確定拠出年金とNISAの併用はできる?制度の概要やメリット、デメリット
確定拠出年金とNISA(少額投資非課税制度)は併用できます。どちらも、運用益が非課税になるメリットがあり、うまく並行して使えば効率よく資産形成を進めることが可能です。
一方で、確定拠出年金とNISAを併用する際には注意点もあります。自分に合った方法で資産形成を進めるためにも、両者の特徴や違いを理解することが大切です。
こちらの記事では、確定拠出年金とNISAの違いや併用するメリット、デメリットなどを解説します。投資に興味があり、自分に合った方法を模索している方に役立つ内容となっているので、ぜひご覧ください。
確定拠出年金とNISAは併用できる?
確定拠出年金とNISAはそれぞれ異なる目的と特徴を持つ制度で、併用可能です。年齢やライフプラン、資産状況に応じて併用するか、片方のみ利用するかを検討しましょう。
以下で、それぞれの特徴を解説します。
確定拠出年金とは
確定拠出年金には、勤務先の会社を通じて加入する「企業型確定拠出年金(企業型DC)」と「個人型確定拠出年金(iDeCo)」があります。いずれも私的年金の一つで、公的年金の上乗せとなる年金制度です。
企業型確定拠出年金 | iDeCo | |
---|---|---|
加入対象者 | 原則として70歳未満の企業の従業員 | 65歳未満の国民年金保険加入者 |
掛金の拠出 | 企業 | 個人 |
掛金拠出時の税制優遇 | 全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除)※1 | 全額所得控除(小規模企業共済等掛金控除) |
拠出限度額 | 27,500円または55,000円/月 | 12,000円~68,000円/月(最低拠出額は5,000円)※2、※3 |
受取時の税制優遇 | 年金:公的年金等控除 | 年金:公的年金等控除 |
運用益 | 非課税 | 非課税 |
※1マッチング拠出の場合
※2限度額は会社員や公務員、専業主婦(夫)であるかなどによって異なる
※3 2024年12月より20,000円~68,000円/月になる予定
いずれも「年金」という言葉があるように、老後資金を用意するための制度です。60歳になるまで原則として引き出しができず、拠出された掛金と運用益の合計額をもとに、将来の給付額が決定します。
確定拠出年金では、加入者が自分で運用商品を選択します。運用結果に応じて将来の年金額が決まるため、受け取れる年金額は不確定という点が特徴です。
拠出した掛金全額が所得控除の対象で、運用益が非課税となる点は共通しています。つまり、現役時に掛金を拠出しながら税制上の優遇を受けられ、計画的に老後資金を用意できる制度と言えるでしょう。
【出典】
厚生労働省「確定拠出年金制度の概要」
iDeCo公式サイト「iDeCoってなに?」
NISA(少額投資非課税制度)とは
NISAとは、投資を通じて得られた利益が非課税となる制度です。通常の投資では、運用益や配当などに対して20.315%の税金が課されますが、NISAでは課されません。
2024年(令和6年)1月からは新制度が開始され、年間投資枠が最大360万円まで(非課税保有限度額が総枠で最大1,800万円まで)非課税投資ができるようになりました。
つみたて投資枠 | 成長投資枠 | |
---|---|---|
非課税保有期間 | 無期限 | 無期限 |
年間投資枠 | 120万円 | 240万円 |
非課税保有限度額(総枠) | 1,800万円(うち、成長投資枠は1,200万円) | |
投資対象商品 | 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 | 上場株式、投資信託、ETFなど |
対象年齢 | 18歳以上 | 18歳以上 |
NISAを始めるには、銀行や証券会社などでNISAの口座を開設する必要があります。NISA口座の開設は1人につき1口座のみで、複数の金融機関で開設することはできません。
【出典】
金融庁「NISAを知る」
国税庁「株式・配当・利子と税」
確定拠出年金とNISAを併用するメリット
確定拠出年金とNISAの両方を活用すれば効率よく資産形成を進められる可能性が高まります。
以下で、具体的なメリットを解説します。
確定拠出年金とNISA両方の税制上の優遇を活用できる
確定拠出年金とNISAを併用すると、それぞれの制度が持つ税制上の優遇を活用できるメリットがあります。
確定拠出年金では、拠出する掛金が非課税で運用され、所得税と住民税の負担を軽減することが可能です。NISAを活用すれば、年間360万円まで非課税で投資できます。
確定拠出年金で税制上の優遇を図り、NISAでは運用で得られた利益に対する税金が免除されれば、一石二鳥です。
資産形成の多様化を図れる
確定拠出年金とNISA、それぞれの制度は、目指す目的や税制優遇の仕組みが異なります。わたしたちが資産形成をするうえでの目的は一つとは限りません。両者を併用することにより、目的ごとに異なるリスクとリターンを組み合わせられます。
確定拠出年金は老後資金作りを目的とした長期的な資産運用、NISAは中長期的な資産運用に向いています。老後資金は確定拠出年金で、教育資金や住宅購入資金などはNISAで賄うことを目指せば、それぞれの資産運用においてかかるリスクも調整できます。
