卒婚した後の生活費は?離婚との違いやメリットとデメリットを解説
近年、「卒婚」という言葉が注目を集めています。「卒婚」とは、夫婦関係を終わらせる「離婚」とは異なり、法的な婚姻関係を解消せず、夫婦それぞれが独立した新たな生活をスタートさせるという選択肢です。
しかし、卒婚を選んだ後の生活費や、実際にどのようなメリット・デメリットがあるのか、具体的なイメージが湧かない人も多いのではないでしょうか。
この記事では、卒婚とは何か、離婚との違いを解説しつつ、卒婚後の考慮すべき生活費や準備事項、そしてメリットとデメリットについて詳しくご紹介します。
パートナーとの新しい関係を築くために卒婚や離婚を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
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卒婚とは何か?
「卒婚」とは、法的には婚姻関係を維持しつつ、夫婦が互いに独立した生活を選択することを指します。つまり、離婚はしないが、夫婦が共同生活を解消し、それぞれの自由な人生を歩む形態です。まず、この言葉の由来や定義、離婚との違いをみてみましょう。
卒婚の定義
「卒婚」という言葉の由来は、「結婚生活から卒業する」という意味合いから来ています。
卒業という言葉の中には、これまでの結婚生活を肯定し、これからも婚姻関係を維持しながら前向きに歩んでいこうというポジティブな姿勢が見えてきます。
この言葉は2004年に出版された「卒婚のすすめ(杉山由美子著)」で使用された造語です。様々な人々の人生後半の生き方を、著者が取材していく中で浮かび上がった新しいライフスタイルです。
人生後半といえば結婚生活を始めて20年から25年の時期、つまり年齢的に50歳を過ぎるあたりであり、人生の折り返し地点ともいえる時期です。子どもが独立して、新たなライフスタイルを確立していく時期でもあります。この時期に多くの人が人生の後半に向けて「パートナーとの関係を見直したい」「心地よい生活環境を築きたい」と考えます。
これまでは新たな生活というと「離婚」が選択肢の大半を占めていました。しかし、離婚という選択をすると、生活費の不足やお互いの家族との関係性、子どもへの影響など不安な要素が出てきます。そんな中、「卒婚」はこれまでの「離婚」「家庭内別居(家庭内離婚)」とは異なる、新しい選択肢を示してくれるのではないでしょうか。
卒婚と離婚との違い
卒婚と離婚の大きな違いは、法的な婚姻関係が継続するか、終了するかという点です。
卒婚は、離婚という形は取らずに、これまでの夫婦関係を見直して前向きにそれぞれの生活を送ることであるため、法律上は夫婦のままであり、婚姻関係は継続します。
一方で離婚は、法的に婚姻関係を終了させる手続きのため、財産分与や受け取れる年金額、その後の社会保障等に多大な影響を及ぼします。
卒婚と家庭内別居との違い
卒婚は夫婦が同じ家に住み続けながら、別々の生活を営む状態のことを指す点で、家庭内別居とスタイルは似ています。
卒婚と家庭内別居との違いは、婚姻関係の継続を双方が望んで合意しているのか、それとも将来的に婚姻関係が解消される方向に向かっているのかという点にあります。
卒婚は夫婦が話し合って、婚姻関係は積極的に継続させていくという状態です。一方、家庭内別居は稀に関係が改善されることもありますが、基本的には婚姻関係が解消される可能性が高く、離婚の一歩手前の状態と捉えられます。
卒婚が注目される背景
卒婚が注目される背景として、そもそも熟年の離婚が増えているという状況があります。熟年離婚の増加から、離婚の難しさ、そして卒婚が注目されている理由を解説していきます。
増えている熟年離婚
厚生労働省の2022年「人口動態統計」によると、離婚全体件数は17万9099組で減少傾向にあります。ピークだった2002年の28万9836組からなんと約38%も減少しています。
しかしながら、離婚した件数を同居していた期間別で見ると、同居期間20年以上で離婚が成立した割合は2002年の15.7%から2022年の21.8%に増加しています。
このグラフから分かるように、同居期間20年以上の、いわゆる熟年離婚は増加傾向となっているのです。
同居期間20年以上というと、時期的には子どもの成人時期と重なってきます。子どもが成人するのを待って離婚に踏み切るケースが多いのかもしれません。先述したように、人生の折り返し地点で、人生の後半に向け「パートナーとの関係を見直したい」「心地よい生活環境を築きたい」と考えた結果だといえるでしょう。
熟年離婚には問題も多い
熟年離婚には経済的、精神的な問題と共に世間体を守れないなどの、様々なハードルがあります。そこで、それぞれの問題を確認してみましょう。
【経済的な問題】
総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年 家計の概要」から、二人以上の世帯のうち退職世帯の家計(世帯主65歳以上の無職世帯平均)の毎月の収支を見てみましょう。
