保険不要論は信じて良い?鵜呑みにするのは危険な理由と判断基準
民間保険への加入は不要なのか必要なのかと、考えている方も多いのではないでしょうか。日本では国民皆年金、国民皆保険制度が導入されているため「民間の保険は不要である」という考え方と、「公的保険だけでは保障が足りない。だから民間保険が必要だ」という大きく分けて2つの考え方があります。本記事では、保険が不要と言われる理由や、民間保険が必要な人、不要な人の特徴などについてお伝えしていきます。
保険不要論は本当?不要と言われる理由
公的保険があれば民間保険は不要なのでしょうか。まず、なぜ民間保険は不要といわれるのかを解説していきます。
貯蓄があればカバーできるから
保険不要論の一つの理由として、働けなくなった、もしくは収入が途絶えることがあっても、それをカバーできる資産(貯蓄・不動産・金融商品など)があれば予期せぬ出費や緊急事態にも対応できるという考え方があります。
そもそも民間の保険は、契約時の保険約款で定められた状態になったときに、保険会社から保険金が支払われる仕組みです。それに対して自分の資産、とりわけ貯蓄には用途の制約がありません。貯蓄額の多い人は、民間保険は不要と言われます。
公的保障が充実しているから
日本では、国民皆年金、国民皆保険制度を採用しています。
国民皆年金とは、20歳以上60歳未満のすべての人に加入義務がある公的年金制度です。
国民皆年金の制度の下、国民年金または厚生年金加入者が一定の条件を満たした場合、公的年金として次の3つの年金が給付されます。
・ 遺族年金:死亡した場合、一定の条件に該当する遺族が受け取れる
・ 障害年金:病気やケガなどによって日常生活や仕事に制限が出る状態になった場合に受け取れる
・ 老齢年金:支払った年金保険料に応じて原則65歳以上になると受け取れる
国民皆保険制度とは、全ての人が公的医療保険に加入し保険料を支払うことで、誰かがケガや病気をしたときに、お互いの負担を軽減する制度のことです。
公的医療保険を利用して医療機関を受診した場合、窓口で支払う医療費の自己負担額が軽減されます。
自治体により負担額は変わりますが、一般的に7歳から69歳であれば、窓口負担は3割になります。
さらに、医療費が高額になったときには、年収や年齢などによって定められた自己負担限度額が決められており、自己負担額の上限額を超えた分が払い戻される高額療養費制度などで支給が受けられます。
このような公的保険が充実しているため、民間の保険は不要であると考える人もいます。
保険を利用する機会は少ないから
支払う医療費は年齢が上がるにつれて増加するため、若いうちは保険の必要性を感じにくいかもしれません。厚生労働省「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」によると、人口1人当たり国民医療費は65歳未満が19万8,600円、65歳以上になると75万4,000円となります。
また、厚生労働省「令和4年簡易生命表の概況」によると、35歳の死亡率は、男性0.068%、女性0.041%と非常に低くなっています。
このようなことから、若いうちは医療費がかかるリスクも死亡リスクも低く、民間保険に加入する必要はないと考える人もいます。
【出典】
「令和3(2021)年度 国民医療費の概況」 (厚生労働省)
:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-iryohi/21/dl/data.pdf
「令和4年簡易生命表の概況」 (厚生労働省)
:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/dl/life22-06.pdf
:https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/life/life22/dl/life22-07.pdf
条件によっては給付金が受け取れないから
民間保険は、保険会社が約款に定めた条件を満たさなければ、給付金を受け取れない場合があります。
具体的に例を挙げると、以下のような場合に給付対象外となることがあります。
既往症がある場合
保険加入前に診断されていた病気やケガについては、給付対象外となる場合があります。
危険なスポーツや活動によるケガ
スカイダイビングやモータースポーツなど、危険度の高い活動中に発生したケガは、保険約款によっては給付対象外となることがあります。
精神疾患
