投資信託は元本割れするとどうなる?元本割れの際の対処法とポイント
多くの人は「利益を得る」ことを目的に資産運用を始めます。投資には定期預金、株、ETF、投資信託、外貨預金、信用取引など多種多様な手法と商品があります。どの商品にも魅力的な特徴がある一方、リスクもあります。本記事では投資初心者向けに、投資信託が元本割れした場合に投資家が受ける影響や、投資初心者が陥りやすい行動、そして元本割れした際の具体的な対処法についてお伝えしていきます。
元本割れとは?
そもそも「元本」とは、定期預金や株式、債券や投資信託などの金融商品を購入するときに支払うお金(元手資金)のことです。
そして、購入した金融商品を手元に戻すときに、支払った金額よりも戻ってくる金額が少なくなることを「元本割れ」といいます。
ここでは元本割れリスクのある主な金融商品と元本割れリスクのない商品についてお伝えしていきます。
元本割れリスクのある主な金融商品
元本割れする可能性がある主な金融商品として、株式投資、金(ゴールド)投資、不動産投資、投資信託、ETFなどがあります。
これらの金融商品に元本保証はありません。日本や諸外国の金利変動、外国為替相場、国内外の政治、国際情勢など、さまざまな要因により常に価格が変動します。金融商品を購入した時点よりもその金融商品の価格が下がった場合は元本割れとなり、上がった場合は利益を得ることができます。
ただし、損益が確定するのはその金融商品を売却したときになります。
元本保証のある金融商品の例
元本保証がある金融商品として、定期預金があります。
定期預金とは、6か月・1年など預け入れ期間を決めてお金を金融機関へ預ける商品です。基本的に満期日まで引き出しができませんが、普通預金に比べて金利が高く設定されています。金利は預け入れから満期まで適用され、満期を迎えると元本と利息を受け取ることができます。
なお、利息は一律20.315%(所得税・復興特別所得税15.315%、地方税5%)の税金が源泉徴収されます。たとえば1万円の利息が付いた場合、2,031円の税金を差し引いた7,969円が受け取れるということです。
また、定期預金は預け入れたときから満期までの間に解約(中途解約)しても元本割れはしません。そして預金保険制度の対象です。預金者1人あたり、1金融機関ごとに元本1,000万円までと破綻日までの利息などが保護されます。
なお、定期預金は「元本保証」という仕組みで、預け入れ期間中に元本が減ることはありません。似て非なるものとして、「元本確保」という仕組みがあります。
「元本確保」とは、満期まで運用すれば(解約しなければ)元本が満額で返ってくる、という条件付きで元本が保証される仕組みです。元本確保の商品としては、債券や保険商品(個人年金・学資保険)があげられます。
これらの金融商品は定期預金とは違い、中途解約した場合や金融商品の発行元(債券の発行国や保険会社など)が破綻した場合は元本割れする可能性もあります。
【出典】
国税庁「No.1310 利息を受け取ったとき(利子所得) 」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1310.htm
一般社団法人 全国銀行協会
https://www.zenginkyo.or.jp/article/keywords/5157/
金融庁「預金保険制度」
https://www.fsa.go.jp/policy/payoff/
投資信託は元本割れするとどうなる?
投資信託は定期預金とは違い、元本が保証されていない金融商品です。ここでは、投資信託が元本割れするとどうなるのか、そして元本割れが起きた際の対処法について解説していきます。
元本割れの影響
投資信託が元本割れをすると、今まで投資した資金が目減りします。たとえば、今まで投資信託を購入するのに100万円を支払いましたが、その投資信託の現在評価額が90万円になっているとすると、資産が10万円減っていることになります。
保有している投資信託が現在いくらになるかは、投資信託を取引するための1単位の金額である「基準価額」で決まります。自分が保有している投資信託の金額の計算方法は、保有数×基準価額で算出します。よって、この基準価額が上がるか下がるかで元本割れ(損)をするのか、リターン(利益)を得られるのかが決まります。
ただし、前述した通り損益が確定するのは保有する投資信託を売却したときになります。詳細は後述しますが、投資信託は保有期間を長期にすることで元本割れを回避できる可能性があります。
元本割れは借金になる?
では、投資信託の基準価額が暴落し元本割れを起こした場合、マイナスとなった金額を補填しなければいけないのでしょうか?
答えは、投資信託の場合マイナスとなった金額を補填する必要はなく、投資した金額以上のマイナスにはなりません。また、元本割れの状態であっても、その投資信託を売却(換金)して損失を確定しない限り、事実上「損をした」ことにはなりません。
なお、大きく元本割れをしている状態になり「このまま放っておくと、さらにマイナスになってしまうのではないか?今のうちに損切りした方がいいかもしれない」と不安になって、元本割れの状態で売却してしまうと大きな損失が出てしまうこともあります。
ただし、一度元本割れをしている状態から再び基準価額が上がらないケースもあります。こういった場合は売却したほうが、リスクヘッジになる場合もあるため、双方のメリット・デメリットも含めてきちんと考える必要があります。
【出典】
一般社団法人 投資信託協会「基準価額とは」
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/about/basic/index.html
投資信託で元本割れが起きたらどうすればいい?