実収入が255,973円(夫婦の年金収入等)に対して、消費・非消費支出が286,176円となっています。つまり、世帯主65歳以上の無職世帯では、消費・非消費支出に対して、実収入だけでは毎月約3.0万円不足していることになります。
このように夫婦合わせた年金収入ですら、老後生活に不足が発生する状況です。離婚して別世帯を持ったとすると余計に生活は厳しくなることが想定されます。
特に専業主婦(夫)の場合は老齢基礎年金が老後収入のベースになるため、更に厳しい生活が予想されます。そこで熟年離婚する場合に大切なことは、長年夫婦で築いてきた資産をどのように分けるかという点になります。
夫婦で共に築いた財産の分割は非常に複雑です。自宅や現預金、有価証券や生命保険などの分割と同時に、専業主婦(夫)の人であれば年金分割も重要な手続きの一つです。
年金分割には2つの方法があり、それぞれ「合意分割」「3号分割」と呼ばれます。
「合意分割」は夫婦間で合意して、年金の分割割合を決めるもので、最大50%まで分割が可能ですが、この合意を成立させるにはいろいろな障壁もあります。夫婦間の話し合いだけでは合意に至らずに、弁護士の関与が必要になることも多く、円満に進まないことも少なくありません。
もうひとつの「3号分割」は、夫(妻)が会社員や公務員で妻(夫)が専業主婦(夫)だった場合、妻が第3号被保険者として保険料を支払っていない期間の年金を強制的に50%に分割する制度です。2008年以降に離婚した場合に適用されることとなりましたが、対象期間は2008年4月以降の年金分に限定されているため、それ以前の期間については分割できません。
離婚後の生活費の基盤となる公的年金の分割の難しさを考えると、一人で生活できるだけの経済力がない限り、離婚に不安を感じる人も多いはずです。
【感情的な問題】
長い年月を共に過ごしてきたパートナーとの別れは、感情的にも大きな負担になります。
子どもの独立や退職など、人生の転機が近づいている時期は、将来に対する不安や孤独感が高まります。また、相手に対する長年の不満や失望が離婚を引き起こす一方で、別れること自体が大きなストレスになることもあります。
人の感情は難しいもので、相手から離れたいと思って別れたものの、実際に別れてしまうと思わぬダメージを受けることがある様です。
【世間体の問題】
離婚後に、周囲からの視線や批判に苦しむこともあります。最近は離婚自体が珍しいことではなくなっているものの、世代的にもまだまだ保守的な考えの人がいることも事実です。また、専業主婦(夫)の役割を担ってきた人は、再び社会に出て働くことや、新しい人間関係を築くことに抵抗がある場合もあるかもしれません。
【家族関係の問題】
離婚は、子どもや親族との関係にも大きな影響を及ぼす可能性があります。長い期間一緒に過ごしてきた家族にとって、熟年離婚は大きなショックとなり得ます。さらに、孫との関係や相続の問題が発生することもあります。
熟年離婚の問題を解決する新しいライフスタイル
ここまで見てきた熟年離婚の難しさが多くの人に離婚を思いとどまらせる一方、50代以降の女性たちのライフスタイルや価値観は大きく変化しています。
株式会社扶桑社が行ったアンケート調査「【ESSEフレンズレポーターにwebでアンケート調査】調査対象:全国の30~50代女性」によると、30~50代の女性が「50歳以降にやりたいこと」として最も多く挙げたのは「捨て活」(不要なものを整理してシンプルな生活を目指すこと)で、続いて「新しい趣味」や「学び直し」が人気でした。そしてなんと、「卒婚」が第9位にランクインしているのです。
この傾向は、人生の折り返し地点を迎えた女性たちが、これまでの生活を見直し、より自分らしい生き方を追求しようとしていることを示しているのではないでしょうか。「卒婚」は、こうした「シンプルで自由な生活を送りたい」という願望と一致していると言えるのかもしれません。
このように、女性の価値観は「家族やパートナーとの関係を保ちながらも、個々の生活や自己実現を重視したい」という傾向に変わってきているようです。
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卒婚のメリットとデメリット
それでは卒婚のメリットとデメリットを、離婚と比較しながら比べてみましょう。
卒婚のメリット
卒婚は離婚のような法的な手続きが必要ないので、それ自体が大きなメリットと言えるでしょう。
そして法的には引き続き夫婦として認められ、財産の共有や扶養義務などは変わらず存続することになり、生活の基盤は維持できることが多いと予想されます。
生活費の分担などについても夫婦間での話し合いによって柔軟に決めることができることは大きな利点です。実際、卒婚では夫婦が互いに独立した生活を送る一方、関係は完全には断たず、友人やパートナーとして良好な関係を維持するケースが多いようです。
卒婚のデメリット
