iDeCoの元本確保型は意味がない?メリットや向いている人の特徴
老後の資金を少しでもふやしたいと考える一方で「元本割れのリスクを避けたい」という悩みを抱えている方は多いでしょう。iDeCo(個人型確定拠出年金)では保険や定期預金など、リスクの低い元本確保型の商品に投資することも可能です。
しかし「元本確保型」を選ぶと得られる利益が小さく、わざわざ資産運用をする意味がなくなってしまうのではないかと、悩んでしまう方もいるのではないでしょうか。
この記事では、iDeCoで元本確保型商品を選ぶメリットや「意味がない」といわれる理由などを詳しく解説します。最後まで読めば、安心して老後の資産運用ができるようになるでしょう。
iDeCoの元本確保型商品とは?
iDeCoで運用できる商品には「元本確保型商品」と「投資信託」の2種類があります。元本確保型商品はその名の通り、元本割れリスクが少ない商品です。定期預金や保険商品などが代表的な商品として挙げられます。
投資信託は、投資家から集めた資金を、専門家(ファンドマネージャー)が株式や債券など複数の商品で運用し、運用成果を投資家に還元する商品です。
投資信託の運用成績には、国内外の経済情勢や企業業績、金利などの影響による価格変動リスクが影響するため、元本保証はありません。また、投資対象とする資産や地域によって、リスク(収益の振れ幅)とリターン(収益)は異なります。
元本確保型商品は投資信託と比べると、リスクは大きくありません。そのため、運用成績が芳しくなく元本割れするケースはほとんどないといえます。しかし、iDeCoの運用時には各種手数料がかかるため、運用で得た収益を手数料が上回ると、結果として元本割れしてしまうケースがあるのです。
【出典】
国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)をはじめるまでの5つのポイント」
https://www.ideco-koushiki.jp/start/
一般社団法人投資信託協会「投資信託が持つリスク」
https://www.toushin.or.jp/investmenttrust/meritrisk/risk/index.html
iDeCoの元本確保型商品は「意味がない」といわれる理由
元本確保型商品は、その名のイメージとは異なり、元本割れするケースも少なくありません。また元本確保型商品で運用しても、iDeCoならではのメリットを十分に得られないこともあります。「元本確保型だから安心」と決めつけずに、デメリットを理解しておきましょう。
手数料がかかる
iDeCoの運用中には、加入時に国民年金基金連合会に対して支払う手数料(2,829円)の他に、加入者手数料(105円)、運営管理機関に支払う手数料(金融機関によって異なる。無料の場合もあり)、事務委託先金融機関(信託銀行)に支払う手数料(66円)などがかかります。
運営管理手数料を無料とした場合、加入者は毎月、最低105円+66円=171円、年間に直すと2,052円の手数料を負担しなければなりません。
一方、国民年金第1号被保険者(自営業者など)の上限額である6.8万円の掛金を毎月拠出し、年利0.03%の定期預金で運用した場合、得られる利息は6.8万円×12カ月×0.03%=244.8円です。
つまり、元本確保型商品を選択しても、手数料が利息を上回ってしまった結果、元本割れするケースもあるということです。元本確保型商品の利率は1%に満たないことが多いため、手数料が利息を上回るケースは多いと考えられます。
しかし、iDeCoの掛金は、全額が所得控除(小規模企業共済等掛金控除)の対象になるため、iDeCoを利用せずに預貯金に回す場合と比べれば、所得税や住民税の負担を軽減できるというメリットがあります。このメリットを考慮すれば、手数料の高さは気にならなくなるでしょう。
ただし、そもそも専業主婦(夫)のように元々所得税や住民税がかからないケースでは、所得控除によるメリットを得られないため、元本確保型商品で運用すると、元本割れするリスクは高くなるでしょう。
【出典】
国民年金基金連合会「iDeCo加入手続きについて」
https://www.ideco-koushiki.jp/start/entry.html
国民年金基金連合会「iDeCoのメリット」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html
運用益非課税の効果が低い
iDeCoには「運用益に対して課税されない」という大きなメリットがあります。
通常、株式や投資信託などの金融商品の運用で得た利益に対しては、20.315%(所得税等15.315%、住民税5%)の税金がかかります。
しかし、iDeCoで運用した場合にこれらの税金は一切かからないため、手元に残る利益は大きくなります。その利益を元本に加えて再投資することによって、複利による効果で資産を効率的にふやしていける点がiDeCoのメリットの一つです。
しかしながら、元本確保型商品を運用し、利息が非課税になったとしても、もともとの利息自体が少ないことが多いため、このメリットを十分に活かしきれない点に注意しましょう。
【出典】
国税庁「株式・配当・利子と税」
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/koho/kurashi/html/04_5.htm
国民年金基金連合会「iDeCoのメリット」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html
経済状況の変化で価値が変わる
iDeCoは老後の資産形成を目的とした制度であるため、資産を引き出せるようになるのは原則として60歳以降です。昨今の金利情勢を鑑みると、元本確保型商品では高い金利が期待できないため、長期間運用したからといって大きな利息を得ることは難しいでしょう。
一方、数十年後にはインフレが進んでいる可能性は十分あります。物価が上昇すると、老後の生活に必要な資金は今よりふえるおそれがあります。つまり、せっかく老後のために準備をしていても、お金が足りなくなる可能性があります。
元本確保型商品で運用すると、実質的な資産価値が減少する可能性があるため「意味がない」といわれることもあるようです。
【出典】
国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)の特徴」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/
iDeCoの元本確保型のメリットは?
