何を学び直せばいいの?効果的な大人の学び直し方法
“学び直し”という言葉をご存知でしょうか。
ご存知ないという人も少なくはないでしょう。学び直しとは、「学校を卒業した社会人が、新たに必要となる知識やスキルを学ぶこと」を指します。
今、この学び直しが注目されています。この記事では、学び直しを実施する個々の目的や学び直しに適した方法、学び直しの実践方法などについて解説します。
▼合わせてチェック
社会人が数学を学び直すならどこから?オススメの学習法や本を紹介
人生100年時代における、大人が学び直す意義とは
人の寿命は延び続けています。
厚生労働省『令和4年簡易生命表の概況』を見ると、90歳まで生存する人の割合は、約40年前(1980年)に生まれた人では男性7.1%、女性16.0%であったのに対し、2020年に生まれた人では、男性28.1%、女性52.6%となっています。
つまり、これまでは60〜65歳で定年を迎え、老後生活を80歳ぐらいまで送る生活が当たり前だったのが、医療技術の進歩や環境の変化により寿命が延びることで、人生100年時代に突入することになるのです。
人生100年時代において、60〜65歳で定年を迎えてしまうと、残りの約40年を、年金や貯蓄だけで、生活していくことは困難となる人も多いでしょう。そのため、70〜80歳でも働くことを迫られるようになります。
そこで、重要になるのが学び直しです。
これまで身につけたスキルは、時代の経過とともに適応しにくくなってしまうので、新しいスキルを学び、時代にあった仕事に就くことが求められるのです。
制度整備が進む!最新のリカレント教育制度や大学の支援プログラム
リカレントとは?
リカレントとは、反復や再帰的という意味で、仕事と教育を循環するということを表します。学び直しと近い意味で用いられることの多い教育用語です。
リカレント教育の目的は、新しい技術や社会に適応できるように、知識やスキルを身につけることで、スキルアップを促すことです。これにより、社会全体の知識レベルやスキルセットを向上させ、社会全体を活性化する意図があります。
リカレント教育は、ビジネスの世界だけでなく、介護やスポーツといった分野でも活用され、各分野で個々の学びをサポートする重要な枠組みとなっています。
リカレント教育を受けられる場所
リカレント教育を受けるには、さまざまな教育制度や大学の支援プログラムもあり、時代の流れとともに、リカレント教育を受けやすい環境が整ってきています。
厚生労働省では、「教育訓練給付金」と呼ばれる制度が設けられており、教育費用の一部が支給される仕組みもあります。
また、大学リカレント教育推進事業というものもあります。これは、就職・転職支援のための大学のカリキュラムで、文部科学省が実施している教育プログラムです。
全国の大学が、企業や経済団体、ハローワークと協力して、就職や転職に役立つ短期のプログラムを民間に無料で提供するものです。
このプログラムの実施期間は2か月〜6か月程度で、教材費用以外はかかりません。このように、学び直しをする環境は徐々にではありますが、整ってきていると言えるでしょう。
学び直す人は男性、女性のどちらが多い?
内閣府が行った、2022年の『生涯学習に関する世論調査』によると、この1年間の月1日以上の学習において、「学習していない」と回答した人の割合は男性19.9%に対して、女性は28.1%となっています。したがって、実際に学び直しの行動に出ている人の割合は男女で見ると男性の方が多いことがわかります。
一方で学習した理由の上位3つを取り上げると面白い特徴があります。
男性の第1位は「現在または当時の仕事において必要性を感じたため」となっているのに対して、女性の第1位は「家庭や日常生活に生かすため」となっています。
男性は好んで取り組んでいるというよりも、仕事の必要性に駆られて学び直しをしていると推察されます。また、女性は日常生活をよりよくしたいという動機から能動的に取り組んでいることがわかります。
このことから「女性は自ら学ぶ意識が高い」と言えるかもしれません。
目的別の学び直すべき領域の違い
ここでは、目的によって異なってくる学び直すべき領域について解説します。
領域1:自分の趣味を極める領域(書道・歴史など)
学び直しの理由はさまざまですが、第一に考えられることに、自分の趣味を極めることが挙げられます。
例えば、書道や歴史、社会学などは、一般的には仕事に直結しない知識やスキルとなりますが、自分の趣味として、その道を極めたいと考えている人も多いでしょう。これは、通信講座を通して学び直すことが可能です。
領域2:転職に活かす領域(社会保険労務士・税理士など)
次に学び直す理由として挙げられるのは、転職をするために学ぶというものです。
例えば、社会保険労務士や税理士、プログラミング、WEBデザインが転職に活かせる勉強にあたります。
政府も、これら転職に対する学び直しに腰を据えて取り組んでおり、それが垣間見えるのが、「転職助成金制度」です。この制度は、社会人の学び直しを支援して、転職のサポートを促すために最近できた制度です。
条件を満たせば、転職を目的とした資格取得の場合、講習の受講料として、平均24万円が支給されます。
また、講座を受けた上で、転職に成功し、1年以上働き続けた場合、最大で56万円が補助され、転職者にとっては経済的に大変助かる制度となっています。
領域3:生活を豊かにする領域(FP・終活アドバイザーなど)
最後に学び直しの目的としてよく挙げられる理由に、生活を豊かにするという目的があります。
この目的に合致する領域としては、ファイナンシャルプランナーや終活アドバイザーなどが挙げられます。
例えばファイナンシャルプランナーは、その人のライフスタイルや価値観を鑑みて、収入と支出の内容、資産や保険などを最適なものにする資格であり、転職にも役立ちますが、経済的に人の生活を豊かにする一助となるテクニックを身につけることができます。
大人の学び直しに適した方法とは?
