管理職になりたくない人が8割?昇進の円満な断り方を解説します!

管理職への昇進を打診されても、実は「なりたくない」と感じている人が増えている様です。
最近の調査では、なんと約8割の人が「管理職になりたくない」と答えています。その理由は、「多忙な業務や責任を担いたくない」、「プライベートの時間が奪われることは回避したい」など、さまざまです。
一方で、昇進を断ることに対するプレッシャーや、断る際の適切な伝え方に悩む人も少なくありません。
そこでこの記事では、昇進を断る理由や、そのメリット・デメリット、さらに職場での人間関係を保ちながら、円満に断る方法を解説していきます。
「昇進を断るなんて難しそう…」と感じている人も、この記事を読めば、具体的な断り方の事例や、昇進だけでないキャリアの築き方についてヒントを得られるはずです。
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昇進を望まない理由
日本能率協会マネジメントセンターのインターネットによる管理職のアンケート調査(2023年4月)によると、約77.3%が「管理職になりたくない」と回答しています。
同社が2018年に行った調査では「管理職になりたくない」と回答した人は約72.8%だったことから、この傾向は近年強く表れていると言えます。
それでは、多くの人々が昇進を望まない背景には、どのような要因があるのか、理由を6つみていきましょう。
理由1. 自分は管理職に向いていないと感じる
日本能率協会マネジメントセンターの調査によれば、管理職になりたくない理由として最も多かったのは「自分は管理職に向いていないから」(46.6%)という回答でした。この心理は、自己評価や自信の欠如から来るものであり、昇進をためらう大きな要因となっています。
周りからは評価を受けているにも関わらず、自己評価が低い人には次のような特徴があります。
- 基本的にマイナス思考
- 反省の弁が多い
- 成功しても周りのおかげだと謙虚に振舞ってしまう
このことから考えると、自分を犠牲にすることで、周りとの摩擦を避けるように仕事をしている人は結果的に自己評価も低くなりがちだと言えるでしょう。このような人間関係のストレスに晒されることを避けたいと考える人が増えているのかもしれません。
理由2. 責任の重さに対する不安
管理職になることで、部下の指導やチーム全体の成果に対する責任が増すことに、不安を感じる人もいます。個人では高い業績を上げていた人も、チーム全体で成果を上げるためには異なったスキルが必要になってきます。例えば次のようなスキルです。
- 対立した複数の人の意見を取りまとめる
- メンバーの個性を理解して最適な役割を与える
- 会社のビジョンを伝え、メンバーに具体的な目標を設定させる
このようなスキルを磨くためには時間がかかり、自分自身の仕事スキルを磨く時間が減ってしまうこと、またメンバーのミスを背負わなければならない場面も出てきます。こうした環境を避けたいという心理が、昇進を望まない理由となっています。
理由3. 私生活との両立が難しい
管理職になると責任が増し、業務量も増加するため、育児や家事、介護などとの両立が困難になると感じる人が多いようです。特に、育児中の女性はその傾向が強く、管理職になることで家庭生活に支障が出るリスクを懸念しています。
例えば、プロジェクトを進める中で、メンバーが体調不良で仕事から離脱したとします。しかし、急には人員の補充ができないケースも出てきます。このようなケースでは、他のメンバーで業務を分担する必要が出てきますが、場合によっては管理職自身が自分で業務の穴埋めをしなければならないことがあるかもしれません。
そうなると、チーム全体の成果に責任を負う中で、家庭を犠牲にする機会が増えてくるのではという心配が出てくるのです。これは当然のことではないでしょうか。
理由4. 管理職への成長機会の不足
管理職に必要な経験やスキルを積む機会が提供されていないと感じる人も多いようです。その結果、昇進に対して自信を持てず、出世を望まない理由となっています。
特に若い年代で管理職に抜擢されると経験不足から困惑してしまう人も多いと思われます。今の日本の人口構造においては、若い人が管理職になると、部下に年上の人が来るケースも出てきます。経験豊富な年上の人に、どのような姿勢で関わっていけばよいのかがわからず、ストレスにつながることもあるのです。
理由5. 男性中心の職場文化への抵抗感
