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がん保険は必要か?何歳から入ればよい?年代別加入率もご紹介

目次

日本には公的保険制度のひとつである健康保険があります。
医療機関や薬局の窓口で負担する治療費は、健康保険が適用されると、3割負担(現役世代の場合)になります。加えて高額療養費制度によって、ひと月あたりの治療費も年齢や所得区分に応じた一定額の自己負担で良い仕組みになっています。

このような充実した公的医療保険制度がある中で、わざわざ民間のがん保険に加入する必要はあるのでしょうか?
今回は、がんの治療において、健康保険で可能な治療と自己負担で行う治療との違いについて解説します。また、世の中の人たちが一般的に何歳くらいでがん保険に加入をしているのかも、年代別加入率としてご紹介していきます。

がん保険の性別・年代別加入率

虫眼鏡と医療


まず、どのくらいのお金がかかるのかを考える前に、民間のがん保険の加入率をみていきます。

がん保険の加入率は上昇傾向

公益財団法人生命保険文化センターが2023年3月に発表した「2022年度生活保障に関する調査」によると、がん保険の加入率は18歳から69歳で約40%に及んでいます。

全生保におけるがん保険の加入率


15年ほど前の加入率は30%台だったことを考えると上昇傾向にあり、がんのリスクに対して民間の保険で対策することが一般的になりつつあると言えそうです。

被保険者の年代別のがん保険加入率

加入率を年代別に見ると、加入率20%未満の20歳代から加入率40%以上となる30歳代にかけて倍以上になっており、働き盛りの40歳代、50歳代では50%近くになります。

全生保におけるがん保険の加入率(性年齢別)


そして60歳代になると加入率は減少に転じています。60歳を過ぎると持病や既往症があるため、がん保険に加入できない方が増えるといったことが理由として挙げられます。
性別にみると、加入率は50歳代まで女性の方が高く、それ以降は男性の方が高くなります。

がん保険は何歳から加入するべきか

がん保険の加入は40歳代から50歳代が多くなりますが、一方で罹患する年齢はどうなっているのでしょうか。性別、部位別のがん罹患者数をお伝えしていきます。

年齢の上昇とともに、がん罹患率が高くなるのは間違いありません。
国立がん研究センター、がん情報サービス「全国がん罹患データ(2016年~2018年)」より主要ながんを抽出して、グラフ化すると次のようになります。

がんの罹患者数(男女別部位別)


男性は40歳代中盤から、どの部位のがんも急激に罹患者が増え始めます。そして70歳代前半でピークを迎えます。
一方女性は、子宮がんや子宮頸がんは20歳代から増え始め、乳がんは30歳代中盤から増えています。大腸がんは男性より遅れて40歳代後半から増加し、75歳くらいでピークとなります。

最適ながん保険の加入年齢は、個人のライフプランや、今おかれているライフステージによっても異なりますが、結婚したり子どもが生まれたりすれば、保障の必要性も高くなります。
また、がんに罹患すると仕事ができなくなる期間も長くなるため、住宅ローン等がある方はその返済が続けられるようにしたいというニーズもあります。

罹患者数から考えれば、女性で20歳代前半、男性で40歳代中盤ぐらいが、がん保険加入を検討する一つの目安の時期となるのではないでしょうか。
女性の方は「女性特有のがん発症リスクがある」という点を念頭において、加入の時期を考えてみましょう。

がん保険に早い段階で加入するメリット・デメリット

がん保険に早い段階で加入するメリット・デメリット


がんの罹患率は年齢を重ねるごとに高まりますが、若い人でも発症するリスクがあります。白血病、生殖細胞から発生する胚細胞腫瘍・性腺腫瘍、リンパ腫、脳腫瘍、骨腫瘍などは子供であっても発症するとされています。どの年齢でも罹患する可能性はあるのです。

ただ、若いうちから、がん保険に加入するべきかどうかは、個人のおかれた状況や遺伝的リスク体質によって判断が分かれます。保険料負担や将来のリスクについて総合的に考え、慎重に加入のタイミングを決定することが大切です。
このことを考慮した上で、がん保険に早い段階で加入するメリットとデメリットを説明していきます。

