【VS討論】都会vs地方、暮らすならどっち?住宅や生活、子育て、収入についてぶっちゃけ議論しました!
みなさんは、都会に住んでいますか? それとも地方暮らし? 人とはないものねだりをしがちで、「隣の芝生は青く見える」もの。スタイリッシュな都会暮らしに思いを馳せる地方在住者も、ゆったりとした地方暮らしを夢見る疲れ果てた都会人もいるのではないでしょうか。 コロナ禍を経て、私たちの暮らしや働き方には大きな変革が訪れました。在宅ワークが進み、ネットでのショッピングもさらに便利に。「あれ? 住む場所ってもっと自由に選んでいいんじゃない?」と、考え方が変わった人も多いと思います。 今回は、都会暮らしと地方暮らしの両方を経験した4人のパネリストに参加いただき、「都会派」と「地方派」に分かれて、どっちが暮らしやすいのか徹底的に討論しました。住んだ経験があるからこその納得の発言もあるので、ぜひご覧ください!
<登場人物紹介>
司会者:トウマ
「渋谷はおれの庭だから」と豪語する“茨城人”。正直、ちょっと何を言っているのかわからない。
都会派:奥山さん
某大手新聞社に勤めていた経歴を持つ「都会派」の論客。本人は北海道の“はしっこのほう”で生まれ育った。
都会派:岡村さん
奄美大島生まれという離島出身者。約1年の東京暮らしで「都会派」にどっぷりと染まってしまい、身も心も都会人に。
地方派:鈴木さん
神奈川県三浦郡葉山町で生まれ、今も実家暮らし。マリンレジャーと自然を愛する地方派として「パタゴニア」をこよなく愛する。
地方派:真崎さん
大阪生まれのバリバリ関西人。沖縄に魅了され、移住までしてしまった「地方派」の急先鋒。今回はリモートでの参戦。
あなたは職住近接派?それとも広い家が好き派?
トウマ:本日のVS討論企画、司会を務めるトウマです。よろしくお願いいたします。
鈴木:何ですか、そのTシャツは……? 司会者は都会派ですか?
トウマ:いえ、中立です! ……今回は「家・住宅」「日常生活」「子どもの教育」「交通」「仕事と収入」の5つの切り口で議論をしていきます。まずは「家・住宅」の事情についてお聞きしていきます。正直、都会は家賃が高くないですか?
岡村:地元の奄美大島と比べると、都会は家賃が倍くらいになってしまいます……。
奥山:家賃はたしかに地方と比べると都会は高いかもしれませんが、広さや築年数など選択する幅が広いので、自分に合った場所に住めばいいんじゃないですか?
真崎:あくまで自分の感覚ですが、沖縄は基本的に「家賃が安い」と感じています。今、住んでいるのは那覇市内の広めのワンルームですが、家賃が45,000円くらい。隣の町に行くと2LDKで50,000円台がポロポロ見つかりますよ。
都会派:安っ!!
トウマ:ちなみに、大和リビング(大和ハウスグループ)の調査によると、東京都の2LDKの家賃相場は、12.1万円(*)だそうです。ダブルスコアでは済みませんね……。というか、数万円となると事故物件を疑う人もいそうな金額ですが、地方では「安いけどいわくつき」みたいなデメリットはないんですか?
*2023年1月時点
真崎:沖縄特有かもしれませんが、古い物件だとバスルームに浴槽がないこともあります……。自分の暮らし方に合っているのかよく確認する必要はありますね。
岡村:奄美大島ではオートロックの物件なんてほぼ見たことがないですし、そもそも設備が古い! リフォームされているのにトイレは和式なんてことも……。東京の温かい洋式便座に何度も癒されています。
トウマ:設備の問題はありますね。家の広さには不満はないですか?
鈴木:僕はまだ実家暮らしですが、友人の話を聞く限り、都会の家は狭くて家賃が高い! 広くて安い家で暮らせるのは、地方のメリットです!
奥山:ひとり暮らしする分には、そんなに広さは求めていないんですよね。基本的に寝に帰るだけなので。それよりも、職場の近くで暮らせるほうが重要じゃないですか?
鈴木:うっ、たしかに。僕は神奈川から都内への通勤に1時間半かかっているので、少し大変ではありますね……。
真崎:沖縄は決して都会ではありませんが、安くてそれなりの家に住めつつ職場も近いと感じます。ただ私の場合はレアケースで、車通勤の人も多いので、朝夕のラッシュ時は道がものすごく混むんですけどね。
岡村:奄美も基本的には島の中で働く人がほとんどなので、職場と家は近いといえると思います。
トウマ:つまり、島だったら家から職場までは近いけど、地方から都会に通うのだったら、それなりの覚悟が必要、ということですかね。
地方派が憧れる「ウーバーイーツの配達員が走ってる!」
トウマ:続いて「日常生活」について聞いていきます。「地方派」の方は買い物などで困ることはありますか?
