住宅ローン金利、日銀総裁交代でどうなる?
2023年4月に日銀総裁が任期満了を迎え、交代します。金融政策が大幅に変わるのではないかと噂されていますが、これまで低水準を維持してきた住宅ローンの金利にはどのような影響があるのでしょうか。今後の見通しを解説します。
住宅ローンの金利はどのように決まる?
住宅ローンの金利には、一定期間利率が変動しない「固定金利」と、定期的に利率が見直される「変動金利」の2種類があります。
固定金利は長期金利に連動するのが一般的で、変動金利は短期金利に連動するのが一般的です。長期金利は日銀が国債を買い入れることによってコントロールされており、短期金利は日銀が決定する政策金利(現在は−0.1%)を指標として決定されています。つまり、日銀の金融政策次第で、住宅ローンの固定金利や変動金利のおおよその目安は変わってくるのです。
日銀総裁が変わると金融政策が変更される可能性も
日銀の総裁は内閣によって任命され、その総裁の意向が金融政策に反映されます。これまでは安倍政権下におけるアベノミクスの目玉として2013年4月から「異次元緩和」と呼ばれる政策を推し進めてきました。この政策の目的は消費者物価の対前年上昇率を2%にすることです。
ところが、2022年12月時点で消費者物価指数は4%にまで上昇しています。当初の目的を達成していることも含めると、今後政策を転換する可能性は高まっていると言えそうです。
住宅ローンの金利は今後上昇するリスクあり。対処法を考えておきましょう
そもそも現在の物価上昇の主な原因は、ロシアのウクライナ侵攻による世界的なエネルギーの供給不安や、円安による輸入品価格の上昇によるものです。本来、政府が想定していた「賃金アップにより需要が増加し、物価上昇につながる」といった前向きな物価上昇とは異なります。この状況下で利上げに踏み切った場合、企業の投資は抑制され、経済活動が鈍化し不況につながる可能性があります。そのため、総裁が交代しても金融緩和政策を変える可能性は低いといった見方もありました。
しかし、2022年12月20日に、これまでの金融政策を転換するかのような動きがありました。長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.5%程度に拡大するとの方針が発表されたのです。この背景には、欧米各国でインフレ抑制を目的とした利上げが続いていることが挙げられます。欧米各国と比べて、相対的に金利の低い日本円が売られて円安が進むことにより、輸入品価格が上昇していくといった負のスパイラルに対して危機感を感じたのかもしれません。
このような状況を踏まえると、総裁が交代したあとに大幅に政策が変更され、利上げが加速するリスクについても考えておかなければならないでしょう。利上げが進めば、住宅ローンの金利は上がる可能性が高まります。
しかし、住宅ローンを借りている多くの人にとって、すぐに影響が出ることは考えづらいでしょう。というのも、住宅ローン利用者の多くは変動金利を選択しており、変動金利には「5年ルール(※1)」や「125%ルール(※2)」があり、急に返済の負担が増えることは考えづらいからです。
※1 5年ルールとは、適用金利が引き上げられた場合でも毎月の返済額が5年間は固定される取り決めのこと。返済額に占める元金と利息の割合は変わる。
※2 125%ルールとは、適用金利が大きく引き上げられ返済額が見直しされる場合であっても、変更後の返済額を変更前の返済額の125%以内に抑える取り決めのこと。
ただし、長期的に見れば、金利が上昇すると支払い総額は着実に増加していきます。過去には変動金利で8%程度の利率となっていたこともあるため、今後の上昇幅については注意が必要です。必要に応じて家計の見直しや繰上げ返済、借り換えなども検討しましょう。
▼参考資料
- 各国政策金利表(マネックス証券)
- 日本銀行について 総裁:黒田東彦(くろだはるひこ)(日本銀行)
- 金融/証券用語集 異次元緩和(auカブコム証券)
- 2020年基準消費者物価指数 全国 2022年(令和4年)11月分(総務省)
- 総裁定例会見(12月20日)(日本銀行)
- 住宅ローン利用者の実態調査結果(2022 年4月調査)(住宅金融支援機構)
- 住宅ローン用語集 5年ルール、125%ルール(楽天銀行)
- 民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)(住宅金融支援機構)
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号