個人年金は貯金代わりになる?メリットや向いている人の特徴
将来に向けた貯金について考え始めた30〜40代の人は「個人年金保険が貯金代わりになる」と聞いたことがあるかもしれません。せっかく貯金をするなら、なるべく効率が良い方法を探したいと思うのは当然のことでしょう。
実際のところ、個人年金保険は預貯金の代わりになり得ます。ただし、預貯金と個人年金保険の特徴の違いを理解したうえで、自分に合った貯金方法を考えることが大切です。
この記事では、個人年金保険の基本的な仕組みや貯金代わりにするメリット、向いている人の特徴などをわかりやすく解説します。個人年金を賢く活用して効率的に資産をふやし、将来の生活費をしっかりと準備する方法を学んでいきましょう。
個人年金は貯金代わりになる?
個人年金保険の基本的な仕組みを理解したうえで、貯金代わりになるのかを考えてみましょう。
個人年金とは
個人年金保険は、老後資金を準備するために加入するものです。国民年金や厚生年金などの公的保険に上乗せする私的年金の一つで、加入者は一定期間保険料を払い込み、60歳や65歳など契約時に決めた年齢から年金を受け取れます。長期的な資産形成の手段として活用されることが多くなっています。
個人年金は貯金代わりになる?
個人年金保険は、貯金の代わりになり得ます。というのも、個人年金保険は貯金型保険で、前述したように、基本的に毎月積み立てた保険料を最終的に年金として受け取れる仕組みになっているからです。
一方、医療保険やがん保険などで、いわゆる「掛け捨て型」と呼ばれる保険は、支払い事由に該当しなければ受け取れるお金がない場合も多いことから、貯金代わりとして活用することは難しくなっています。
個人年金保険を貯金代わりにするメリット
無理なく計画的に貯金ができることや、老後資金を準備するという観点では銀行預金よりも効率よくお金を貯められる点などが、貯金代わりに個人年金保険に加入するメリットです。
以下では、それぞれのメリットについて詳しく解説します。
計画的に貯金ができる
個人年金保険の大きなメリットは、計画的に貯金ができることです。個人年金保険の保険料は、基本的に口座振替やクレジットカードなどで支払います。平準払いの場合、毎月決まった日に、自動で保険料が口座から引き落とされるので、積み立てするのを忘れたり、貯金に回す金額を減らしてしまったりする心配がほとんどありません。
中途解約すると元本割れするリスクがあるため、貯金に強制力が働きやすい点もメリットといえるでしょう。
支払った保険料の総額と比較して受け取れる保険金額の方が多い
最終的に貯金よりも受け取れる金額が多くなる可能性が高い点も、個人年金保険の魅力の一つです。
銀行の普通預金の金利は2024年7月時点では、約0.03〜0.29%程度(※)であるケースが多いため、何年も貯金を続けていたとしても元本がほとんどふえないこともあり得ます。
※日本銀行 時系列統計データ検索サイト「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等 定期預金・普通預金の平均金利(2022年4月以降)」2024年7月数値を参照
一方、個人年金保険では、満期を迎えると支払った保険料を上回る年金を受け取れることが多いため、預金よりも効率的にお金を貯められるでしょう。とくに保険料を一括で支払うタイプの商品では、通常よりも高い返戻率が適用されることも少なくありません。
個人年金保険料控除が受けられる
個人年金保険料控除が受けられる点も、貯金代わりに個人年金保険を活用するメリットの一つです。
個人年金保険料控除とは、1年間に支払った生命保険料に応じて所得控除を受けられる「生命保険料控除」の一つで、以下の要件を全て満たす契約に対して適用されます。
● 年金受取人が保険料の払い込みをする本人(契約者)またはその配偶者となっている
● 年金の支払を受けるまでに10年以上の期間にわたって、保険料を定期に支払う契約である
● 年金の支払は、年金受取人の年齢が原則として満60歳になってから支払うとされている10年以上の定期または終身の年金である
個人年金保険料控除が適用されれば、税金を計算する際の元となる所得が減るため、所得税や住民税の負担を軽減することが可能です。所得税については最大4万円、住民税については最大2.8万円の控除を受けられます。
【出典】
国税庁「No.1141 生命保険料控除の対象となる保険契約等」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1141.htm
個人年金保険を貯金代わりにするデメリット
個人年金保険を貯金代わりに活用する際は、元本割れするリスクやインフレリスクがあることを理解しておきましょう。
以下では、個人年金保険を貯金代わりにするデメリットを2つ紹介します。
途中で解約すると元本割れする可能性がある
個人年金保険は途中解約した場合に、契約期間や払い込んだ保険料に応じた「解約返戻金」が受け取れます。
しかし、解約するタイミングによっては、払込保険料が全額戻ってこないことも少なくありません。加入期間が短いほど解約返戻率は低くなる傾向があります。
※解約返戻率とは、払込保険料に対して受け取れる解約返戻金額の割合のこと
個人年金保険は元々「老後の生活資金に備える」という性質があり、短期間の貯金にはあまり向いていない商品です。教育資金や住宅購入資金など、老後資金以外に備えたい場合は、ほかの方法で貯金をしたほうがよいでしょう。
インフレリスクがある
