初心者が選択する為替ヘッジはありとなしのどっちがいい?
投資初心者の方で、「外国の株式や、投資信託などに魅力を感じるけれど、為替の変動で損をしたらどうしよう」と、不安になった経験はないでしょうか。為替変動はその道のプロでも予想するのが難しいといわれています。
その為替変動のリスクをヘッジ(回避)する仕組みが「為替ヘッジあり」という金融商品です。もちろん、「あり」があるということは「なし」もあります。本記事では、この為替ヘッジ「あり」「なし」の概要とそれぞれのメリット・デメリットについてお伝えしていきます。
為替ヘッジとは?
為替ヘッジとは、外国資産(海外の株や債券など)に投資する際、為替変動の影響、いわゆる為替リスクを抑える仕組みのことです。為替ヘッジを行うために為替予約取引や先物取引などを利用します。
為替ヘッジをするのは、外国資産を外貨から円に換算する際に、資産価値が為替の変動を受けることを避けることが目的です。
具体例で見ていきましょう。
1米ドル=100円のときに100米ドル分の米国投資信託(米国ファンド)を購入したとします。購入時、円で支払うお金は100円✕100米ドル分で10,000円です。5年後に円高が進行して1ドル=90円になったと仮定します。
このとき、為替リスクを避ける仕組みを利用しない為替ヘッジ「なし」の場合、米ドルで換算すると100米ドルです。しかし、円に換算すると円高の影響により90円✕100米ドル分で9,000円となり、日本円で見たときの資産は1,000円減少することになります。(為替以外の値動きを考慮しない場合)
反対に為替ヘッジ「あり」の場合は、この円高のリスクを避けることができるので、資産の減少を1,000円以内に抑えることができるのです。(ただし全てのリスクを避けられるとは限りません)
ただし、為替ヘッジを行う際には「為替ヘッジコスト」がかかります。この為替ヘッジコストは、投資先の国と日本の短期金利差によって変動します。たとえば投資先の国の短期金利が上昇した一方で、日本の短期金利が変わらない場合、金利差は大きくなります。すると、為替ヘッジコストも高くなり、運用成績を下げることにつながります。
初心者は為替ヘッジありとなしのどっちがいい?
為替ヘッジ「あり」と「なし」どちらがいいのでしょうか。これは、一概にどちらが良い悪い、というわけではなく、2つの投資方法の違いやメリット・デメリットをしっかりと理解し、自分の投資スタイルに合致した方法を選択することがポイントになります。
たとえば、為替ヘッジ「あり」の場合は、為替予約取引や先物取引などにかかるコスト(手数料)を支払い、投資対象の資産が為替変動の影響を受けるリスク(為替差損)を小さくすることができます。ただし、為替変動による利益(為替差益)も小さくなります。為替ヘッジ「あり」は、為替変動によるリスクをなるべく小さくしたいと考える投資家に向いている投資方法です。
対して為替ヘッジ「なし」は、為替変動のリスクをある程度許容できる場合や、長期的に積立投資を行う場合に、運用にかかる手数料をできる限り軽減したいと考える投資家に向いている投資方法です。
手数料が発生しても為替変動リスクをできる限り小さくしたいと考える場合は為替ヘッジ「あり」を、為替変動のリスクをある程度許容できる、手数料を軽減したいと考える場合は為替ヘッジ「なし」を選ぶのもよいでしょう。
ヘッジありのメリットとデメリット
為替ヘッジ「あり」のメリットは、為替変動により発生する為替リスクを小さくできることです。
為替ヘッジ「あり」にすると、将来の為替レートを予約しておく為替予約取引や先物取引などによって、外国資産を購入したときと同程度の為替レートで外貨から円へ交換できます。
万が一、外貨資産を購入したときと比べて円へ交換するとき、円高となっていた場合の損失を抑えられるということです。価格変動の激しい為替相場のリスクを抑えられるため、外貨資産を安定的・計画的に運用することができます。
デメリット
為替ヘッジ「あり」のデメリットのひとつは、為替ヘッジコストがかかることです。
為替ヘッジをするには、為替予約取引や先物取引などを利用します。これらを利用する際には「為替ヘッジコスト」という手数料がかかる分、為替ヘッジ「なし」の場合と比べて運用成績が低くなる可能性があります。また、為替ヘッジ「あり」の場合は為替リスクを抑えられますが、円安による為替差益は得られにくくなります。
たとえば、1米ドル=100円のときに、米国投資信託を100米ドル分購入しました。これは円に換算すると10,000円です。5年後、為替が変動して1米ドル=110円と円安になりました。為替以外の値動きを考慮せず考えた場合、円安による為替差益を円換算すると、110円(1米ドル)✕100=11,000円となり、プラス1,000円となります。ただしここから「ヘッジコスト」の差し引きにより、リターンが少なる可能性があります。
このように、為替ヘッジ「あり」は、為替ヘッジ「なし」を選んだ場合と比較すると、為替ヘッジコストを支払うことにより円高による為替リスク(為替差損)を抑えることができます。
しかし円安になった場合、為替ヘッジ「なし」の場合で得られる為替変動による利益(為替差益)が得られにくくなる可能性があります。
為替ヘッジなしのメリットとデメリット
為替ヘッジ「なし」のメリットとして、外貨資産の運用コストを抑えられることがあげられます。これは、為替ヘッジを行う際にかかる為替予約取引や先物取引などの為替ヘッジコストが不要になるためです。
為替ヘッジ「あり」の投資で長期の積立投資を行うと、長期間為替ヘッジコストを負担するため、トータルの運用益が減少することになります。よって、長期の積立運用を行う場合は為替ヘッジ「なし」の方が運用益は高くなります。
また外国資産を購入したときより円安になった場合、為替ヘッジ「なし」の場合は為替差益を得ることができます。
デメリット
為替ヘッジ「なし」のデメリットは、為替変動の影響を受けやすいという点です。
投資信託の場合、購入・換金する際に取引の基準となる「基準価額」があります。「基準価額」は、その時点で投資信託に組み入れられている株式・債券などをすべて時価で評価します。為替が変動すると基準価額も変動し、短期投資の場合は収益が不安定になる可能性があります。特に、為替が円高になった際の為替差損の影響を受けやすくなります。
為替ヘッジ「あり」と「なし」どちらがいいかは双方のメリット・デメリットをしっかり理解しよう
初心者の投資家にとって為替ヘッジ「あり」「なし」どちらがいいのかは、投資家自身の希望する投資スタイルにより変わってきます。投資のプロでも予想することが難しい為替や投資商品の値動き、金利の変動に対してリスクをどの程度許容できるか、また、この2つの方法の違いやメリット・デメリットをしっかり理解したうえで為替ヘッジ「あり」「なし」を選択していきましょう。
ただし、投資商品や為替ヘッジの仕組みは大変複雑です。正しい情報や知識、希望に合う商品などを投資に詳しい専門家からアドバイスを受けることをおすすめします。
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