がん保険に早い段階で加入するメリット

同じ保障内容であれば、若い時に加入したほうが、毎月の保険料が低く抑えられます。これは、がんの発症確率が高くなる高齢期に比べ、若い時期の方が保険会社から見てリスクが低いと見なされるためです。
また保険は、加入時に健康状態を告知することが一般的ですから、若いときに加入したほうが加入条件をクリアしやすいと言うのもメリットです。

一方で、若くてもがんの罹患リスクはあります。国立がん研究センターは、毎年約2万人のAYA世代が、がんを発症すると推定しています。
AYA世代のように若い世代でがんに罹患した場合の課題としては、「心身に様々な影響を受ける」ことが挙げられます。一般的に、20歳を跨ぐこの年代は学生から社会人としての基盤をつくる転換期です。

再発の危険性のあるがんに罹患したことで、精神的なダメージを受けてしまうことはよくあることです。心の持ち方などの正しい情報を得ることが重要です。金銭的なゆとりがないと、このようなところに目を向ける余裕も生まれません。

長期間続くがん治療の不安を少しでも減らせるように、経済的なゆとりが出てくる年齢まで、できるだけ安い保険料で保障を確保することに大きな意味があります。

* AYA世代とは、Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の頭文字をとったもので、主に、思春期(15歳~)から30歳代までの世代を指しています。

がん保険に早い段階で加入するデメリット

若い時に保険期間の長いがん保険に加入すると、保険料を短期払いにしない限り、支払い期間も長期間にわたることになります。また、貯蓄性の保険でない場合は、途中で解約すると、支払った保険料が全て掛け捨てになってしまう可能性があります。

若い時に保険料支払いを優先するよりも、投資などの資産運用に充てる選択肢もあります。がん保険に加入することで、将来の経済的リスクを軽減できる一方で、その分他の目標にお金を使う機会を逃すことになります。

がん保険の必要性

がん保険の支払対象となる疾患のイメージ


次に、そもそもがん保険にはどのような保障があるのか?そして、がんの治療にはどのくらいのお金がかかるのか?健康保険で賄うことは難しいかどうかについて考えていきます。

がん保険のしくみと給付内容

がん保険とは、がんに罹患したときの費用をカバーしてくれる保険です。最近では、がんで仕事ができなくなった場合の収入減少を補填するために加入を検討するケースもあります。

一般的な医療保険が、がん以外の病気やケガでも保障対象となるのに対し、がん保険はがんに特化しています。つまり保障の範囲だけで見れば、医療保険の方が多くの疾病をカバーしていることになります。
このがん保険で受け取れる給付は、保障の内容により様々ですが、一般的な給付項目は以下のとおりです。

  • がんと診断されたときに給付される「がん診断給付金」
  • がんで入院したときに給付される「がん入院給付金」
  • がんの手術を受けたときに給付される「がん手術給付金」
  • がん治療で通院したときに給付される「がん通院給付金」
  • がんで先進医療を受けたときに給付される「先進医療給付金」
  • がんで放射線治療や抗がん剤治療を受けたときに給付される「放射線・抗がん剤治療給付金」

保険商品によって、給付内容や特徴は様々ですが、一般の医療保険との大きな違いが2つあります。
ひとつは、がんと診断された時点で一時金が支給される「がん診断給付金」という考え方があることです。がんと確定させるには様々な検査があり、検査時点では健康保険が利かないケースもあります。

しかし、がんの兆候が見られるならば徹底的に精密検査をしておきたいと考えるのが一般的ではないでしょうか。そのため、自費で様々な検査を受けることもあり得ます。その結果、がんでなかったならば、その後の検査費用は働いて補填することができるかもしれません。

