パート主婦がiDeCoを利用するメリットは?意味ないって本当?利用の注意点
iDeCo(個人型確定拠出年金)は、自分で拠出した掛金を自ら運用する私的年金制度です。税制上のメリットもあり、うまく活用することで、将来受け取れる公的年金に上乗せして老後資金を準備できます。
iDeCoは、基本的に20歳以上65歳未満のすべての人が加入できますが、パート主婦(主夫)の場合、配偶者控除や社会保険料の負担など注意しなければならない点もあります。また、運用資金は原則として60歳まで引き出すことができません。掛金や運用商品は慎重に判断することが大切です。
この記事では、パート主婦(主夫)がiDeCoを利用するメリットや注意点について解説します。iDeCoの始め方や年末調整の手続きについても紹介します。
パート主婦(主夫)がiDeCoを利用するメリット
まずはパート主婦(主夫)がiDeCoを利用する4つのメリットについて解説します。
掛金の全額が所得税控除になる
1つ目のメリットは、掛金全額が所得控除の対象になるため、所得税(復興特別所得税を含む)や住民税の負担を軽減できる点です。
たとえば、毎月1万円の掛金で運用する場合、年間12万円の掛金が所得から控除され、課税対象となる所得が減ります。
所得税率を5%、住民税率を10%とすると、12万円×(5%+10%)=1万8,000円の税負担を軽減できます(復興特別所得税は考慮していません)。
ただし、パートの収入は、通常、給与収入となるため、給与所得控除55万円と基礎控除額48万円を加えた103万円以下までは、所得税はかかりません(103万円の壁)。そのため、パート収入が100万円に満たない場合、所得税や住民税が課税されないため税制面でiDeCoの恩恵を受けられません。
一方、パート主婦の場合、iDeCoの掛金の上限は、月額2万3,000円です。つまり、年間最大27万6,000円(2万3,000円×12カ月)の控除枠があります。
給与所得控除55万円と基礎控除額48万円と合わせて考えると、年収130万円程度の場合、iDeCoを活用すると所得控除を最大限活用しながら所得税や住民税の負担をなくすことができます。
【出典】
国税庁「No.1800 パート収入はいくらまで所得税がかからないか」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1800.htm
運用中の運用益は非課税で再投資される
iDeCoは、運用益が非課税である点もメリットです。
通常、資産運用で生じた運用益に対しては、原則として20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、住民税5%)の税金が課税されます。たとえば、運用益が10万円あったとしても、2万315円は税金として差し引かれます。
一方、iDeCoでは運用益が非課税となり元本にプラスされ再投資されます。運用で得た利益を元本にプラスすることで、さらに利益を生むことを複利効果といいますが、iDeCoを活用すれば複利効果を活用しながら効率的にお金をふやすことが可能です。
受取時も税制の優遇が受けられる
原則として60歳から資産を引き出すことができるiDeCoは、運用資金の受け取り時に税制優遇が受けられる点もメリットです。
iDeCoは一時金か年金で受け取り方法を選ぶことができ、、それぞれ受取金額から一定の金額を差し引くことができるため(所得控除)、所得税、住民税の負担を減らすことができます。
一時金で受け取る場合、税制上、退職所得の扱いとなり、受け取り金額から退職所得控除の金額を差し引くことが可能です。
加入期間が長いほど控除額はふえ、退職金がないパート主婦の場合、一括受け取りの大部分が低税率あるいは非課税で受け取れる可能性もあります。
一方、公的年金と同様に、毎月一定額を受け取ることもできます。受給する権利が発生する60歳になると、5年以上20年以下の期間で受け取ることが可能です。この場合の所得は雑所得となり、受け取り金額から公的年金等控除の金額を差し引くことができます。
なお、受給開始年齢は、iDeCoに加入していた期間によって異なり、60歳から受け取るにはそれまでに10年以上の運用期間が必要です。
【出典】
iDeCo公式サイト「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html
国税庁「退職金と税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/02_3.htm
自分名義の老後資金が準備できる
自分名義の退職金あるいは年金として、老後資金を準備できる点もメリットです。
退職金がないパート主婦(主夫)にとって、自分名義の資産となるiDeCoの存在は大きいといえます。
また、配偶者のどちらか一方がiDeCoを活用するより、夫婦で利用したほうが控除対象となる掛金がふえ、税制上のメリットが大きくなります。
パート主婦がiDeCoを利用するときの手続きは?
