新NISAで積立てたのに!20年後に暴落したらどうなるの?
2024年に新NISAが始まり、多くの方がつみたて投資枠を活用して積立投資(資産形成)を始めています。投資活動を通じて、これからの経済成長に期待する一方、市場は常に私たちの思い通りに動くとは限りません。
好調だった株価が暴落するというシナリオは、歴史上何度も繰り返されています。もし20年後、購入した投資信託や株式が暴落していたらどうなるのでしょうか?
この記事では、将来起こるかもしれない暴落に備えるために、以下の3点について解説していきます。
・ 株式市場が暴落した過去の事例
・ 20年後に暴落した場合のシミュレーション
・ 暴落を想定した事前対策
今回の記事で投資の不確実性を改めて認識し、ただ恐れるのではなく、どう対処するべきなのかの参考にしてください。
20年後に暴落する可能性はある?
これまで世界の株式市場は、長い成長過程の中で何度か暴落を経験してきました。その都度、金融市場は安定を取り戻すため各国の中央銀行が金融政策を変更するなどの努力を行い、同時に可能な限り混乱が長引かないよう様々なメカニズムを構築してきました。
しかしながら、投資を続けていく以上、このような事態から完全に逃れることは難しく、またいつ起こるかを予測できません。投資をする際には、好調な相場であっても市場が暴落しうることを想定し、その時にどのように対処すべきなのかを過去の経験から学んでいくしかありません。
そのためにアメリカの株式市場が暴落した3つのケースを振り返り、どのようなことが起きたのかを考察していきます。
ウォール街大暴落(1929年)
1920年代のアメリカでは、自動車や電話機を始めとした家電製品の普及が進んでおり、生活水準や利便性が向上していました。同時にこれらの産業に対する投資が活発に行われていました。
しかしこの時期、既に国民の消費行動には陰りが見られていたといわれています。国民の多くが投資活動を行い、景気は実体経済を超えて加熱していたようです。
このような状況下で、FRB*(米連邦準備制度理事会)は株式の投機的ブームを抑制するため、政策金利の引き上げを実行しました。しかし、この利上げにより米国の住宅建設や公共事業が停滞していきます。
* FRBは連邦準備制度理事会の略で米国の中央銀行のことです。
そして、1929年10月24日(木)にニューヨーク株式市場が暴落し、世界中に混乱を引き起こしました。
同年10月28日(月)、10月29日(火)にも株価は大きく下落、以降1か月ほど株価の大暴落が続きました。世界中の株式市場の暴落につながる世界恐慌のきっかけとされ、ウォール街大暴落と呼ばれています。
結局、同年9月3日(火)時点と比較すると、11月13日(水)時点でNYダウ工業株30種平均は45%暴落しました。
さらに、ウォール街大暴落の影響で不動産の購入や公共事業も抑制され、その後も長期間にわたり米国の株式市場は低迷することとなりました。
ブラックマンデー(1987年)
ブラックマンデーとは、1987年10月19日(月)に起こったニューヨーク株式市場の大暴落のことです。
NYダウ工業株30種平均は、1日の取引で22.6%の下落を見せました。
原因はアメリカが抱えていた双子の赤字(財政赤字と貿易赤字)と、新しく導入された自動売買システム(コンピュータを用いて、一定のルールで株式などを自動的に売買するシステム)であるといわれており、アジアやヨーロッパにも暴落の影響は広がったといわれています。
一方、FRBが金利の引き下げ等の金融政策変更を含めた迅速な対応を行ったことにより、ブラックマンデーの影響は早期に収束しました。大暴落の影響は抑えられ、約2年間で暴落前の株価水準を回復しました。
リーマン・ショック(2008年)
リーマン・ショックとは、アメリカの投資銀行大手であるリーマン・ブラザーズの経営破綻がきっかけで発生した経済危機のことです。
当時、住宅購入ブームが起こっていたアメリカでは、本来住宅を購入できない低所得者向けの住宅ローン(サブプライムローン)を利用する人が多く、それを活用した住宅購入が活発でした。
当時のアメリカでは住宅購入ブームのさなかで、住宅価格が値上がりすれば担保価格も上昇し、低い金利のローンに借り換えられると考えられていました。
そんな中、リーマン・ブラザーズはサブプライムローン証券化商品を大量に購入することで、利益をあげようとしていたのですが、雲行きが怪しくなります。
住宅購入ブームに陰りが見えると、不動産バブルははじけ、低所得者向けに貸し出していたサブプライムローンの返済が滞り、不良債権化してしまいました。
結局、リーマン・ブラザーズは負債総額6,000億ドル超となる史上最大級規模で倒産し、2008年9月12日(金)から2009年3月6日(金)におけるNYダウの下落率は43%超えを記録する事態となりました。
新NISAで20年後に暴落していた場合のシミュレーション
上記で解説した、過去の大暴落について、株価の下落幅についてまとめました。
- ウォール街大暴落:3年間で80%以上の下落
- ブラックマンデー:1日で20%以上の下落
- リーマン・ショック:6か月ほどで40%以上の下落
これまでも大きな暴落が起きているわけであり、今後20年の間で暴落が起きないとはいえません。
もし5%で20年間運用し続けた後に50%暴落したら?