鈴木:食品や日用品は、ほぼスーパーやドラッグストアで買っていますね。電車を使えば横浜などにも出られるので、困ったことはないです。ネットでも買えますし。
奥山:もう、鈴木さんは都会の住人なんじゃ?
鈴木:いや、地方派です! 自然が好きなので! だからパタゴニアを着てるんです!
岡村:奄美大島だと、台風になると荷物が届かなくなるんですよ。みんなが買いだめに走って、1週間ほどスーパーの棚から商品がなくなることも……。地方ってこういうことですよ、鈴木さん
一同:(それはそれで極端な話のような……)
真崎:沖縄も、通常送料無料の商品でも「ただし、沖縄・離島は除く」の言葉が書かれていたりします。届くまでに1週間とか時間がかかってしまいますし。那覇市内に住んでいる分には日常の買い物に困ることはないですが、そこだけはデメリットなんですよね。
トウマ:なるほど。インターネットが普及しても、物理的な“距離の壁”はまだありますね。逆に、地方の日常生活のメリットはありますか?
鈴木:地方はお店の数は少ないですが、質は高いですよ! 海が近い地域だとスーパーで売っている魚も驚くほど新鮮ですし、飲食店もおいしいところが多い!
奥山:でも、近くにファミレスがないんですよね?
岡村:奄美大島はマクドナルドがないんです! CMは流れているのに……。CMで見たものが実際に食べられて、ウーバーイーツの配達員だって走っている都会は天国です!
鈴木:うぅ……。
奥山:マスコミの仕事で生活が昼夜逆転していた私のような人間は、深夜の「なか卯」や「ジョナサン」にどれだけ救われてきたか。結局、ちゃんとしてない人間には、都会のほうが暮らしやすいんですよ。最近はコロナ禍で深夜営業が減りましたが……。コロナ許すまじ。
トウマ:都会は、そういった飲食店やサービスの選択肢が幅広いということですね。
岡村:今はネットで何でも買える時代になりましたが、実際にショップをたくさん回って自分で見て、買うものを選ぶという「体験」は都会でしか味わえないと思います!
「保活」って実は都会だけの問題じゃないんです
トウマ:続いての切り口は「子どもの教育」。みなさんお子さまはいらっしゃらないようですが、今後のことを含めて考えをお聞かせください。
奥山:これもやはり、教育機関の選択肢の多さは「都会」ですよね。国立の小中学校から私立大学までなんでもそろっているんじゃないですか? 子どものレベルに合わせて、進路を選べるのは大きなメリットでしょう!
岡村:でも都会だと「保活」の問題はありますよね。奄美にいたとき、「子どもを保育園に入れるために苦労している」なんて話をニュースで聞いて驚きました。都会に住む今は実家が遠く、家族をなかなか頼りにくいので自分も保活をしなければならないのではないかと心配です。
真崎:保活は、必ずしも都会だけの問題じゃないですよ。実は、沖縄は待機児童率が全国ワーストなんです。ここ5年で少しずつ改善しているようなので、そこに期待しているのですが……。
トウマ:保活は日本全体の問題なんですね。「地方派」の方は地方で子どもを育てるメリットをどう考えていらっしゃいますか?
鈴木:僕の住む神奈川の葉山町では、「自然」を取り入れた教育を推進しています。自然のなかで子どもを育てられるのは地方のメリットです! 子どもを育てる環境を重視して、最近は移住してこられる人も増えているみたいですよ。
岡村:私も奄美大島では野に放たれたような環境で育ちましたし、自然のなかでのびのび育つことの素晴らしさはわかっています。でも、奄美大島には専門学校はあっても、大学がないんです。高校を卒業したら、島外に出るか、地元で就職するかしかない。本当に地方は選択肢が少ないんです……。
トウマ:島を出る人と残る人の割合はどれくらいなんですか?
岡村:9割以上が島を出ていきます。それで社会に出て何年かしたら戻ってくる人も現れるような感じですね。
トウマ:「地方」には自然の中で子どもを育てられるというメリットがあり、「都会」には教育機関の選択肢が多いというメリットがあると。
奥山:そういえば地方ってヤンキーが多くないですか?
トウマ:何を唐突に! 偏見はやめてください! トライブ系の方たちはどこにだって存在します!
奥山:トライブ系って……。
トウマ:エクザイル・トライブ(一族)みたいな「イケてる」人たちのことです!