様々なことを夫婦間での話し合いによって柔軟に決めることができる反面、お互いの理解がないと合意形成が難しい点が挙げられます。
というのも、株式会社Agoora(企画・開発・運用、コンテンツ)が運営するサイト「離婚弁護士相談広場」が行った、20代~50代までの離婚経験女性へのアンケートによると、夫が原因で離婚に至った理由の第一位が「性格の不一致(意見の相違・愛情が冷めた・一緒にいたくない)」となっています。
第四位には「精神的な暴力・ストレス(モラハラ行為やいやがらせ、自由の束縛など)」も挙がっており、そもそも共同生活が難しかったことがうかがえます。
このようにパートナーとの人間関係が完全に崩壊していると、話し合いすらまともに進められないケースは考えられます。
そのため、卒婚は円満離婚できる夫婦でなければ、取りえない選択肢だともいえます。また、法的に様々な義務が残る点がマイナスに働く可能性もあります。
そのひとつが、パートナーの両親の扶養義務です。熟年離婚か卒婚かを選択する年代においては、親世代の介護も切り離せない問題です。パートナーとの結婚生活のすれ違いが、お互いの両親との関係性から来ている場合、その両親の扶養義務があるという点は大きなデメリットになります。
最近では、パートナーの死後、亡くなったパートナーの両親の扶養義務から解放されるために「死後離婚」という選択をする人もいます。死後離婚について、もっと知りたい人はこちらもご覧ください。
関連記事:死後離婚のメリットとデメリットは?遺産や遺族年金は受け取れる?
卒婚後の生活費
離婚と比べると、卒婚の方がその後の生活費に対する不安は少なくなります。
例えば、卒婚後も同居する場合であれば、住宅費や光熱費の基本料金だけを考えても、経済的な負担は下がります。
また別居する場合も、お互いの扶養義務があるので、話し合いによって、生活資金はある程度バランスよく設計することが可能と考えられます。このことから、卒婚を選ぶ際はその後も同居を続けることを選ぶ人の人が多くなるのではないかと想像されます。
実際、ノマドマーケティングが行った「卒婚」に関する調査において、卒婚者に「家庭内卒婚」「別居」のどちらであるか聞くと、70%が家庭内卒婚、30%が別居と答えています。
卒婚を選択する際には、その後の生活費や将来設計について、しっかりと考えてから進める必要がありそうです。
卒婚が上手くいくための3要素
卒婚が上手く進むためには、パートナーとの対等な話し合いができることが前提条件になります。そのためにはパートナーの性格の把握や良好な関係性の維持、そしてお互いの経済的な自立が必要になってきます。
まとめると次の3つのポイントが押さえられていないと卒婚は選べないと言えるでしょう。
1.お互いのことが生理的に嫌いではない
2.子どもが独立している
3.夫婦間で話し合いができ、尊重できる
あなたに合うのは卒婚?離婚?将来設計を立ててから検討しましょう
「離婚」は、夫婦関係を法的に終わらせる方法です。一方、最近注目されている「卒婚」は、関係を法的には終わらせず、個人としての自由や自己実現を尊重しながらも、パートナーとしての経済的な関係を続ける方法です。
どちらも夫婦の状況や価値観に応じた選択肢であり、どちらを選ぶかは個々のライフスタイルや優先事項によって異なります。そして、これらのプロセスを考えることは、決してマイナスな選択ではなく、幸せな老後生活を送るためのプラスの選択でもあります。
「卒婚」は、人生100年時代、社会や文化の変化、老後の生き方や価値観の多様化など、様々な変化から生まれてきた新しいライフスタイルといえるでしょう。これらのことを先々考えるのであれば、どのように生きていくのか、経済的に自立できるのかなど、一度金融のプロに相談してみるのもよいのではないでしょうか。
ソナミラには「お客さまがお金・健康・生活に困らない、安心で充実した人生を歩むお手伝いをしていきたい」という想いがあり、お客さまの価値観を尊重しています。すべてのことを解決できるわけではありませんが、物事を判断するきっかけを作ることができるかもしれません。
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▼参考
同居期間20年以上で離婚が成立した割合
出典:厚生労働省 2022年「人口動態統計」
二人以上の世帯のうち退職世帯の家計(世帯主65歳以上の無職世帯平均)の毎月の収支
出典:総務省「家計調査報告(家計収支編)2023年 家計の概要」
50歳以降にやりたいこと
出典:株式会社扶桑社【30~50代女性の「50歳以降にやりたいこと」についての調査】
夫が原因で離婚に至った理由
出典:株式会社Agoora「離婚弁護士相談広場」20代~50代までの離婚経験女性へのアンケート
「卒婚」に関する調査
出典:ノマドマーケティング「卒婚経験者に聞いた! 毎月の生活費や住まいはどうしている?」
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号