商品の特性や、税制優遇についてしっかり理解している場合は、投資信託ではなく元本確保型商品を選んだほうが、メリットが大きくなる場合もあります。
投資信託より安定した資産形成ができる
元本確保型商品は運用成績が悪化したとしても、元本割れするリスクは投資信託ほど高くありません。得られる利息に対して手数料の負担が大きくなることはありますが、所得控除を加味すれば元本割れすることは考えにくいでしょう。
たとえば、会社員の方が毎月1万円(年間12万円)の掛金を毎月拠出した場合、所得税と住民税がともに10%であれば(12万円×10%)+(12万円×10%)=約2.4万円の所得控除を受けられます。手数料として数千円を負担することになったとしても、ある程度の収益は確保できるでしょう。
元本確保型商品は、投資信託ほどの収益が期待しにくい側面はあるものの、着実に資産を積みあげられるというメリットがあります。
利息や収益が非課税になる
先述したとおり、iDeCoで金融商品を運用した場合、そこから得られる利息や収益は非課税になります。iDeCoで得た利息・収益は税金を差し引かれることなく再投資されるため、元本は大きくなりやすいといえるでしょう。
このメリットに加え、所得控除を受けられることも考慮すると、一般的な定期預金よりも実質的な利回りは高くなりやすいといえます。
一時金や年金どちらの受け取り方法でも一定額までは非課税になる
iDeCoでは、資産を一時金として一括で受け取るか、5〜20年の間で年金として受け取るか、あるいは一時金と年金の併用で受け取るか、自分自身で受け取り方法を選択できるのが特徴です。
一時金での受取時には「退職所得控除」、年金での受取時は「公的年金等控除」が適用されるため、一定額までは非課税で資産を受け取れます。
退職所得控除の計算式は以下のとおりです。
勤続年数 | 退職所得控除額 |
---|---|
20年以下 | 40万円 ×勤続年数 |
20年超 | 800万円+70万円×(勤続年数ー20年) |
出典:国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
たとえば、勤続年数25年のケースでは、800万円+70万円×((25年ー20年)=1,150万円が退職所得控除額になります。受け取った一時金の額から退職所得控除額を差し引き、2で除した金額が課税対象額です。
年金で受け取った場合は、受取年金額から公的年金等控除額を差し引いた金額が「公的年金等に係る雑所得」として課税対象になりますが、具体的には速算表に基づいて課税対象額を計算します。
たとえば、65歳以上で、公的年金等に係る雑所得以外の合計所得金額が1,000万円以下、公的年金等の収入金額の合計額が400万円の場合は、400万円×0.75―27.5万円=272.5万円が課税対象となります。
【出典】
国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)の加入資格・掛金・受取方法等」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/structure.html
国民年金基金連合会「iDeCo(イデコ)のメリット」
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/good.html
国税庁「No.1420 退職金を受け取ったとき(退職所得)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1420.htm
国税庁「No.1600 公的年金等の課税関係」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1600.htm
iDeCoの元本確保型商品を選ぶときのポイント
iDeCoで老後資金の準備をする際は、自身のリスク許容度や、運用期間などに合わせて、運用する商品を選びましょう。
元本確保型が適している方の特徴
元本確保型商品は、資産運用においてなるべくリスクをとりたくない方に適しています。たとえば、定年退職が近い50代以降の人々は、短期間で大きなリターンを期待するよりも、元本を確保して確実に資産を守りたいと考えることが多いでしょう。
元本確保型と投資信託はどちらがいい?
元本確保型商品は、元本が保証されているため、リスクが低い一方でリターンも低めです。これに対して、投資信託は市場の動向に応じて価値が変動するため、高いリターンを期待できる反面、元本割れのリスクもあります。
安定的に資産を積みあげることを重視する場合は元本確保型を選ぶとよいでしょう。一方、長期的な運用を考えており、ある程度のリスクを許容できる場合は投資信託が適しているといえます。自分のリスク許容度や運用期間を考慮し、どちらが自分に合っているかを判断することが重要です。
iDeCoの「元本確保型」商品は意味がないとは言い切れない
iDeCoでは、加入時や運用中に一定の手数料を負担しなければならず、利息や収益が低くなりがちな元本確保型商品を選択すると、手数料の分だけ損をし、元本割れする可能性があります。
しかし、所得控除を加味すれば手数料を上回るメリットを得られることも少なくありません。また、運用中の利息や収益が非課税になる点や、受け取り時にも退職所得控除や公的年金等控除が適用されることも踏まえると、一概に「意味がない」とは言い切れないでしょう。安定的な運用を期待する方にとって、元本確保型商品は有効な選択肢の一つになるはずです。
元本確保型商品が自分に合っているのかわからない場合や、具体的な運用商品について相談したい場合は、ソナミラの無料相談を活用しましょう。初心者にも丁寧に説明をしてくれるので、これからiDeCoを始めようと考えている方は、気軽に相談してみてください。
ソナミラ株式会社 金融商品仲介業者 関東財務局長(金仲)第 1010号