「家電の使い方を見直す」「節水を意識する」「省エネにつながる設備やアイテムを購入する」の5つがあげられます。一戸建てで持ち家の場合、自由で大胆な節約術を活用できるかもしれません。それぞれの方法を見ていきましょう。
高気密・高断熱住宅にする
高気密化とは住宅の隙間をなくし、空気の入れ替わりを少なくすることです。高断熱化とは屋根や壁に熱を伝わりづらくし、熱の出入りを少なくすることです。これらをともに住宅に施せば冷暖房の効率が上がり、光熱費の節約につながります。
高気密・高断熱住宅に住む方法は次の通りです。
- 新築時に気密・断熱性能の強化をプランに入れる
- 中古住宅の購入時に、住宅の構造や気密・断熱性能をチェックしておく
- 断熱リフォームを施して断熱性を高める
- 気密性・断熱性が優れている窓・サッシを取り入れる
省エネ住宅の新築や断熱リフォームは、国や自治体の補助金の対象になる可能性があります。補助金も利用しながら、高気密・高断熱住宅の新築や取得、リフォームを検討してみてください。
電力会社・ガス会社や契約プランを見直す
2016年4月1日以降は電力自由化により、すべての消費者が電力会社や料金メニューを自由に選択して契約できるようになりました。現在契約中の会社やプランが適切かどうか見直すことも、光熱費を節約するコツの1つです。次のポイントを意識してみてください。
- 従量課金タイプと定額タイプのいずれが向いているか
- 契約しているプランのアンペア数はいくつか
- 他の公共・通信サービスとまとめて契約できるか
- 夜間の電力使用量が多い人は、夜間・深夜の電気料金が少なくなるプランにしているか
家電の使い方を見直す
自宅で使用する家電の使い方を見直すことで、光熱費を節約できます。家電の無駄遣いや、高負荷となる運転は避けるようにしましょう。家電ごとの主な使い方は次の通りです。
家電の種類 | 光熱費節約につながる使い方 |
---|---|
エアコン | フィルターを掃除する、頻繁なスイッチオンやオフを避ける、室外機の周りを整理して排熱をスムーズにする、風量を自動にして冷やしすぎや温めすぎを避ける |
冷蔵庫・冷凍庫 | 冷蔵庫は食品の詰め込みを避けて熱交換の効率を上げる、冷凍庫は食品を詰めて入れ食品同士で冷やし合うようにする、扉の開閉を減らす、温度設定を適切に調節する、温かいままの食品を入れない |
照明 | LED電球に交換する、点けっぱなしを避ける |
洗濯機 | 風呂の残り湯を活用する、縦型洗濯機なら重いものを下・軽いものを上にする、できるだけまとめて洗う |
資源エネルギー庁などの調査においても、上記家電の消費電力や、ほかの家電も含めた待機電力は大きな割合を占めています。子どもにも無駄遣いをしないよう伝える、待機電力はできる限りカットするなど、家族全員で工夫することが大切です。
節水を意識する
水道代は、電気代に次いで支出額が多い項目です。光熱費に加えて水道代を節約しましょう。また、節水を心がけることでお湯の使用量も減ることが多いので、間接的に電気代・ガス代の節約にもつながるでしょう。
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省エネにつながる設備やアイテムを購入する
省エネにつながる設備やアイテムを購入・活用すれば、生活スタイルを変えなくても光熱費を節約できるでしょう。節約につながる設備・アイテムには次のようなものがあります。
- エコ家電
- 遮光・遮熱カーテン
- 間仕切りカーテン
- 保温性の高い寝間着
- スイッチ付き節電タップ
- 人感センサー付きのLED照明
家族みんなで光熱費を見直し、余裕ある生活を!
4人家族の光熱費は月々2万円弱、水道代も合わせると3万円弱かかります。特に一戸建ては気密性・断熱性が低いことが多く、家が広いことも影響して、集合住宅よりも光熱費が高額になる傾向があります。
光熱費を節約するには、住宅の気密性・断熱性を高めたり、エネルギー会社やプランを見直したりするなどの恒久的な対応が効果的です。また、家電の使い方や設備・アイテムの導入などを意識すると、さらなる節約につながります。光熱費を抑えて、余裕ある生活を実現しましょう
▼参考資料
- 電気の料金プラン一覧(東京電力)
- 2021年度 フラット35利用者調査(住宅金融支援機構)
- 家計調査(総務省統計局)
- 電力の小売全面自由化とは(経済産業省 資源エネルギー庁)
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号