マンパワーグループ株式会社の調査によると、企業における管理職の男女比率は、「男性8割以上」が半数以上となっています。女性管理職が増えてはいるものの、役員から管理職までの職場文化はまだまだ男性中心で構成されているといえるでしょう。
「管理職以上のポジションは男性中心で閉鎖的な環境である」と感じる人もいて、そのような文化に対する抵抗から昇進を望まない心理が働くこともあるようです。
理由6. 評価や給与に対する不満
管理職になっても給与が大幅に増えない、あるいは残業代が支給されなくなるなど、評価や報酬に対する不満が昇進を望まない理由となっていることもあります。
いわゆる「割に合わない」というケースです。会社や仕事に求める対価が金銭だけになりつつあるのかもしれません。
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昇進を断るメリットとデメリット
昇進を断ることには、良い面と悪い面の両方があります。それぞれを理解したうえで、自分のキャリアプランや価値観に合った判断をすることが重要です。ここでは、メリットとデメリットの両面をみていきましょう。
昇進を断る4つのメリット
メリット1
仕事量や責任がコントロールしやすく、プライベートの時間を確保できます。家族や趣味、自己成長のための時間を大切にすることができます。
メリット2
管理職の仕事である人間関係の調整や、プレッシャーがかかりません。また自身のメンタルをコントロールしやすくなります。
メリット3
現場でのスキルに磨きをかけ、専門性を高めることに集中できるため、今後のキャリアプランにおいて自身の市場価値を高められるかもしれません。
メリット4
あえて昇進を断ることで、別の部署への異動や転職など、キャリアの選択に幅を持たせられます。
昇進を断る4つのデメリット
デメリット1
管理職になることで得られる昇給など、金銭的な恩恵を逃す可能性があります。
デメリット2
昇進を断ることで「会社の命に背く人」という印象がつき、今後の会社内でのキャリアアップが難しくなる可能性があります。
デメリット3
管理職を経験することで得られる学びや経験は、長い人生において貴重な体験になりえます。その機会を自ら失ってしまうケースもあります。
デメリット4
管理職であるということは「ひとつの会社から認められた」という証跡でもあります。その評価が転職等で有利に働くケースもある中で、その立場を手放すことになります。
円満な断り方のポイント
先に挙げた通り、管理職への昇進を断るには良い面も悪い面もあります。「どうしても断らざるをえない」場合には、どのような点に気を付ければよいでしょうか。
管理職への昇進は、一般的に担当の上司が推薦し、人事部門や役員などが話し合って決定していきます。推薦する上司にも熱い想いがあり、これまでの業績や勤務態度から昇進を判断していることでもあるため、抜擢されること自体は非常に名誉なことです。だからこそ、昇進を断ることは簡単ではないのです。
適切な方法、伝え方に工夫を加えることで、推薦してくれた上司に迷惑をかけず、円満に辞退することを目指しましょう。では、具体的なポイントをみていきます。
❶ 昇進のお礼とともに誠意を持って伝える
自分を昇進させる決定をしてくれた上司や会社へ感謝をしっかり伝えましょう。その後の人間関係を崩さないよう、誠意をもって感謝を伝えることが大切です。
❷ 自分の意思を明確にする
自分がなぜ昇進を望まないのか、その理由を明確に伝えましょう。たとえば、家庭の事情や現在のキャリア目標との不一致など、正直で納得感のある理由を用意することが重要です。
❸ タイミングを見極める
昇進を断る場合は、正式に話が来たタイミングで直属の上司へ伝えることが大切です。断るタイミングが早ければ、他の人に昇進の機会を譲ることもできますし、会社も想定していた組織体制を大きく変えずに済みます。先延ばしにせず、迅速に対応することが信頼につながります。
❹ ポジティブな伝え方を意識する
「自信がない」「この会社で上位の役職に進みたくない」といった否定的な表現は使わず、前向きで建設的な伝え方を心がけましょう。
❺ 代替案や貢献の意思を示す
昇進を断るだけでなく、自分がどのように会社やチームに貢献できるかを提案することが重要です。例えば「現場の仕事に100%の力を向けることで貢献したい」などです。
❻ 事前に準備する
話し合いの前に、自分の考えを整理し、伝える言葉を選んでおくことが大切です。場合によっては、メモを作成しておくと安心です。また、パートナーに断るための練習相手になってもらうのも良い準備になります。
断り方の実践例