個人年金保険には、積立利率が固定されているタイプと、変動するタイプの商品があります。積立利率が固定されるタイプの場合、契約時点で将来受け取れる年金原資が決まるのが特徴です。
そのため、将来受け取れる金額が変わらないという点では安心につながることもありますが、インフレが進んだ場合は年金の価値が目減りする可能性があります。インフレとはモノやサービスの価格が継続的に上昇することです。インフレが進むと同じ金額で購入できるモノやサービスの量が減るため、お金の価値が減少します。
せっかく老後に備えて個人年金保険に加入していても、インフレが大きく進んだ場合は、いざ老後を迎えたときに生活資金が足りなくなるリスクがある点には注意が必要です。
ただし、近年では積立利率が変動するタイプの商品や、運用実績に応じて年金額が変動する商品(変額個人年金保険)などが主流になってきています。
個人年金と比較した貯金のメリットとデメリット
銀行預金での貯金には、個人年金保険を活用した貯金とは異なるメリット・デメリットがあります。
貯金のメリット
銀行預金の大きなメリットは、自由に現金の預け入れや引き出しができる点にあります。生活費が不足したときや冠婚葬祭・医療費など急にお金が必要になったとき、家電や自動車のような大きい買い物をするときなど、さまざまな用途で活用できる利便性の高さが魅力です。
一方で、個人年金保険は短期間で解約すると大きく元本割れするリスクがあるため、お金を自由に引き出すことは難しいでしょう。
また、銀行の普通預金や定期預金は、預金保険制度の対象となっているため、万が一銀行が破綻しても一定額までは元本が保証される仕組みになっています。利息がつく普通預金や定期預金は元本1,000万円までと破綻日までの利息などが保護の対象です。
一方で、生命保険会社が破綻した場合も「生命保険契約者保護機構」により、契約者は一定の保護を受けられますが、年金原資が減少するなど、契約内容に影響が出る可能性があります。
【出典】
金融庁「預金保護制度」
https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/
公益財団法人生命保険文化センター「生命保険会社が破綻した場合、契約はどうなるの?」
https://www.jili.or.jp/knows_learns/q_a/life_insurance/162.html
貯金のデメリット
銀行預金のデメリットは、一般的な投資商品(株式や投資信託など)と比べると、お金がふえにくいという点です。お金を効率よくふやすことに重点を置くのであれば、投資信託などの金融商品の購入を検討したほうがよいでしょう。
また、個人年金保険であれば、毎年個人年金保険料控除を受けられる場合もあるため、長期間保険料を払い込めばその分、税負担軽減の効果は大きくなります。しかし貯金には税制上の優遇措置はないので、どんなに長く貯金を続けたとしても、所得税や住民税の負担が減ることはないのがポイントです。
個人年金と貯金はどちらがいい?
個人年金保険と貯金のどちらが向いているかは、その人の性格や現時点での貯金額などによっても大きく変わります。以下では個人年金保険と貯金のそれぞれに向いている人の特徴を紹介しますので、ご自身の場合はどちらに当てはまるか確認してみましょう。
個人年金保険がおすすめの人
・公的年金や退職金だけでは不安な方
・老後資金を計画的に備えたい方
・急な出費が生じても保険を解約せずに済む程度の貯金がある方
・コツコツ貯金するのが苦手な方
・個人年金保険料控除を有効に活用したい方
個人年金保険は老後資金に備える目的で加入する保険なので、基本的に長期間の加入を前提としています。短期間で解約すると元本割れする可能性もあるため、生活費や緊急時に備える費用など、最低限の貯金ができてから加入したほうがよいでしょう。
また、半ば強制的にお金を貯められるので、貯金が苦手な人にも向いています。個人年金保険料控除を受けることもでき、税額のメリットも享受できるでしょう。
貯金をするのがおすすめの人
・自力で計画的に貯金ができる方
・急にまとまったお金が必要になったときに使える貯金がない方
・ある程度資金が貯まったら複数の資産運用や資産形成に回したい方
・元本割れするリスクを負いたくない方
貯金は自由に預け入れ・引き出しができるため、状況に応じて柔軟に活用できる点が魅力です。緊急時に備える費用や、教育費のような老後以外のさまざまなライフイベントに備える資金や資産運用に回す資金を貯めたい人には貯金が向いています。
また、貯金には個人年金保険とは異なり元本保証があるので、手持ちの資産を一切減らしたくない人にも向いているでしょう。
個人年金保険を貯金代わりにするか迷ったら専門家に相談してみよう
一定期間保険料を支払うことで、将来年金を受け取れる個人年金保険は、貯金の代わりとして活用することが可能です。
個人年金保険は、老後資金を準備するという観点では、貯金よりも計画的かつ効率的にお金を貯めることが期待できる一方で、途中解約すると元本割れする場合や、商品によってはインフレによって受け取る年金額が目減りする場合があります。
しかし、貯金には必要なときに自由にお金を引き出せるという大きなメリットがあるため、貯金の目的やライフスタイルなどに合わせて使い分けるとよいでしょう。
個人年金保険と貯金のどちらが自分に最適なのか迷ったときは、お金の専門家であるソナミラのコンシェルジュに相談してみましょう。
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ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号