真崎:(イケてる以外にも、ちょっと見た目がイカツイ人たちって意味もあると思うんだけど……)
車社会の日本に起きつつある「自転車」革命
トウマ:気を取り直して……。次のお題は「交通」について。地方で暮らすなら、「絶対に車が必要」というイメージもあるのですが、実際のところをお聞かせください。
真崎:私は車を持っていないです。通勤は徒歩で30分ほどですし、那覇市にはバスやモノレールがあるので、とくに不便は感じていないですね。ただ、バスは時間通りに来ないことが多いので、通勤などに使うのは危険です……。先ほども言ったように、沖縄はラッシュ時に道が混むので。
トウマ:まわりの方は車での通勤が多いんですか?
真崎:ほぼ車通勤ですね。沖縄のみなさんは「近くのコンビニまで車で行きます」みたいな感覚の方が多いそうなので。朝の渋滞は1~2時間ほど続きます。
鈴木:僕は実家の車を使っていますが、スーパーやコンビニは近くにあるので、買い物に車を使うほどではないですね。使うのは、遠くのショッピングモールに行くときくらいでしょうか。
トウマ:場所によるとは思いますが、「車が絶対に必要」というわけではないんですね。都会派の方は聞くまでもないかもしれませんが、交通に関しては便利ですよね?
奥山:もう圧倒的に便利! 都会は車がなくてもどこでだって何でも買えるので! 車を使わないので、ショッピングモール自体にほとんど行かなくなりましたね。そのせいか、たま~に行くことがあるとテンションが爆上がりになっちゃいます。でっかいダイソーがあると特に。
岡村:私の地元の奄美大島では、バスか車がないと生活が難しかったです。都内に移り住んでからは、どこにでも電車で行けて行動の幅が広がったと実感しています。
トウマ:逆に都会にいて交通に不便を感じることはありますか?
岡村:なんといっても、朝の満員電車ですね。人が多い状況にまだ慣れていないので……。
奥山:私はシェアサイクルをよく使うんですが、都心の移動には重宝しますよ。特に東京の地下鉄は階段を降りて昇ってと、1駅2駅の移動がかなり面倒くさい。シェアサイクルはその「中途半端な移動」に革命を起こしています!
鈴木:シェアサイクルは、地方でもかなり見られるようになってきましたね。神奈川の私の家の近くでは、地元の人も観光客もどちらも利用しているみたいです。
都会でも地方でも働き暮らすには「ノリ」が大切
トウマ:最後のテーマは、「仕事と収入」について。都会と地方のリアルな金銭事情を教えてください。
真崎:今、沖縄の広告会社に勤めていますが、収入については十分に生活ができるくらいにはいただいています。家賃が安いのもあって、月に10万円くらいは貯金ができています!
一同:おおぉ~!
鈴木:神奈川の実家から都内に通勤している身ですが、家に一定のお金を入れるくらいの余裕はあります。都会で暮らしている友人たちは、遊ぶ場所がたくさんあって誘惑も多いと嘆いていますよ!
岡村:奄美大島で働いていた頃と比較すると、収入は「だいぶ違うな」と感じています。都会では家賃などのコストは高くなりましたが、安く物を買える場所もあるので、工夫して生活することもできますし。
奥山:私の場合はあまり参考にならないかもしれませんが、東京に来て「飲み」に使うお金が減っちゃったんですよね。地方にいたときは、仕事と称してスナックに行きまくって経済を回していたんですが。東京だと、1人でふらっと入れるような店が少ない気がするし、誰かから紹介してもらわないと入りづらいんですよね。だから、なか卯とかジョナサンになっちゃう(笑)。あと、東京ってやっぱり怖さもありますし。
岡村:東京、怖いですか? そんなの感じたことないですけど。
奥山:岡村さんは都会の怖さをまだ知らないだけでしょ!
岡村:えー!
トウマ:都会派同士で味方の背中を撃ち合わないで!話を戻しますよ。真崎さんは、どのようにして沖縄での就職先を見つけたんですか?
真崎:今の仕事先は、私が5年前にフリーライターとして沖縄で暮らしていたときのクライアントの会社です。SNSで「また沖縄に戻ります!」と投稿したら、DMで声をかけていただきました。
トウマ:SNSがきっかけだったんですね。
真崎:SNSの普及は大きいですね。書いた記事などをSNSに投稿していましたが、いろいろな方が声をかけてくださいます。そういったつながりが、今回のご縁にも結びついたのかなと。
トウマ:その結果が、月10万円貯金に……。
真崎:沖縄に限りませんが、人とのつながりは大きいと思うんです。地方で仕事をするうえでは、つながりを作れるか、その土地と「ノリ」が合うかどうかが重要かもしれません。私の場合は、沖縄と「とても相性がよかった」という感覚です。
トウマ:地方で暮らすには、相性のいい場所を探すことも大切なんですね。
真崎:知り合いのなかには、沖縄のゆる~い感じが合わなくて、都会に戻っていった方もいますので……。
トウマ:都会派の方は、都会で仕事をするメリット・デメリットを感じることはありますか?