毎月5万円を20年間投資した①と、貯蓄を行った②のケースを比較します。
① 年利5%で運用し、20年後に暴落して資産価値が50%減少した場合
② 20年間、投資せずに貯蓄した場合
①20年間毎月5万円を年利5%の投資信託で運用した場合、資産の評価額は約2,055万円になります。しかし、市場が暴落し、株価が50%下落した場合は1,027.5万円程度にまで資産が減ってしまいます。
②毎月5万円を20年間貯蓄すれば1,200万円貯蓄でき、暴落が起きても当然その影響を回避できます。(5万円×12か月×20年=1,200万円)
上記の場合、①と②を比べると①の方が約172.5万円少なくなります。暴落した時点で、その資金を使う必要がある場合は、運用せずに貯蓄として資産を保有しておいた方が良いということになります。
歴史的な暴落の後は戻りがある
NYダウ工業株30種平均指数の、暴落前の株価を回復した期間についてまとめました。
- ウォール街大暴落(1929年):25年間
- ブラックマンデー(1987年):2年間
- リーマン・ショック(2008年):5年間
このように、近年の暴落では迅速な中央銀行の対応が見られ、比較的早期に暴落前の水準まで株価は回復しています。暴落したからといっても決して慌てず、冷静な対処で市場の回復を待つことが有効だとわかります。
新NISAで積立期間中に市場が下落したら?
新NISAのつみたて投資枠で運用をしているときに暴落し、損失が出た場合はどのようにするべきでしょうか。諦めて損切りしてしまうのも1つの手ですが、買い増しなど、取りうる手段は他にもあります。
詳しくはこちらをご確認ください。
新NISAで損失が出ている時の対処法3選!損切りは正解なの?
事前対策について考えましょう
積立をした資産が20年後に暴落してしまうと、不安な気持ちになるでしょう。
しかしながら、分散投資、ポートフォリオの見直し、現物資産の活用、取り崩し方の工夫をすることで、暴落時の影響を軽減させることが可能です。
以下、市場の暴落に備えるための具体策を解説します。
分散投資を行う
ポートフォリオが特定の資産や銘柄に偏っていると、暴落したときのダメージが大きくなる可能性があります。暴落したときの痛みの大きさを抑えるためには「分散投資」を行い、資産全体でのリスクを軽減することが有効です。
リスクを軽減するための分散投資は、「資産の分散」「地域の分散」「時間の分散」の3種類があります。
1つめの「資産の分散」は、ポートフォリオ全体の資産クラスを分散し、リスクを下げる方法です。
例えば、株式だけでポートフォリオを構成せずに、株式の暴落時に値上がりしやすい債券をポートフォリオに組み込み、ポートフォリオ全体のリスクを軽減することがあげられます。
このように、異なる資産を保有すれば、特定の資産の暴落を他でカバーして、ポートフォリオ全体の評価額を下落しにくくできます。
2つめの「地域の分散」は、投資先に複数のエリアや通貨を組み合わせ、リスクを下げる手法です。
アメリカの株式だけではなく、ヨーロッパ、アジア等投資地域を一極化させないことで、特定の地域の暴落の影響を回避でき、ポートフォリオを安定させることができます。
例えば、アメリカ株式市場で時価総額が大きい主要500社の株価に対応したS&P500指数ではなく、約50か国の大型株・中型株3,000銘柄の世界株式に連動したMSCI ACWI指数のインデックスファンドに投資をすれば、大部分をアメリカ株に投資をしつつ、その他の先進国や新興国にもグローバルに投資が可能です。