一方で、もしがんと診断確定されたならば、今度はその後の治療費にお金がかかるため、この時点でまとまったお金が給付されることはとてもありがたいことです。まとまったお金があれば、治療計画も立てやすいと言えます。
もうひとつが特約で付加するケースが多い「先進医療給付金」や「放射線・抗がん剤治療給付」です。

がんは症状や治療効果が人によって大きく異なるため、健康保険適用外の治療を選択したいと思うときが来るかもしれません。このようなときに高額な治療費が原因で断念するのは、本人にとっても家族にとってもつらいことです。給付金を受け取れることによって、がん治療法の選択の幅が広がることは大きな安心に繋がります。

健康保険でどれだけカバーできるのか

がんに特化して、手厚い保障があるがん保険ですが、がん保険に加入していなかった場合、健康保険でどれだけ治療費をカバーできるのでしょうか。
がんの治療を健康保険が適用されるかどうかで分類すると「標準治療」「先進医療」「自由診療」の3つがあります。

健康保険が適用される部分


「標準治療」とは、現在の治療法の中での最良の治療法と定義されており、健康保険が適用される科学的根拠のある治療法です。
一方で「先進医療」は技術料がすべて自己負担となるもので、将来的な保険導入のための評価を行うものとして、未だ保険診療の対象に至らない先進的な医療技術等と保険診療との併用を認めたものです。

「自由診療」は公的な保険制度の適用外となり、保険診療との併用も認められていません。「自由診療」を受けた場合、健康保険の適用範囲を含め、治療に関わる費用は全額自己負担になります。

がん治療で行われる先進医療とは?

高度先進医療を受けられる施設


先進医療と聞くと、最先端の最新治療技術というイメージがありますが、実際はどのような治療を指すのでしょうか。

先進医療の定義

実際の定義は、厚生労働省が「保険給付の対象とすべきか、評価を行う必要がある療養」と位置づけた上で、評価・検証している高度な医療技術です。
つまり先進医療は、現時点では薬事承認や保険適用には至っていませんが、将来的には保険適用となる可能性があります。

さらに細かくいえば、先進医療には「第2項先進医療(先進医療A)」と「第3項先進医療(先進医療B)」があります。
第2項先進医療では薬事法で承認・認証された医薬品や医療機器が使われているのに対し、第3項先進医療では、承認されていない医薬品や医療機器も使われます。
先進医療は保険適用外診療となり、費用は自己負担です。

しかし、「先進医療」に関しては、「保険外併用療養費制度」により、保険診療との併用が例外的に認められている診療です。
そのため、例外として認められれば、先進医療の技術料以外の入院費や投薬代といった費用は健康保険が適用され、自己負担は3割(現役世代の場合)で済みます。

治療費や治療期間

がんの治療で用いられる先進医療には、放射線治療の「陽子線治療」や「重粒子線治療」があります。
全額自己負担となる先進医療の技術料は高額なものが多く、中央社会保険医療協議会「令和元年6月30日時点における先進医療Aに係る費用」によると、308万9,343円となります。

* 重粒子線治療にかかる先進医療費の総額を、年間実施件数で割った単価

また、治療の期間については、事前検査に3週間ほどかかる場合があり、治療そのものも、がんの種類や治療の種別、医療機関によって期間が異なります。
例えば重粒子線治療の場合、がんの種別によって1週間から5週間かかるとされています。これらの治療期間は医療機関や重粒子線か陽子線かによっても異なります。

保険適用外の抗がん剤とは?

抗がん剤治療


保険適用外の抗がん剤とは、海外では承認済みであっても、日本では未承認となっているものをいいます。
抗がん剤は高価なものが多くありますが、健康保険で賄えるものであれば「高額療養費制度」により、治療費を抑えられます。

しかし、日本で未承認の抗がん剤は保険適用外のため「自由診療」となり、「混合診療」も認められていないため、抗がん剤の投薬代だけでなく、がん治療にかかる医療費のすべてが自己負担になってしまいます。