資金の流動性が高まる
確定拠出年金は、原則60歳まで引き出せません。一方で、NISAは年齢に関係なくいつでも引き出せます。つまり、NISAは流動性が高いのがメリットと言えます。
長期運用を視野に入れつつ、NISAの流動性の高さも活かしましょう。たとえば、住宅のリフォームが必要になったときや入院・手術などでまとまったお金が必要になったときにNISA口座に入った資産を現金化して充当することもできます。
確定拠出年金とNISAを併用するデメリット
確定拠出年金とNISAを併用することにはデメリットも存在します。後々になって問題にならないように、デメリットも把握しておきましょう。
管理の手間が増える
確定拠出年金とNISAを併用すると、運用する口座が2つになるため管理の手間が増えます。
運用状況を確認したいときやリバランス(資産の配分バランスを調整すること)を行う際に、いずれか一方の制度を利用する場合と比較すると、時間と労力が増えてしまいます。また、口座管理が煩雑になると「自分はどの程度のリスクを取っているのか」が把握しづらくなる可能性も考えられます。
運用コストが増加する可能性がある
確定拠出年金とNISAを併用すると、運用コストが増加する可能性があります。
確定拠出年金では、専用口座を金融機関に管理してもらうための「口座管理手数料」や、運用商品ごとに決められている運用手数料(信託報酬)がかかります(企業型DCの場合、勤務先が口座管理手数料を負担します)。
NISAでは一般的に口座管理手数料はかかりませんが、株や投資信託などを購入すると、運用商品によっては手数料がかかります。
手数料は、運用で得られる利益を削る要素の一つです。手数料の負担が重くなると運用成績に与える悪影響が大きくなる可能性があるため、注意しましょう。
確定拠出年金とNISAを併用すべきケースと片方に絞るべきケース
確定拠出年金とNISAの制度を理解したうえで、自分にとって必要と感じれば併用し、いずれかは不要と判断すれば片方に絞りましょう。
以下で、併用すべきケースと片方に絞るべきケースを解説します。
併用すべきケース
まずは、併用すべきケースから解説します。
長期的な資産形成を目指す場合
長期的な資産形成を目指す場合、両者を併用すれば効率よく資産をふやせる可能性があります。
投資を始めようか検討している方は、漠然と「将来のお金が不安」という感情をお持ちではないでしょうか。確定拠出年金で長期的な視点で老後資金を用意し、NISAで中長期的に資産運用をすれば、バランスの取れた資産形成ができるでしょう。
投資における税制上の優遇を最大限に活用したい場合
税制上の優遇制度を最大限に活用するのであれば、両者を併用すると良いでしょう。併用すれば「税制上の優遇」と「非課税での資産運用」という2つのメリットを享受できます。
確定拠出年金は拠出した掛金が全額所得控除の対象となり、所得税と住民税の負担を軽減できます。高年収で所得税率が高い方ほど、税制上の優遇効果は大きくなります。
確定拠出年金とNISAは、いずれも運用益が非課税となるため売却益や配当を得たときに税金がかからず、通常の投資よりも有利に投資できます。資産形成の手段として有効活用すべきでしょう。
片方に絞るべきケース
続いて、いずれか片方に絞るべきケースを解説します。
確定拠出年金に絞ったほうがよい場合
老後資金を確実に確保したい場合は、確定拠出年金に絞ったほうが良いでしょう。確定拠出年金は原則60歳まで引き出しができないため、老後資金作りに特化している制度と言えます。
また、資産運用でリスクを取りたくない方も、確定拠出年金に絞ることを検討しましょう。確定拠出年金には、定期預金や保険などの元本確保型商品が用意されているため、元本割れを避けたい方でも安心して始められます。
NISAに絞ったほうが良い場合
60歳までお金を引き出せない点をネックに感じる方や、急な出費に備えたい方はNISAに絞ったほうがよいでしょう。NISAには引き出しに関する制約がなく、必要なときにいつでも運用している金融商品を売却して現金化できます。
また、確定拠出年金で受けられる所得控除の恩恵が少ない方にとっては、NISAのほうがメリットを活かせる可能性があります。たとえば、収入の少ないパートやアルバイトの方は、そもそも控除できる所得が少なく、NISAに資金を振り向けるほうが、メリットが大きい場合もあります。
所得よりも確定拠出年金の掛金が大きければ、所得控除を全額使い切れません。確定拠出年金の税制優遇を最大限活かせないと考えられる場合は、NISAのほうが向いているでしょう。
確定拠出年金とNISAを併用して効率よく資産形成を行おう
確定拠出年金とNISAを併用すれば、税制優遇を受けつつ効率よく資産形成を行えます。余裕資金があり、中長期的な資産形成を検討している方は併用を検討すると良いでしょう。
しかし、すべての方に併用が向いているとは限りません。併用すべきか片方に絞るべきか悩んでいる方は、お金のプロへ相談しましょう。
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ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号