大人が学ぶための場所や方法は様々あります。その方法を知って自分に一番マッチした方法を選ぶと良いでしょう。
一人で学ぶのが良いのか?それとも複数人と会話しながら学んでいくことが好きなのか?朝学ぶのが良いのか?夜学ぶのが良いのか?これまでの人生の中で、学んだ経験がたくさんあるため、どのような環境や方法を選べば効率的なのかは自分が一番よく知っているでしょう。
社会人向けの学校に通う方法
学び直しの方法として、まず挙げられるのが、学校に通うことです。
ここでは、学校に通う方法について解説します。
学校に通うことが向いている人
学校に通うことが向いているのは、学費を支払う経済的に余裕がある人、あるいは学校に通う時間がある人です。
仕事が忙しすぎて、学校に通う時間を捻出できそうもない人は学校に通うよりも、オンライン学習や通信講座を受講することをオススメします。
対面学習の利点
対面学習の最大のメリットは、コミュニケーションが取りやすいことです。疑問に感じたことを、その場で質問し迅速に解決することができます。
また、ともに学ぶ仲間ができやすく、受講するモチベーションを上げることも期待できます。
おすすめの学校
学び直しにオススメの学校は以下の通りです。
- 筑波大学:受験資格や入試のない公開講座が充実している
- 文星芸術大学:「リカレント教育」施設が2023年に開校、ペタゴー*養成講座がある
- 早稲田大学:創立4年後の1886年から社会人教育に注力しており、歴史がある
- 明治大学:社会人女性を対象とした「スマキャリ」が2015年に発足、リーダー育成講座がある
- 日本女子大学:女性の職業生活における活躍を後押し、文科省の公募事業にも採択されている
- 東京電機大学:「半導体基礎講座」など、他大学では少ない理工系の基礎を学べる
ここでは詳細は割愛しますが、それぞれのホームページなどを見て、ご自身に合った学校を見つけてみてください。
*ペタゴーはデンマークの考え方に由来し、障害者施設や学童保育など学校以外の場所で子どもの成長をサポートする人材のことです。教育の中で地域社会の役割が見直される中、教員でなくても教育に関われる人材が求められています。
オンライン教育の活用
ここでは、オンライン教育で学び直しを行う方法について解説します。
オンライン学習が向いている人
オンライン学習が向いている人は、仕事が忙しく、学ぶ時間を確保しにくい人です。
オンライン学習であれば、自宅からでも講座を受講することができます。仕事で忙しく、新しいことを学びたいけれども、時間が無いという人には、オンライン学習はかなり適した方法と言えるでしょう。
オンライン学習プラットフォームの利点
オンライン学習の利点は、場所を選ばず講座を受講できることです。
パソコンやタブレットがあれば、どこでもオンライン学習を受けることが可能です。
また、生配信学習ではなく、すでに撮影済みの動画学習であれば、時間にも束縛されず、好きな時にオンライン学習を受けることができます。
これにより、仕事との両立がしやすく、学習を継続しやすい環境を維持できるでしょう。
おすすめのサービスの紹介
社会人向けのおすすめオンライン学習プラットフォームは以下の通りです。
- Udemy
- schoo
- Progate
- ドットインストール
- Paizaラーニング
- スタディサプリEnglish
- TED
- グロービス学び放題
ここでは詳細は割愛しますが、それぞれ一長一短ある為、ホームページ等で内容を確認して、ご自身に合ったプラットフォームを見つけてみてください。
書籍や教材の活用
ここでは、書籍や教材を活用した学び直しをご紹介します。
書籍を使った学習が向いている人
書籍を使った学習が向いている人は、独学に自信がある人です。
書籍を読んで、正しく内容を理解するのが苦にならない人、調べることが得意で、分からない部分を自分なりに消化できる自信のある人は、書籍を通じた学習をおすすめできます。
また一般的に、講座の授業料よりも書籍購入費の方が低コストとなることが多く、あまりお金をかけたくない人にも向いている学習方法です。
大人向けの学習書籍や教材の特徴
大人向けの学習書籍や教材の特徴は、仕事の役に立ち、収入を向上させるような内容の教材となっていることです。
例えば、英語やプログラミング、IoTやDXは専門的な内容を多く含み、学習のハードルが高いですが、転職を成功させるために有効であったり、年収を上げる一助となることが期待できます。
このように大人向けの学習教材は、仕事に直結するような題材が多いことが特徴です。
おすすめの教科書や参考書の紹介
大人向けの学習教材としておすすめの本は以下の通りです。
- スラスラわかるHTML&CSSのきほん
- HTMLとCSSで基礎から学ぶWEBデザイン
- いちばんよくわかるHTML&CSS3デザインきちんと入門
- 3ステップでしっかり学ぶRuby入門
- ゼロからわかるRuby超入門
- 例文で覚える中学英単語・熟語1800
- 齋藤式マトリックス英単語塾中学1500語