3つめは「時間の分散」です。株式市場は常に値動きがあり、株価が急激な値上がりや値下がりを見せることはよくあります。
株安のタイミングで一括投資をするのが理想的ですが、一括投資には高値掴みのリスクもあります。投資のタイミングを複数回に分けておけば、高値掴みをしてしまってもその影響を和らげられます。
この点、新NISAのつみたて投資枠を活用すれば、購入タイミングを分散することができます。
リスク許容度に応じてポートフォリオを見直す
投資目的に応じて、定期的にポートフォリオを見直せば、暴落時にも多少は安心できます。
自分のリスク許容度を超えた投資は暴落時の影響を直に受けてしまいます。年齢が若くひとり暮らしの方であれば、株式などのリスク資産比率が高くても、時間を味方につけて長期投資を行うことは可能です。一方、子育て世帯やセカンドライフを楽しむ世帯はある程度の現金を確保する必要があり、過度なリスクは取りにくいでしょう。
自分や家族のライフスタイルに合わせたリスク許容度や現金比率を把握し、ポートフォリオの調整を忘れずに行いましょう。必要に応じて株式やその他の資産を売却し、現金を確保することで、万が一市場が暴落してもダメージをある程度抑えることができます。
さらに、現金を多めに確保しておくことで、暴落時の買い増しも可能になり、相場状況を踏まえた柔軟な対応が可能になります。
現物資産を持つ
現物資産を持つことも暴落対策に有効です。現物資産とは、金や不動産といったそれ自体に価値がある資産のことです。
現物資産は「モノ」としての価値があるため、暴落やインフレ時に価値が目減りしにくい特徴があります。流動性が低く、管理や保管をするコストがかかる点は難点ですが、ポートフォリオの安定性を高めるのに役立ちます。
最近では、REIT(不動産投資信託)や金に投資できるインデックスファンドも普及しています。現物資産よりも流動性が高く手軽に投資できて、インデックスファンド利用時は倒産リスクや管理の手間を抑えることも可能です。
少しずつ取り崩す
資産運用中の暴落かつ今すぐに取り崩さなければいけない事態であっても、一気に売却し現金化することはおすすめできません。暴落時に売却してしまうと、評価額が低い状態から資産が値上がりする可能性はなくなるため、当初より運用期間が長くなっても可能な限り運用の継続をおすすめします。
取り崩しの際はその時必要な最低限の額だけに留め、出来る限り運用を継続させていけば、資産寿命を伸ばせます。また、資産残高の増減に応じて取り崩し金額を調整させる「定率取り崩し」という方法も有効です。
暴落時も適切に対処する
ここまでで、歴史的な大暴落の事例を振り返り、新NISAで積み立て中に市場が大暴落したらどうなるかを見ていきました。
仮に5%という年利回りで20年間運用したとしても、50%の大暴落が起きると資産価値の維持が困難であるとわかりました。
市場の暴落に不安や恐怖を感じることは避けられませんが、その一方でこれまでの歴史を振り返ってみると、株式市場は過去の大暴落を乗り越えながらもしっかりと右肩上がりを続けてきました。
また、暴落時には安い価格で量を多く買い増しすることもできるため、実は投資の絶好のチャンスでもあります。
分散投資で値動きの異なる資産を組み合わせ、暴落時の影響を少なくしておくことが有効な対策になります。
そもそも積立投資は短期的なリターンを得る目的で行う投資手法ではありません。自身のリスク許容度を踏まえ、長期投資を前提にポートフォリオを組むことが本来の投資のあり方です。
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