眞鍋かをりさん「誘惑にはすごく強いタイプ」芸能界で身につけた普通の感覚で人生100年時代をサバイバル
前編に続き、女優・タレントとしてマルチに活躍される眞鍋かをりさんのライフデザインについてお聞きしました。昨今は、一児の母として児童虐待防止の活動などにも精力的に取り組み、新しい挑戦を続けられています。「誘惑にはすごく強いタイプ」と語る眞鍋さん。競争の激しい芸能界で今も活躍できるのは“普通の感覚”を大事にしてきたからだと言います。後編では、自分らしく暮らすための信念や、人生100年時代の生き方について伺いました。
過去を振り返ると「運が良かった人生」だと思う
――今までを振り返っていただいて、一言で表すならどんな人生だったと思いますか?
眞鍋かをり:めちゃくちゃ運が良かった人生ですね。今振り返ってみると、当時は気がついていませんでしたが、改めて考えると「危なかった!」みたいなシーンがたくさんありました。よくここまで大丈夫だったなって思っています(笑)。
――へこたれたり、諦めたりしなかったということですか?
眞鍋かをり:そうですね。これまで行き当たりばったりでやってきましたが、そういう中でもまわりを見て、自分なりにサバイバルしていたからだと思うんです。「もしかしたらこうなるかもしれないから、今はもっとこうした方がいいな」って先回りして考えたり。自分のやりたいことや、信念で突き進んできたというよりは、その都度、まわりを観察して、ちゃんと自分で考えて行き先を選んでこられたのかなという気がしています。
――周囲から求められることを一生懸命やってきたというのが、今のお仕事にもつながっているんでしょうね。
眞鍋かをり:おっしゃる通りだと思います。芸能界には才能があって輝いている人、自分の意思や、やりたいことが明確にある人が集まっているので、そうじゃない自分に悩んだ時期もありました。ディレクターさんの意図を汲み取って、自分が思っていないことを言ったりすると、その方からはすごく感謝されるんですけど、見ている人からは批判されたりすることもあって。それがつらいなと思って悩んだ時期もあったんですけど、そうやってここまで生きてきたんだから、もうしょうがないかって(笑)。結果、私の生き方でやってきてよかったなって前向きに思えるようになりました。
眞鍋かをり:身の丈に合わないことはしないってことですかね。誘惑にはすごく強いタイプだと思います(笑)。こういう派手な世界にいると、いろいろな誘惑があるんですけど、それには絶対に乗らないです。両親もすごく堅実なので、いまだに仕事の移動で交通機関のワンランク上のシートに乗せてもらうと、申し訳ない気持ちになりますね。それは親からの大切なプレゼントなんだって。芸能界で生きていくって決め切らなかった分、普通の感覚をもち続けられたのかもしれないです。
――お話を伺ってみて、眞鍋さんはバランスがとれているのかなと感じたのですが、眞鍋さんにとって“幸せ”ってどういう状態のことだと思いますか?
眞鍋かをり:そうですね、今は人間関係がすごく居心地がよくて満ち足りています。あとは健康があれば、たぶんすごく幸せに暮らしていけると思っています。物欲もそんなにないですし。暮らしはシンプルでいいので、たまに旅行ができて、友達や家族と仲良く暮らせたらすごく幸せかもしれません。自分的には満足してるし、もし今よりもお金をかけずに暮らしていかなきゃいけなくなっても、たぶん私は幸せだろうなと思います。そういう思いが、いまの安心感とか心のバランスにつながっているんだろうなって感じています。幸せの価値感って人それぞれ違いますけど、私の中では「物」がそれほど重要ではなくなってきていて、自給自足の生活でも全然大丈夫な気がしています(笑)。
正解は一つではないけど、私たちにもアクションはできるから
――今後力を入れてきたいことについてもお伺いしたいのですが、2018年から犬山紙子さんたちと児童虐待防止についての活動をスタートされました。これはどのような経緯で始められたんですか?
眞鍋かをり:犬山さんをはじめ、もともと仲の良かった子たちがお母さんになったタイミングだったんです。当時、テレビなどで虐待のニュースが連日のように報道されていて、何か一緒にできないかなという話をしたのがきっかけでした。でもいろいろ勉強していくうちに、虐待防止に取り組む専門家の方々の中でもそれぞれ考え方の違いがあって、正解が見えなくなってしまったんです。
――ケース・バイ・ケースで、一概に決められるものではないということですね。
眞鍋かをり:それで、私たちでもできることはなんだろうって考えて。じゃあ、たまたまこういう発信する仕事をしているから、唯一、目立つことはできるんじゃないかという結論になりました。「私たちが動くことで、みんなにアクションを起こしてもらうきっかけを作ることはできるよね」という感じで、最初はみんなからメッセージを集めて厚生労働省に届けるという活動をしたんです。今では、そうした発信が活動のメインになっています。
――その活動をはじめられたことで、ご自身の中で変化はありましたか?