精神疾患は発症時期や完治の時期を判断することが難しいため、多くの保険会社では免責としています。ただし、障害年金を受給しているなど、症状が明確な場合は保障対象となる場合もあります。
保険より資産運用のほうがメリットを感じるから
民間保険に加入して生命保険料を支払うのではなく、その分のお金を資産運用に回して利益を得たいと考える人もいます。資産運用にはリスクが伴いますが、運用がうまくいけば保険で受け取る給付金を上回る利益を得られる可能性があります。
具体的な資産運用方法として以下のような方法があります。
投資信託
投資信託は、1つの商品で株や債券、不動産や金など多様な資産に分散投資するパッケージ商品です。
複数の投資家から集めた資金を投資の専門家が運用します。初心者でも少額で始めることができます。
株式投資
個別の企業の株式を購入し、企業の成長に伴う値上がり益や配当金を受け取る投資方法です。
リターンが大きい一方でリスクも高いため、企業分析や市場の動向をよく理解するなど、一定の投資知識が求められます。
NISA(少額投資非課税制度)
投資で得られる運用益が非課税となる税制優遇制度です。
1年間に投資できる限度額は定められていますが、その枠内で投資することで、本来運用益に対して支払う所得税や住民税が非課税になります。
長期投資を目的として積立投資を行う「つみたて投資枠」と、個別株にも投資できる「成長投資枠」があります。
保険不要論を鵜呑みにする危険性
公的保険で一定程度生活が保障されていれば、民間保険は不要なのでしょうか。続いては、民間保険に加入しないリスクについて見ていきます。
公的保障だけではお金が足りないリスク
公的保障では一定の医療費や生活費などが保障されますが、すべての状況に対応できるわけではありません。
たとえば、入院中の食事代や先進医療などは公的医療保険の対象外です。入院日数や治療方法によっては家計に大きな負担がかかる可能性があります。民間の医療保険で入院給付金や手術給付金、そして先進医療特約などの保障を付帯することで、家計の負担を軽減することができます。
また、万が一家計を担う方が死亡した場合、遺族年金だけでは生活費や子どもの教育資金を十分に賄えないことも考えられます。
注意点として、特約を付帯すると保障が手厚くなりますが、保険料も高額になります。必要な保障は何かをチェックしながら、無駄のない保障に加入するようにしましょう。
療養が長期化するリスク
万が一治療が長引いた場合、治療やリハビリ、通院などの費用がかかります。さらに、働けない期間が長引くと収入減のリスクも考えられます。
生命保険文化センターの調査によると、入院1日あたりの平均的な自己負担費用は2万700円で、分布の多い順に1万~1万5,000円未満(19.4%)、5,000円未満(18.7%)、7,000~1万円未満(15.8%)となっています。
また、61日以上入院した場合の自己負担額は平均で75.9万円でした。療養が長期化した場合には、自己負担額も増加する傾向があるため、長期療養に備えて十分な医療保障を整えておくことが重要です。
【出典】
「2022(令和4)年度 生活保障に関する調査」 (公益財団法人 生命保険文化センター)
:https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/p050-099.pdf
老後の資金が不足するリスク
先述のとおり、多大な医療費がかかる年齢は65歳以降です。公的年金で老後の生活費を賄う予定であっても、予期せぬ病気やケガで医療費の支払いが発生し、経済状況を圧迫する可能性もあります。
民間医療保険は体調を崩すと加入できないおそれもあるため、将来の医療費に対する備えが不足すると予想される場合は、早めに民間医療保険に加入し、備えておくことが重要です。
生命保険に加入したほうが良い人の特徴
生命保険に加入が必要な人の特徴をお伝えします。
家族の生活を支えている
家族の生活を支えている方が死亡した、働けなくなった、入院したなど、万が一の事態に陥ったとき、保有している資産だけでは家族が経済的に困窮する可能性がある場合は、生命保険への加入を検討しましょう。
亡くなった場合は収入が途絶えます。働けなくなった場合は収入がなくなるうえに、介護費用や治療費などが必要になります。
とくに、子どもにこれから教育費がかかる、またはまだ自立していないといった場合は、万が一の際に今持っている資産で教育費や生活費をカバーできるか確認しましょう。不足する可能性があれば、収入保障保険や就業不能保険などで備えておく必要があります。
自営業やフリーランスで働いている