こちらもここでは詳細は割愛しますが、インターネット上でそれぞれの詳細を確認することができますので、興味があるものについて是非ご自身で調べてみてください。
音声学習の活用
ここでは、音声学習を活用した大人向け学習方法を紹介します。
音声学習が向いている人
音声学習が向いているのは、優位感覚が聴覚タイプの人です。
優位感覚とは聞き慣れない言葉ですが、つまるところ、その人の五感の中で一番優れている感覚のことを意味します。
優位感覚が聴覚の人は、音声を聞いてその意味を瞬時に理解し、頭に定着しやすい傾向にあります。したがって、音声学習に向いている人は、優位感覚が聴覚タイプの人ということになります。
音声学習を使う利点
音声学習の最大の利点は、「ながら学習」ができることです。
例えば、掃除をしながら学ぶ、あるいは料理をしながら学ぶなど、何か別のことに取り組みながら、学習ができることにあります。
そのため、最近注目されているタイパ(タイムパフォーマンス)がとても高い学習方法と言えます。
オーディオ教材のご紹介
音声学習におすすめのオーディオ教材は以下の通りです。
- Audible(アマゾンオーディブル)
- audiobook.jp(オーディオブック.jp)
- fliyer(フライヤー)
- Voicy(ボイシー)
- stand.fm(スタンドエフエム)
それぞれ一長一短ありますので、ホームページ等で内容を確認して、ご自身に合った教材を見つけてみてください。
学び直しの実践方法
ここでは、学び直しの実践方法について解説します。
学び直しを継続するためのモチベーションの保ち方
学び直しを実施するためには、学習を継続するモチベーションを維持しなければなりません。
モチベーションを保つ方法の一つとして、勉強をしなければならない環境を作ることが挙げられます。例えば、家族や知人や友人に、目標としている資格に合格することを宣言することが具体例として挙げられます。
周囲の人に合格を宣言しておけば、自分に対して良いプレッシャーとなることでしょう。
時間管理のコツ
学び直しは時間管理も一工夫する必要があります。なぜならほとんどの人は、仕事をしながら学習を行うケースが多いからです。
時間管理のコツは以下のことが挙げられます。
- 時間管理をする目的を再認識する。
- 時間管理ツールを用いる。
- 余裕を持たせた計画を立てる。
これらを意識し実行すれば、少ない時間で最大限の成果を出すことができるようになるでしょう。
おすすめの学び直しテーマ
社会人におすすめの学び直しテーマは以下の通りです。
- マーケティング
- Microsoft/Excel
- マネジメント
- 会計
- WEBデザイン
興味のあるテーマがあったら、是非詳細を調べてみてください。
人気の学び直しテーマ
社会人に人気のある学び直しテーマは以下の通りです。
- Fintech
- マーケティング
- Webデザイン
- Java
- HTML
- Python
上記から察すると、プログラミング言語を学びたいと考えている社会人が多いようです。
学びのトレンドを知る方法
学びのトレンドを知る方法の一つとしては、日頃からニュースを読むことが挙げられます。
新聞やインターネットニュース、あるいは経済紙など、世の中のトレンドを知るツールに日頃からふれておくとよいでしょう。
それ以外にも、気になるキーワードをGoogle検索してみたりすることで、世の中のニーズを把握することができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
ここまで、学び直しとは何か、学び直しが注目されている背景は何なのか、学び直す方法にはどんなものがあるかなどを解説してきました。
この記事のポイントを整理すると以下の通りです。
- 寿命が延びることで、人生100年時代に突入することになる。
- 人生100年時代では70〜80歳でも働くことを迫られる。
- 生涯現役時代になり、陳腐化したスキルを一新し、新しいことの学び直しが重要になってくる。
- 学び直す目的はさまざまだが、転職や生活を豊かにすることが多くの人の目的となる。
- 学び直す方法としては、学校に通ったり、オンライン学習を受講したり、書籍を通じて独学する方法がある。
- 学び直しは、ほとんどの人が仕事をしながら学ぶことになるので、モチベーションの維持と、時間管理が肝となる。
- 学び直しのテーマとして人気があるのは、プログラミング系やWEBデザイン系。
- 学び直すテーマは、時代の経過とともに変化するので、その時代で何が求められているかを知るアンテナを常に張っておくことが大切。
これらの情報が少しでも、皆様のお役に立てば幸いです。
▼参考サイト
厚生労働省『令和4年の簡易生命表の概況』
life22-15.pdf (mhlw.go.jp)
内閣府『生涯学習に関する世論調査』
「生涯学習に関する世論調査(令和4年7月調査)」概略版 (gov-online.go.jp)
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号