保険適用外の抗がん剤の数

それでは保険適用外の抗がん剤はどのくらいあるのでしょうか。
国立がん研究センター先進医療・費用対効果評価室が作成したリストによると、米国か欧州で承認され、日本では未承認のがん領域の医薬品数は、2023年3月末時点で延べ116あります。
その中でも、2020年以降に海外で承認されたものが58あり、保険適用外の抗がん剤は増加傾向にあります。

保険適用外の抗がん剤の薬価

保険適用外の抗がん剤は500万円以上する薬剤があり、大半は100万円以上となっています。
2023年3月末時点のデータにおいて最も高価な薬剤は、米国FDA(アメリカ食品医薬品局)や欧州EMA(欧州医薬品庁)にて認可済みの「シルタカブタジン オートルーセル」で、1回あたりの点滴の治療費が57,474,000円となっています。

化学療法と呼ばれる抗がん剤を用いたがん治療は、中長期で行われることも多くなります。想定治療期間も薬剤により差がありますが、治療費が月100万円以上になることも少なくありません。

ドラッグ・ラグによる影響

保険適用外の抗がん剤は数多くありますが、日本でも承認されて使えるようになるまでは時間がかかりますし、そもそも承認されないこともあります。
このように、海外で承認された薬剤が日本国内で承認・販売されるまでに、長い時間がかかることを「ドラッグ・ラグ」と呼ばれています。

ドラッグ・ラグの期間は「海外に治療効果が期待できる薬があるにもかかわらず、日本では健康保険の適用範囲でその治療を受けられない」ということになります。

がんの治療は自己負担額が大きくなる可能性もある

がん保険


ここまで、がん保険の必要性から、先進医療、健康保険適用外の抗がん剤、がん保険の加入率データなどを解説しました。
がんは男性の2人に1人、女性の3人に1人が罹患するとも言われます。誰が罹ってもおかしくない病気です。また、健康保険適用外の治療などを受けると、自己負担額が大きく、リスクの大きい病気であると言えます。

がんによる入院日数こそ短くはなってきていますが、その分通院治療にかかる費用は増えてくると予想されます。
この記事を読んで少しでも気になった方は、万が一に備え、がん保険の加入を検討してみてはいかかがでしょうか。

また、もし現在がん保険に加入しているならば、どのような時に給付金を請求できるのかを今一度確認しておくことをお勧めします。
チェックすることで「通院治療の場合は給付金がもらえないことに気づいた」など、改めて発見することもあるかもしれません。

そして、過去にがん保険に加入したときからライフスタイルが変わり、例えば、闘病中の収入減に備えたいと考える場合は、就業不能保険等も併せて検討していくとよいでしょう。
自分だけでは、どんなタイプの保険を選んだら良いか悩む場合は、ソナミラのコンシェルジュに気軽に相談してください。

▼参考
大阪重粒子センター「重粒子線で治療できるがん」
https://www.osaka-himak.or.jp/whats/superiority/?id=superiority_02
中央社会保険医療協議会「令和元年6月30日時点で実施されていた先進医療の実績報告について」
000592183.pdf (mhlw.go.jp)
国立がんセンター「国内で薬機法上未承認・適応外である医薬品について」
https://www.ncc.go.jp/jp/senshiniryo/iyakuhin/index.html
生命保険文化センター「2022年度生活保障に関する調査」
https://www.jili.or.jp/files/research/chousa/pdf/r4/2022honshi_all.pdf

  • 監修者
    水野 崇さん

    水野総合FP事務所代表。個別相談、執筆・記事監修、講師、取材協力などマルチに活躍する独立系ファイナンシャルプランナー。学校法人専門学校非常勤講師。 【メディア掲載】毎日新聞|朝日新聞|中日新聞|東京新聞|朝日中高生新聞|物流産業新聞社|Yahoo!ニュース|女性自身|プレジデントオンライン|日本FP協会 他多数

  • ソナミラ編集部さん

    「健康で豊かなミライにソナえる」をコンセプトに、マネー・ライフデザインをテーマとしたコンテンツを発信しています。 あなたの可能性を広げるため、読んでためになったと思える記事の制作を心掛けています。

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