iDeCoを利用するとなれば金融機関で加入の申し込みが必要です。ここでは、利用手続きの流れと所得控除を受けるための年末調整について解説します。
iDeCoの加入手続き方法
iDeCoの加入手続きの流れは、次の通りです。
1.運営管理をする金融機関を選び申込書類を取り寄せる
2.掛金を決める
3.運用商品を選ぶ
4.加入申込書を記入し、必要書類とともに提出する
5.加入審査に通過後、口座開設通知が届く
さまざまな金融機関がiDeCoを取り扱っており、運用商品や加入時、口座管理の手数料も異なるため、しっかり比較しながら選ぶことが大切です。
掛金はパート主婦の場合、最低金額である月5,000円から月2万3,000円のなかで決めます。原則60歳まで引き出せないため、毎月の支出が家計の負担になり過ぎないように決めることが必要です。
掛金が決まると運用商品を選びます。iDeCoの運用商品には、定期預金や保険などの元本確定商品と投資信託があります。投資信託の投資対象は、国内外の株式や債券、それぞれをバランスよく取り入れたものなどさまざまです。
運用商品の特徴やリスクを理解したうえで、どの商品にどのくらいの配分で掛金を拠出するかを決めることが大切です。
掛金や運用商品などが決まれば、金融機関から送付された個人型年金加入申出書に記載し、本人確認書類の写しや年金手帳、掛金の引き落とし口座の情報など必要書類を添付して提出します。会社の厚生年金に加入しているパート主婦は、勤務先に証明書を記入してもらうことが必要です。
なお、一部の金融機関ではオンラインで申込手続きができます。
【出典】
厚生労働省「自分で育てる、自分の年金 iDeCo」
https://www.ideco-koushiki.jp/images/img-movie/pdf/ideco_pamphlet.pdf
年末調整時に必要な書類と手続き
DeCoの所得控除を受けるには、年末調整で申告しなければなりません。
パート主婦の場合、年収が103万円を超えると所得税、年収100万円を超えると住民税(所得割)がかり、年末調整を行うことで所得税の還付あるいは翌年の住民税を減らすことができます。
準備する書類は、「小規模企業共済等掛金払込証明書」と「給与所得者の保険料控除申告書」です。
「小規模企業共済等掛金払込証明書」は、iDeCoで年間に積み立てた金額、いくらの控除を受けられるかを証明する書類です。毎年10月~11月頃に国民年金基金連合会から届いた原本を添付しましょう。
「給与所得者の保険料控除申告書」は、年末調整の時期に、勤務先の担当部署から配布される書類で、iDeCoで積み立てた金額(年額)などを記入します。
期限内にこれらの書類を提出すれば年末調整の手続きは完了しますが、気づかずに年末調整の時期が過ぎていたという場合は、確定申告をしましょう。
パート主婦がiDeCoを利用する際の注意点
公的年金を補完する制度として税制上のメリットが多いiDeCoですが、パート主婦が利用する際にどういった点に注意しなければならないのでしょうか。
扶養の範囲内での収入の調整をする
パート収入が130万円以上になると配偶者控除が受けられません。一方で、iDeCoの所得控除のメリットを受けるには一定の収入(課税所得)が必要です。そのため、配偶者控除を受けたい場合、扶養の範囲内で収入を調整する必要があります。
また、130万円を超えると配偶者の扶養から外れ、自分で社会保険料を支払わなければなりません(いわゆる「130万円の壁」)。従業員が501人以上の企業(従業員が500人以下だが労使で合意している企業を含む)など、一定の条件下では106万円以上で社会保険の対象となるケースもあります。
社会保険料の負担が生じると、収入がふえたにもかかわらず手取りが減る可能性があります。
このように、配偶者控除や社会保険料による負担増を避けながらiDeCoを有効活用するためには、勤務先の状況を踏まえ、収入を計算しながら調整することをおすすめします。
運用にかかる手数料などコストを把握する
iDeCoの運用にかかるコストを把握することは大切です。加入時や運用期間中にかかる各種手数料は次の通りです。
・加入・移換時手数料(初回1回のみ):2,829円
・加入者手数料(掛金納付の都度):105円
・還付手数料(その都度):1,048円
・運営管理機関の手数料:金融機関によって異なる
加入時にかかる手数料は、初回の掛金から差し引かれます。また、毎月掛金を納付する際にかかる加入者手数料の他、国民年金の未納が判明した場合など、その月の掛金を加入者に還付するときの還付手数料があります。
また、iDeCoを運営する運営管理機関の口座管理手数料が必要です。手数料は、運営する金融機関や証券会社によって異なり、手数料無料から月額500円を超える口座、あるいは資産残高に応じて手数料が変わる口座などがあります(2024年6月30日時点)。
【出典】
国民年金基金連合会「加入希望者の方へ 手数料について」
https://www.ideco-koushiki.jp/start/entry.html
分散投資でリスク管理をおこなう
iDeCoの活用にあたって、運用する金融商品によっては元本割れのリスクがあるため、リスク管理に慎重になることが大切です。
投資対象には、元本が確保される元本確保型の商品がある一方、投資信託は、市場環境などで運用成果が変動するため、支払った掛金より老後に受け取れる年金額が下回る可能性もあります。
そのため、長期的な視点で分散投資を重視しながら運用することでリスクを軽減することが必要です。たとえば投資信託では、株式や債券をバランスよく取り入れたものなど、さまざまな投資対象があります。分散投資によって、一つの投資先が大幅に値下がりしても他の投資先でカバーできる可能性もあります。
また、長期間、積立、運用を継続することで、時間分散によるリスク軽減や複利効果も期待できます。
iDeCoはパート主婦にも老後の安心につながる制度
iDeCoは、所得控除など優遇税制を活用しながら、老後の資産を形成できる私的年金制度です。
パート主婦の場合、配偶者控除や社会保険料の負担への影響などに注意しながら、iDeCoを活用することで、効率よく自分名義の老後資金を準備することができます。パート主婦にとってもiDeCoは、老後の安心につながる制度といえるでしょう。
ただし、原則、途中解約はできず、運用資金は60歳まで引き出すことができません。また、運用成果によっては元本割れのリスクがある点には注意が必要です。
そのため、iDeCoを始めるにあたって、口座管理の手数料や運用商品などを比較して運営管理機関を決めるとともに、投資対象や掛金についても、投資対象のリスクやリターンを理解したうえで選ぶことが大切です。
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ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号