投資信託で元本割れを起こしているときはどうすればいいのでしょうか。
まずは冷静になる必要があります。市場は常に変動しており、上昇と下落を繰り返しています。短期的には価格が下落したとしても、長期的にみると上昇する可能性もあります。「価格がもっと値下がりしてしまうかもしれない」という不安から、急いで売却してはいけません。元本割れが起こったときの対応をいくつかお伝えします。
焦って売却せずに保有しつづける
元本割れが起こったとき、多くの人はネガティブな感情を抱きます。これ以上損失を膨らませたくないと考え、焦って売却してしまうこともあります。
しかし、元本割れが起こったときこそ冷静な対応が必要です。投資信託は長期保有していると元本割れするリスクが減少します。短期的な損失に気を取られることなく、現在元本割れしていたとしても長期的な視点で投資を継続していくことで、将来元本割れを解消できることもあります。
投資戦略の再評価を行う
短期投資で利益を得たいのか、長期投資で利益を得たいのか、自分はどの程度の損失なら許容できるのかなども含めて投資戦略を再度見直すことも必要です。
短期投資で利益を出し続けるのは投資を生業(なりわい)にしているプロでも難しいことです。投資初心者であれば、長期投資でリスクを平準化し、投資の複利効果を得ながら投資していくことをおすすめします。
短期的な市場変動に惑わされず長期的投資を継続していくことは、元本割れした損失を回復させる一つの方法になります。
専門家のアドバイスを受ける
投資信託で元本割れが発生した場合、自分だけで判断せずに専門家のアドバイスを受けることもおすすめです。金融アドバイザーやファイナンシャルプランナーは、個々の状況に応じた具体的な対策を提案してくれます。元本割れの原因や今後の市場動向を分析し、適切な対応策を考えるためのサポートとなるでしょう。
また、相談によって心理的な負担の軽減にもつながる点もメリットです。元本割れした際は、専門家のアドバイスを参考にすることで、今後の投資戦略を見直すきっかけとなります。
【出典】
国税庁「No.1474 上場株式等に係る譲渡損失の損益通算及び繰越控除」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1474.htm
元本割れのリスクを抑えて投資信託を行うためのポイント
投資信託を購入する目的は、「利益を出すこと」です。元本割れのリスクを最小限に抑えて投資をするポイントをお伝えします。
正しい知識を基に投資を行う
金融商品にはその商品特有の仕組みがあります。その投資商品の仕組みやメリット・デメリット、価格変動リスクなどについて、正しい知識をもって投資を行いましょう。
資産運用をするときは、正しい知識で自分の投資目的に合った金融商品や銘柄を選択することで元本割れするリスクを抑える、またはコントロールすることができます。
余剰資金を利用して投資をする
投資を行う際、自分の資産や収入の中でどのくらいの割合を投資に回せばよいのでしょうか。
人それぞれ考え方がありますが、まずは日常生活費がどのくらいかかるのかを算出します。そして失業や病気などで数か月働けなくなった状況を考えて、緊急予備資金(生活防衛資金)を確保したあとに、日常生活費の余剰資金を投資へ回すとよいでしょう。
緊急予備資金(生活防衛資金)は一般的に毎月の生活費の半年から1年分蓄えておくと、失業や病気、けがなど予想もしない事態が起こったときに気持ちに余裕が生まれ、投資の計画変更などにも冷静に対応することができます。
分散投資を行う
分散投資とは、一つの投資先に集中投資せず、国や投資の種類、投資する時間などを分散させて投資を行うことです。
たとえば、投資する国を米国だけに限定せず、欧州や発展途上国など複数の国へ投資する、株や債券など値動きの違う投資方法を組み込む、一括投資をせずに積立投資をすることで購入価格を平準化するといった投資方法です。
さらに、長期運用することで一時的な市場の変動に影響されず安定的な運用ができ、元本割れリスクを減らすことができます。
正しい知識と自分に合う投資方法で元本割れを回避しよう
元本保証のない投資信託を購入して、元本割れするとどうなるのでしょうか。短期的に見ると「元本割れをした=損をした」と捉えがちですが、投資信託を売却するまでは損が確定するわけではありません。
まず、これ以上損を膨らませないように急いで売却することは避けましょう。長期運用を行うことで元本割れが解消される確率が高くなります。
しかし、長期運用を行えば必ず元本割れが解消されるわけではありません。その投資信託が下落した理由を確認し、売却するのか保有し続けるのかを見極めることが大切です。
また、投資商品を選ぶときに、その投資方法の仕組みや価格変動リスクなどを正しく理解し、自分の投資目的やリスクの許容範囲、投資スタイルなどに合う投資方法を行うことで利益を得られる確率も上がります。
投資の仕組みは大変複雑です。証券会社の口座開設や投資方法、銘柄選びや一般的な税金の取り扱いなどについて、一度専門家から適切なアドバイスを受けることで、自分の望む投資計画を立てることができます。
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