岡村:都会では、働き先を選べるというメリットはありますよね。Webや紙媒体のデザイナーのスキルを持っていても、地方だとその仕事ができる会社は限られてしまいます。ただ、都会にはデザイナーの人口も多いので、競争に負けないように「より高いスキル」を求められるという側面もありますね……。
真崎:都会と違って沖縄では、スキルを高めて同業者と競争をするというよりは、人とのつながりで仕事が集まってくるという感じだったかもしれません。
奥山:仕事をお願いする側の立場だと、ゼロから人を探すのはコストもかかりますからね。私も地方で働いていた頃は、外部の方に発注するときは知り合いのツテなどから探していました。地方だと、そのほうがみんなハッピーになれるんです。
トウマ:そこに、都会と地方の働き方・仕事の違いがあるのかもしれませんね! では、理想の収入を得るために、どんなことをやっている、やっていこうとしていますか?
奥山:収入を考えるうえで、今の時代は「副業」をもっとフラットに捉えていくことが大切ではないでしょうか。
トウマ:と、いいますと?
奥山:都会・地方に関係なく、「1つのことしかできない・やりたくない」ではなく、視野を広げて新しいことをやっていくことが収入アップにつながる時代なんだと思います。
トウマ:なるほど。でっかいダイソーではしゃいでいた人とは思えない……。では、最後に「都会派」「地方派」の方々、自由に熱い思いを語ってください!
真崎:私は沖縄が本当に合っていて、今の暮らしに満足しています!
岡村:地方だと地域のコミュニティが強すぎる、というのは考えどころかもしれません。ちょっと出かけただけでも、知り合いに遭遇しちゃうので。ひとり行動が好きな人には厳しい環境です。
鈴木:でも、つながりが強いからこそ、時間が経っても知り合いとの関係が切れないというのはメリットでもありますよ! 僕もいまだに同級生のグループで遊ぶことがありますし。
トウマ:たしかにコミュニティの強さというのは、メリット・デメリットの両面がありますよね。都会の匿名性に慣れてしまうと常に近くに知り合いがいるのはツラい。でも一方で、地方はまわりが見てくれているという安心感があるのかもしれません。
鈴木:私が一番訴えたいのは、自然の素晴らしさです! 仕事で溜まったストレスも、マリンレジャーがスッキリ解消してくれます!
奥山:歳をとったときには、医療の面でも都会に住むメリットがあるんじゃないですか? 私が育った北海道だと病院も遠いですし、大雪が降るとそもそも病院までたどり着けない。自然は怖いものでもあるんです。
地方派:それは……そうですね…。
奥山:どや!
トウマ:さて、時間もきたので討論はここで終了です! 「都会派」「地方派」ともにいい議論ができたのではないでしょうか!
まとめ
1時間半におよぶ白熱した議論が繰り広げられた、今回の「都会に暮らす派VS地方に暮らす派」の討論バトル。都会暮らしと地方暮らしの両方を知るパネリストたちの、リアルな話を聞くことができました。そしてそのなかで、次のようなことがわかりました。
- 家は地方のほうが安くて広い。しかし賃貸や中古住宅の設備のよさ、選択肢は都会のほうが豊富。
- ネットショッピングが普及した今、離島でない限り、地方でも買い物に困ることはほぼない。
- 都会は電車で行ける範囲にさまざまな店があり、ショッピング体験を気軽に楽しめる。
- 地方では「車は絶対に必要」ではないが、あると便利なのは間違いない。
- 子どもの教育については、自然の中でのびのび育てられる地方と、子どもにフィットした教育が選べる都会で一長一短がある。
- リモートワークが広がり、都会と地方の収入格差は縮まりつつある。「副業」を考えることで、地方でも十分な収入を得られる可能性あり。
- 地方では人とのつながりで仕事を広げていくことが大切。都会では仕事の母数が多い分競争率は高いが、スキル次第で仕事を増やせるなど働き方に違いも。
- 都会、地方にかかわらず、その土地と自分の相性が合うかも見極める必要がある。
都会と地方の暮らしに、どちらが正解ということはありません。今回の討論を参考に、自分の価値観やライフスタイルを見つめなおして、「人生の拠点選び」について考えてみてはいかがでしょうか?
取材・文:庄子洋行
撮影:豊島望