眞鍋かをり:すごく難しい世界だなと思いました。自分のなかの考え方で「こういうのが子どもの幸せだ」と決めつけてしまっていた部分が当初あったのですが、100の家庭があったら、100のケースがあって、それぞれの境遇や環境は違うので、「何がその子の幸せなのか」は部外者の私たちには決められないんですよね。みんな、よかれと思ってやっているんだけど、その子にとっては違ったり。身体的な虐待を受けているなら、そんなひどい親からは引き離した方がいいって短絡的に考えてしまっていたのですが、いろいろなケアやアプローチによって改善するのであれば、家庭に戻れるのかもしれないし、やっぱり里親さんに預けた方がいいのかもしれない。正解が一つじゃないっていうのは、本当に難しいです。
眞鍋かをり:私たちの間で合言葉になっているのが、まず「みんな、自分の家庭を第一に考えようね」っていう言葉で。この活動をしてちょっとでも心がつらくなったり、嫌な気持ちになるようだったら、自由に休んで構わないからって言っています。やっぱり自分の心に余裕がないと、なかなか人のことをわかってあげられないと思うんです。
――確かにそうですね。
眞鍋かをり:自分の家庭に目を向けつつ、まわりにもいろんな家庭があって、それを自分の物差しだけで測らず気をつけ合うというだけでも、社会のためになるんじゃないかなと思うんです。もちろん、児童虐待防止のために活動している方たちがクラウドファンディングなどを行っていたりもするので、そういうところから支援するのも一つの方法だと思います。
――人のために動くためには、まず自分が満されているというのが大事なわけですね。この活動以外でも、何かこれからトライしてみたいことはありますか?
眞鍋かをり:全然話が変わってしまうんですけど、子どもが大きくなったら将来的に外国に留学することがあるかもしれないので、そういうときに自分も一緒に行って何か新しく勉強する機会があればいいなと思っています。実は、一度海外で暮らしてみたいという気持ちがあったので、2、3年前から毎日コツコツ英会話の勉強を続けています。本当に少しずつですけど、この2年間でスコアが伸びてきたので、このまま続けていきたいです。あとは、去年から着物を着るようになったんですけど、子どももそういうのが好きなので、着付けを覚えさせて、ゆくゆくは一緒に和の習い事ができたらいいなと思っています。
トライ&エラーの“エラー”にも価値を見出して
――今後の人生設計についてもお聞かせください。近年、「人生100年時代」と言われていますが、そのための対策や準備はされていらっしゃいますか?
眞鍋かをり:将来に備えていくら蓄えておかなきゃとか、こういうふうに資産を残しておこうとかっていう具体的なことではないのですが、若い頃からずっと思っていることがあって。自分の収入に対して、身の丈にあった生活をするというか、「こんな感じなら大丈夫だろう」というラインで生きるということです。一人暮らしで犬を飼い始めたときもそうだったんですけど、日常にかかる費用や、ホテルに預けたりする費用も年間でどのくらいかかるのかを計算して、犬の寿命はだいたい何年だからって考えて、トータルで最大これくらいかかるだろうなってプランを立てていました(笑)。それで、よし、これなら大丈夫!となってから飼い始めたんです。
――そこまで考えられたんですね!
眞鍋かをり:そうですね。自分にとって一番パフォーマンスのいい生活を選ぶのが、すごく大事なことだと思っています。
眞鍋かをり:どうしても不安はあると思うんですけど、20代や30代だったら、まだ全然トライ&エラーのエラーにも価値がある年代だと思うんです。私もいろいろやって失敗したこともあるし、それで落ち込んだこともあります。でも失敗して、そこから何か学べることがあったら、エラーにも価値を見出せると思うんです。そう思えたら、失敗することも怖くなくなるんじゃないかなと思っています。
だから、どうやって失敗の中に価値を見出すかが大事ですよね。たとえば、投資とか転職とか、自分が将来のためになると思ってやったことがいい結果にならなくても、そこから学べたことっていうのは絶対にプラスになりますから。それに、一度失敗したら、次は失敗したくないと思うから勉強するようになりますし。だから、20代30代のうちは、どんどんトライ&エラーしてもらいたいですね。
・取材/文:末光京子
・撮影:枝松則之
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