会社員で厚生年金に加入していれば、病気やケガで働けなくなったときに傷病手当金として標準報酬月額の約3分の2が健康保険から給付されます。また、万が一の際には遺族基礎年金に加えて遺族厚生年金も受け取ることができます。さらに、会社の福利厚生制度により、死亡退職金が支払われることもあります。
自営業者やフリーランスなどが加入する国民年金・国民健康保険は、会社員と比較すると、傷病手当金や会社からの死亡退職金といった制度がなく、保障が十分とは言えません。さらに、国民年金の制度である遺族基礎年金は、子どもが一定の年齢になると支給停止となります。
自営業者やフリーランスなどの場合は、公的保障で不足する部分を生命保険でカバーすることを検討する必要があります。
貯蓄が十分でない
思いもよらない病気が見つかった、突然事故にあってケガをしたときには、治療費や働けない期間の収入補填をするため早急に資金が必要になります。こういった緊急時に対応できる資産がなければ、生活が困窮してしまう可能性があります。
緊急予備資金が準備できていない場合、保険に加入することで突発的な事態に対応することができます。
どのような状態になったら困るのかをシミュレーションし、今持っている資産で緊急時に対応できない場合は生命保険に加入することを検討しましょう。
老後の備えをしたい
老後の生活費を考えるときには、生活費だけではなく医療費も含めて、老後の備えとしてどのくらいの金額が必要なのかを考える必要があります。
公的年金だけでは老後の生活すべての支出をカバーするのが難しい場合もあります。生活費、医療費、そして介護費用がかかることもあります。将来予想されるリスクを洗い出しておくとよいでしょう。
たとえば、医療費であれば医療保険、介護費用であれば介護保険など、それぞれのリスクに対応した保険に加入する方法もあります。また、個人年金保険や終身保険など、貯蓄性のある商品もあります。
今は必要だと思っていても、数十年後の老後生活では保障内容のニーズも変化します。保障見直しができる、貯蓄機能があり解約返戻金が一定額返ってくるなど、ニーズの変化にも対応できる商品を選ぶことも大切です。
相続税の負担を軽減したい
生命保険は相続税対策としても非常に有効です。相続税は、一定の資産を相続する際にかかる税金です。
生命保険の死亡保険金には「法定相続人1人当たり500万円の非課税枠(税金がかからない枠)」が設けられており、この枠内の死亡保険金には相続税がかかりません。
例えば、3人の法定相続人がいる場合、「500万円×3人=1,500万円」となり、1,500万円以内の死亡保険金には相続税がかからないのです。
この非課税枠を活用することで、相続税の負担を軽減し、残された家族により多くの資産を残すことが可能になります。
生命保険の必要性が低い人の特徴
生命保険へ加入する必要性が低い人の特徴をお伝えします。
すでに十分な備えがある
生命保険はいざというときに経済的な保障をしてくれます。しかし、病気やケガで働けなくなった、死亡した場合であっても、自分の資産だけで緊急時の出費に対応できる場合は、生命保険に加入しなくても良いでしょう。
遺産を用意する必要がない
独身、扶養家族がいないといった状況で、自分が万が一死亡した場合でも、家族が経済的に困らない場合は生命保険に加入する必要はありません。
ただし、医療費や介護費用、働けなくなったときの保障は扶養家族の有無にかかわらず必要な場合があります。また、ライフステージが変化すると生命保険が必要になる場合もあります。その時々に合わせて、生命保険の必要性を検討していきましょう。
保険不要論が自分に当てはまるかどうかは人それぞれ
生命保険が必要なのか不要なのかは、その人の状況によって異なります。資産額、家族構成や収入、健康状態など、さまざまな要素を組み合わせて判断したほうがよいでしょう。
生命保険は、公的保険があるから不要、公的保険では不足するから必要といったように、単純に判断できるものではありません。自分自身がどのような状況なのかをしっかりと見極め、生命保険が必要なのか不要なのかを判断していきましょう。
どのような判断材料が必要なのか、実際に自分の判断が適切なものなのか迷う場合は、保険の専門家へ相談して意見を聞いてみることをおすすめします。
ソナミラでは、家計診断や保険相談、資産形成など、公的制度をふまえたうえでお客様に適切なアドバイスをお伝えします。ぜひ一度、オンラインまたは店舗での無料相談をご利用ください。
ソナミラについて | 保険・NISAの相談はソナミラへ
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号