「円満な断り方のポイント」で挙げた通り、昇進を辞退する際には、相手に失礼にならず、関係を維持するための適切な伝え方が重要です。
ここでは具体的な話法例を3つご紹介しますので、参考にしてみてください。
キャリアプランを理由にする話法
ご期待いただきありがとうございます。今回の昇進のお話、大変光栄に思っています。ただ、現在の私のキャリアプランとして、現場のスキルをさらに深めたいという目標がございます。もう少し今のポジションで専門性を高めることに集中したいと考えています。このようなお話をいただけたことに感謝しつつ、今後も貢献できるよう努めます。
プライベートの事情を理由にする話法
昇進のお話をいただき、ありがとうございます。現在、家庭やプライベートの事情で自分自身の時間が必要な状況にあります。そのため、管理職の責任を十分に果たせる自信が持てないと感じています。大変心苦しいのですが、今回はお断りさせていただきたいです。今のポジションで引き続き全力を尽くし、会社に貢献していきたいと思っています。
他者への推薦を含めた話法
このような重要な役割に推薦していただき、ありがとうございます。ただ、私は現状、自分の能力が管理職の責務に完全に見合っていないと感じております。これまでご指導いただいたことには感謝しており、ぜひ○○さんのような方が適任かと存じます。このポジションで力を発揮する準備が整った際には、改めてご相談させていただければ幸いです。
キャリアプランの再構築
今回の決断において、管理職の道を選ばないからといってキャリアが停滞するわけではありません。むしろ、より自分に合ったキャリアプランを見つけるきっかけとすることで、充実した働き方を追求することができます。
そこで、具体的な見直しプランをいくつかご紹介します。
専門スキルを更に磨くプラン
より専門性を高める道を選ぶ選択です。例えば、ITエンジニアやデザイナー、研究職など、特定のスキルを極めることで、市場価値を高めることができます。
これまでと異なる新しい業界へ飛び出すプラン
現在の業界や職種から離れて、新たな分野への挑戦を検討するのも良いでしょう。特に若い人にとっては、新たな経験を積むことは、視野を広げられるチャンスでもあります。
フリーランスや起業を目指すプラン
管理職の昇進を断ることで得た時間やエネルギーを、独立や起業に向ける選択です。特に、自分の得意分野で活躍したい人には最適なキャリアプランです。起業は大きな挑戦ですが、自由度が高く、将来の選択肢をさらに広げることができます。
昇進を断るという選択肢とその先の道
今回は管理職への昇進を望まない理由から昇進を断るメリット・デメリット、円満な断り方の方法まで幅広く解説しました。
日本では特に、管理職に対するネガティブなイメージや心理的負担が大きく、約77.3%もの人が「管理職になりたくない」と回答しています。その背景には、自己評価の低さや責任の増加に対する不安、家庭との両立の難しさ、さらには職場文化や報酬体系の問題など、さまざまな要因が関与しています。
昇進を断ることには、プライベートの充実や専門スキルの向上といったメリットがある一方で、キャリア停滞や報酬面での損失などのデメリットも伴います。そのため、昇進を辞退する際には、自分の価値観やライフプランに基づき、慎重に判断することが重要です。
さらに、昇進を断る際には、上司や会社との関係を円満に保つため、感謝の気持ちを伝えつつ、正直で納得感のある理由を明確に伝えることがポイントです。これにより、信頼を損なわずにキャリアの選択肢を広げることが可能となります。
そして今後のプランを考えた結果、「昇進を断る」という選択が最適解ということもあるかもしれません。その際、「昇進を断る」ことは、キャリアの停滞ではなく、自分の人生をより充実させる選択肢の一つだと捉え、キャリアを見直すきっかけにしていきましょう。
また、今後のキャリアプランを考える上で不可欠なことは、マネープランニングやライフプランニングとセットで考えるということです。どこかでリスキリングをするにしても、学び直すための資金を用意していなければできません。マネープランとライフプランをセットで考えることで、キャリアプランはより実現性を持つことになるのです。
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▼参考
管理職の実態に関するアンケート調査
出典:日本能率協会マネジメントセンター「管理職の実態に関するアンケート調査」
管理職の男女比率
出典:日本マンパワーグループ「企業における管理職の男女比率「男性8割以上」が半数以上。女性活躍推進の課題と、社員の不満とは?」